異世界ライフ 〜異世界の自分を自分で救ってみました〜
トーラス学園〜クラス対抗戦・決勝③〜
クソッ!! なんであんな見る目もない女がRクラスのNo1なんだ……
(どいつもこいつも、雷属性の使い手だからとちやほやしやがって……)
モドレスはそんな人物よりも劣っているとみられている事実に、苛立ちが増していた。
そもそもこんな結果のわかりきった試合、やる意味もない。とっとと終わらせて、あの女にシュテルンシュラハトを申し込んでやる。
不敵な笑みを浮かべながらモドレスは歩を進めた。
~
「ダブル君、ミール行っちゃったけどいいの?」
「ミールだってやる男ですよ、信じましょう」
ダブルはミールなら何とかしてくれると言い、時間の方を気にし始めた。
(もう少しの筈なんだけど……このままじゃまずいぞ……)
黙り込んで考えこんでいるダブルに、ウェラが心配そうに声をかけた。
「ダブル君、大丈夫? いつもとなんか雰囲気が違うよ……」
「あ、あぁ、大丈夫ですよ。それよりウェラさん戦闘準備に入っておいてください、反応が一つ確実にこちらに向かってきています」
「ーーそれって!!」
ダブルは言うまでもないだろうと、一つ頷く。ダブルは、最初からこちらに向かってきている反応に頭を悩ませていたのだ。ーーそしてついに、通路の先に人影が見えた。
急激に高まる魔力を感じ、ダブルが叫んだ。
「ウェラさん!! ーー急いで防御魔法を!!」
「え!?」
通路の先から風の玉が飛んできたのだ。ーーダブルの前に立っていたウェラがそれに直撃してしまう。
ーーキャア!!
「ウェラ!! 大丈夫か!?」
「うん、ボクなら……大丈夫だから……ガフッ……」
相当魔力が練られていたのか、制服の防御魔法を貫通しウェラは吐血していた。
「ーーお前!! わざとだな!!」
「いやいや、少し手元がくるってしまいました。そもそもあの程度、防げない方が悪いんですよ」
通路の先から笑みを浮かべた、モドレスが姿を現した。ダブルはこいつは倒れているウェラを狙いかねないと、立ちふさがるようにウェラの前に出た。
「それでもRクラスか!」
「はぁ、私はエスティ様の指示に従ったまでですよ」
「聡明なエスティ様がそんな支持を出すわけがないだろ!!」
「くくくっ、その通りですよ。あの女はアマいんだよ。強者が絶対だというのに、弱者を守ろうとする。ホントに愚かな女さっ!!」
この男、こんな性格だったのかとダブルは内心驚いていた。最初の印象が真面目な奴だと思った
分、衝撃が大きかったのだ。
「私はこのくだらない試合を早く終わらせて、あの女にシュテルンシュラハトをしなくてはならない。だから……とっととくたばれ!! ーー<複数攻撃・風の槍>」
モドレスが容赦なく魔法を使ってくるのに対して、ダブルはすぐに防御魔法を詠唱した。
「間に合うかーー<大地の壁>!!」
出現した大地の壁と風の槍が激突する。
ズガガガガガ!
「フハハハハハ、いつまでもつかな!!」
激しくぶつかり合う。だがすぐに差が出始めたのだ。モドレスの風の槍がダブルの大地の壁を確実に削っていっていた。ーーダブルは砂の迷宮で常時魔力を消費している所為もあって、防御に使った大地の壁にはあまり魔力を練れていなかったのだ。
「クソが!!」
所々崩れた場所から風の槍が抜けてくる。その何本かがダブルの体をかすめて行っていた。
ーーぐっ!! まだだ、踏ん張れ俺!!
(ウェラだけでも守らなくちゃ、終わった後に顔向けできねーじゃねーか!!)
大地の壁がすべて崩れ落ちるころ、風の槍の嵐が収まった。
「その状態で立っていられるとは、平民はどういう身体の仕組みをしているのやら。ククッ、まるで害虫並みのしぶとさですね」
(ウェラは…………)
意識が朦朧とする中、倒れているウェラを見る。
(よかった……落ちこぼれの俺でも守れたみたいだな……)
ホント……テッツさんは無茶しますね。
(やっとかよ……あとは任せるぜ……)
「何をするのか知りませんが、そろそろトドメですよ」
(それにしても、急に現れたあの鏡はなんだ……何かの魔法か?)
そう、いつ現れたのか、ボロボロのダブルの前に鏡が出現していた。--すると、鏡からダブルの声が聞こえてきた。
「終わらせませんよーー<複合魔法・転換の鏡>」
直後、鏡から光が発せられ、先ほどまでボロボロだった状態のダブルが、傷一つないダブルの姿に変わっていたのだ。流石のモドレスもこの状況を理解することができず、声を荒げてきた。
「貴様!! 何をした!!」
「君じゃたどり着けない領域の魔法を使ったのさ……さて仕切り直しといこうか」
「ふざけるなよ、平民風情がーーーーっ!!」
ダブルはどうやったのか、モドレスとの間合いを一瞬で詰めていた。モドレスは抵抗しようとするがもう遅い。ダブルは攻撃態勢に入っていたのだ。
「君には容赦できそうもない……<荒狂う嵐風>」
なんなんだこいつは……
これじゃあの女より……
ドゴオオオオン!
会場全体が揺れているかのような錯覚をするほどの轟音だった。ーーそして今の一撃で砂の迷宮も消失していく。
(ちと、やりすぎちゃったかな……まあ、死なない程度に調整はしたから大丈夫か)
そして、砂の迷路が消失した闘技場の上にはダブル、エスティ、ロールの3人が立っていた。
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