それは絶対的能力の代償
第43話 最強VS最強
広大な土地に巨大な大木が数多く生えている。ルクリティアルの森と呼ばれる中心部に十人程度の黒いローブを着た錬金術師たちが集まっていた。
ウサギの耳を模したカチューシャに茶髪の短い髪を生やした、巨乳の女を囲むように錬金術師たちが立っているのだが、彼らは一歩も動こうとしない。
「さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら。やっぱりあなたたちの錬金術の研究なんて、学校の自由研究レベルよ」
その女、メランコリア・ラビが錬金術師たちを挑発する。それでも錬金術師たちは動くことができない。まるで金縛りにあったかのようである。
「うるさい。お前に俺たちの実験に有効性が分かるはずがない」
一人の錬金術師が怒りを露わにした。だがメランコリアは錬金術師の声に耳を傾けない。
「じゃあ、予告通り根こそぎ奪うから。あなたたちの槌や荷物を」
メランコリアが錬金術師たちの体を1人ずつ押し倒す。錬金術師たちは仰向けの状態になっても身動きが取れない。
彼女は、そんな彼らから服以外の荷物を奪う。
そして全員の荷物を奪いとると、彼女は不敵な笑みを浮かべ、近くの大木の幹に身を預けた。
「早く終わらないかなぁ。暇すぎて死にそう」
そう呟きながら、メランコリアは空を見上げた。
ルクリティアルの森と新たな街の中間地点の場所にブラフマ・ヴィシュヴァがいた。
大木の鋭い枝に生えた最後の一枚の緑色の葉っぱが激しく揺れている。彼の周辺には、多くのモンスターの死骸しかない。
この周辺にある錬金術に必要な物質は狩り尽くした。ブラフマのお腹が鳴く。彼は空腹だった。
このまま狩ったモンスターの肉をアグレッシブに食べるのか? それとも隣町に行くのか?
少しの間悩んだ五大錬金術師は何かを感じ取り、自身の右手を地面に触れさせた。
一瞬の内に二本の黒色の太刀が出現したのと同じタイミングで、白いローブで身を隠す少年が姿を現す。彼は水色の短銃を手にしていた。
「聖なる三角錐の刺客か? 命知らずじゃのぉ。ワシは最強じゃとおぬしの仲間に言ったのに」
前触れもなく現れた少年の姿を見て、ブラフマが呟く。もちろん一本の太刀を構え、戦闘態勢に入った状態で。
一方で少年は白いローブを脱ぎ、その身を晒した。尖った耳に一重瞼。左の太もも絶対的能力者であることを意味する「EMETH」という文字刻まれている。
この特徴を見ても尚、ブラフマの自信は揺るがない。
「ヘルメス族か? おまけに絶対的能力も使えるようじゃ。錬金術の礎を築いた種族を連れてきても、ワシを倒すなんて無理じゃな。高度な錬金術と絶対的能力を組み合わせて戦おうとしとるようじゃが、ワシは負けぬ」
「それはどうでしょうか?」
少年の返した言葉をブラフマは鼻で笑った。
「面白いこと言うのぉ。お前とは経験や才能が違う。俺は最強だ」
最強を自負する五大錬金術師は、一歩も動こうとしない刺客に太刀を振り下ろした。
一撃を見切っていた刺客は、一瞬で消え、ブラフマの前に再び姿を現した。
「早いのぉ。ヘルメス族の特殊能力の一つ、瞬間移動。じゃが、その程度では勝てんよ」
ブラフマの自信と同じように、少年の心は乱れない。
それは突然のことだった。何もない空間からの襲撃をブラフマは受けた。咄嗟に地面に触れ、守りを固める。
しかし、どこかから放たれた水玉は、バリアさえ溶かしてしまう。この現象を見て、ブラフマは察した。
「おぬしが持っておるのは幻水短銃の槌で生成した短銃じゃな? ワシのバリアを溶かすとは、中々やるのぉ」
「褒めてくださり、嬉しいです。ここで問題です。僕はどうやって銃弾を見えなくしているでしょうか?」
「絶対的能力か? 銃弾を消して奇襲する能力じゃ」
ブラフマの答えを聞き、少年は銃弾の引き金に手を掛ける。相手の能力さえ分かれば、対策は簡単。幻水短銃の槌でも壊せない程強度な盾を絶対的能力で生成すればいいだけ。
だが、それは愚策。銃弾が解き放たれるよりも早く、ブラフマは強度なバリアを生成した。これならば、どんな攻撃も防ぐことができる。
完璧な守りを貫き、斬撃が五大錬金術師の背後を襲う。一撃を受け、ブラフマは膝をつく。
「こんな簡単な策に引っかかるとは思いませんでした。あの言葉、そっくりそのままお返しします。その程度では僕に勝てません」
「こっちのセリフじゃ。そういえば名前を聞いとらんかったの」
「ラス・グースです。よろしくお願いします」
森の中で轟音が響く。遠くの大木が一瞬の内に倒れる現象を目撃した彼女は、横たわる研究者の男を踏みつけながら、頬を緩めた。
その時、白いローブで身を隠す子供が、メランコリアの前に突然現れる。
「ルス。準備は終わったの?」
そう尋ねられ、ルスは首を縦に振った。
「終わったのです。問題ないのです。あれが破られた時は、メランコリアの出番なのですね?」
「暇になりそう」
「そんなメランコリアのために、トールからプレゼントなのです」
ルスは笑顔を見せながら迷彩色の槌を仲間に手渡す。
「これは何?」
「新兵器なのです。これの性能を確かめろという指示をトールから受けました。何でも、これを使えば、無敵になれるそうなのです。最も、ここじゃなかったら、一つ手間がかかるそうなのですが」
「そう。トールからのプレゼントなら嬉しいわ。ところで、何でトールはあなたじゃなくて、ラスをブラフマと戦うように仕向けたのかしら? 相手はあのブラフマよ。トールからの情報によると、彼は全盛期の頃の若い肉体を手に入れたそうじゃない?」
「ラスなら大丈夫なのです。かなりの長期戦になりそうだけど、私の妹なのですから。勝ちます」
ラスの姉は宣言の後、一歩を踏み出し、メランコリアと顔を合わせた。
「そろそろ私は帰るのです。一日一回様子を見に来ます。ラスとブラフマの決着が付くまで、よろしくなのです」
そう伝えたルスは、メランコリアが瞬きをした瞬間に消えた。
二人の実力者の激闘は、アルケミナたちがティンクと再会した日に始まった。
ウサギの耳を模したカチューシャに茶髪の短い髪を生やした、巨乳の女を囲むように錬金術師たちが立っているのだが、彼らは一歩も動こうとしない。
「さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら。やっぱりあなたたちの錬金術の研究なんて、学校の自由研究レベルよ」
その女、メランコリア・ラビが錬金術師たちを挑発する。それでも錬金術師たちは動くことができない。まるで金縛りにあったかのようである。
「うるさい。お前に俺たちの実験に有効性が分かるはずがない」
一人の錬金術師が怒りを露わにした。だがメランコリアは錬金術師の声に耳を傾けない。
「じゃあ、予告通り根こそぎ奪うから。あなたたちの槌や荷物を」
メランコリアが錬金術師たちの体を1人ずつ押し倒す。錬金術師たちは仰向けの状態になっても身動きが取れない。
彼女は、そんな彼らから服以外の荷物を奪う。
そして全員の荷物を奪いとると、彼女は不敵な笑みを浮かべ、近くの大木の幹に身を預けた。
「早く終わらないかなぁ。暇すぎて死にそう」
そう呟きながら、メランコリアは空を見上げた。
ルクリティアルの森と新たな街の中間地点の場所にブラフマ・ヴィシュヴァがいた。
大木の鋭い枝に生えた最後の一枚の緑色の葉っぱが激しく揺れている。彼の周辺には、多くのモンスターの死骸しかない。
この周辺にある錬金術に必要な物質は狩り尽くした。ブラフマのお腹が鳴く。彼は空腹だった。
このまま狩ったモンスターの肉をアグレッシブに食べるのか? それとも隣町に行くのか?
少しの間悩んだ五大錬金術師は何かを感じ取り、自身の右手を地面に触れさせた。
一瞬の内に二本の黒色の太刀が出現したのと同じタイミングで、白いローブで身を隠す少年が姿を現す。彼は水色の短銃を手にしていた。
「聖なる三角錐の刺客か? 命知らずじゃのぉ。ワシは最強じゃとおぬしの仲間に言ったのに」
前触れもなく現れた少年の姿を見て、ブラフマが呟く。もちろん一本の太刀を構え、戦闘態勢に入った状態で。
一方で少年は白いローブを脱ぎ、その身を晒した。尖った耳に一重瞼。左の太もも絶対的能力者であることを意味する「EMETH」という文字刻まれている。
この特徴を見ても尚、ブラフマの自信は揺るがない。
「ヘルメス族か? おまけに絶対的能力も使えるようじゃ。錬金術の礎を築いた種族を連れてきても、ワシを倒すなんて無理じゃな。高度な錬金術と絶対的能力を組み合わせて戦おうとしとるようじゃが、ワシは負けぬ」
「それはどうでしょうか?」
少年の返した言葉をブラフマは鼻で笑った。
「面白いこと言うのぉ。お前とは経験や才能が違う。俺は最強だ」
最強を自負する五大錬金術師は、一歩も動こうとしない刺客に太刀を振り下ろした。
一撃を見切っていた刺客は、一瞬で消え、ブラフマの前に再び姿を現した。
「早いのぉ。ヘルメス族の特殊能力の一つ、瞬間移動。じゃが、その程度では勝てんよ」
ブラフマの自信と同じように、少年の心は乱れない。
それは突然のことだった。何もない空間からの襲撃をブラフマは受けた。咄嗟に地面に触れ、守りを固める。
しかし、どこかから放たれた水玉は、バリアさえ溶かしてしまう。この現象を見て、ブラフマは察した。
「おぬしが持っておるのは幻水短銃の槌で生成した短銃じゃな? ワシのバリアを溶かすとは、中々やるのぉ」
「褒めてくださり、嬉しいです。ここで問題です。僕はどうやって銃弾を見えなくしているでしょうか?」
「絶対的能力か? 銃弾を消して奇襲する能力じゃ」
ブラフマの答えを聞き、少年は銃弾の引き金に手を掛ける。相手の能力さえ分かれば、対策は簡単。幻水短銃の槌でも壊せない程強度な盾を絶対的能力で生成すればいいだけ。
だが、それは愚策。銃弾が解き放たれるよりも早く、ブラフマは強度なバリアを生成した。これならば、どんな攻撃も防ぐことができる。
完璧な守りを貫き、斬撃が五大錬金術師の背後を襲う。一撃を受け、ブラフマは膝をつく。
「こんな簡単な策に引っかかるとは思いませんでした。あの言葉、そっくりそのままお返しします。その程度では僕に勝てません」
「こっちのセリフじゃ。そういえば名前を聞いとらんかったの」
「ラス・グースです。よろしくお願いします」
森の中で轟音が響く。遠くの大木が一瞬の内に倒れる現象を目撃した彼女は、横たわる研究者の男を踏みつけながら、頬を緩めた。
その時、白いローブで身を隠す子供が、メランコリアの前に突然現れる。
「ルス。準備は終わったの?」
そう尋ねられ、ルスは首を縦に振った。
「終わったのです。問題ないのです。あれが破られた時は、メランコリアの出番なのですね?」
「暇になりそう」
「そんなメランコリアのために、トールからプレゼントなのです」
ルスは笑顔を見せながら迷彩色の槌を仲間に手渡す。
「これは何?」
「新兵器なのです。これの性能を確かめろという指示をトールから受けました。何でも、これを使えば、無敵になれるそうなのです。最も、ここじゃなかったら、一つ手間がかかるそうなのですが」
「そう。トールからのプレゼントなら嬉しいわ。ところで、何でトールはあなたじゃなくて、ラスをブラフマと戦うように仕向けたのかしら? 相手はあのブラフマよ。トールからの情報によると、彼は全盛期の頃の若い肉体を手に入れたそうじゃない?」
「ラスなら大丈夫なのです。かなりの長期戦になりそうだけど、私の妹なのですから。勝ちます」
ラスの姉は宣言の後、一歩を踏み出し、メランコリアと顔を合わせた。
「そろそろ私は帰るのです。一日一回様子を見に来ます。ラスとブラフマの決着が付くまで、よろしくなのです」
そう伝えたルスは、メランコリアが瞬きをした瞬間に消えた。
二人の実力者の激闘は、アルケミナたちがティンクと再会した日に始まった。
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