異世界ライフ 〜異世界の自分を自分で救ってみました〜
トーラス学園⑦
2018/09/25 誤字修正
闘技場の上には意識を失い倒れている貴族と、そのすぐ側に平然と立っているダブルの姿がある。
先程まで魔力が暴走していたとは思えないほど、場は静寂に包まれていた。そこにダブルの中性的な声が先生に向かって発せられた。
「先生、勝者の宣言をお願いします」
そう、決闘では勝者の宣言がある前に闘技場から降りて失格扱いになってしまうのだ。そうやって失格になった者が数多くいた。
「勝者…………ダブル」
普通だったらここで歓声が上がるはずなのだが、貴族が平民に負けた試合で観戦を上げる者など、余程のバカか世間知らずだけだろう。
それに、観戦してるクラスメイトはほぼ貴族しかいないため全く上がるわけがないのだ。だが、1人だけそんなバカがいたのだ。
「よっしゃー!! 流石ダブルだぜ!!」
大声を出して喜んでいたのはテッツだった。貴族に怯えていた者とは思えない程の愚行をしているにも関わらず、本人は全くそれに気付いてないのだ。
ダブルはそんな彼を見て大きくため息を吐きながら闘技場から降りた。
大喜びしている彼の元に戻ると、
「嬉しいのはわかりますが、他の貴族に目を付けられてしまいますよ? もう遅いと思いますが」
テッツはダブルに言われやっと気付く。そしてクラスメイトの貴族の者はほぼ全員がテッツを睨んでいた。
「おい、ダブル…………これやばいんじゃないのか? ——みんなこっち見てるぞ!!」
「いや、テッツさん…………あなたのせいですよ」
テッツの間抜けさ加減に呆れてしまうが、こっちで初めてできた友達だからそのうち慣れるだろうと、気にしないことにした。
その後、先生が倒れている貴族以外教室に戻るように指示が出たので、全員教室に戻るのであった。
〜
教室に戻ってきたダブルはまだ自分の席がどこか知らないことに気付く。そもそもどうやって席が決まっているのかもわからなかった。
こんな状況だと誰かに聞くしかないのだが、先程のテッツさんの愚行の所為で聞ける空気じゃなくなっていたのだ。そして、事の原因のテッツはダブルの後ろに隠れてビクビクしていた。
理由は貴族からの視線を避けるためと聞かなくてもわかるが、自業自得だろうとテッツのことは無視し、どうしたものかと考え始める。
すると、ずっとドアの前で立っている事を不思議に思ったのか、既に席に座っている女の子から声がかかる。
「えっと、ダブルくんとか言ったっけ? なんでずっとドアの前で立ってるの?」
これはチャンスとダブルはすぐに答える、
「実は、席がどのよう決まってるかわからなくて困っていました」
「ああ、そんなことで悩んでたんだね、席は自由だよ。ちなみにボクの横も空いてるよ」
その女の子は「テシテシ」と席を叩きながら教えてくれた。
なんと親切な人なんだと感謝する。そしてお言葉に甘えて彼女の横に座ることにし移動する。
「初めまして、僕はダブルと言います。よろしくお願いします。それでこっちはテッツさんです」
「よ……よろしく」
「ボクは『ウェラ・シグヴァ』、よろしくね。一応貴族なんだけど、普通に接してくれると嬉しいな」
2人の挨拶に爽やかに返してくれるウェラ・シグヴァと名乗る彼女は、元の世界で言うボクっ娘だ。短い髪は金色に輝いており、スラットし引き締まった体はまるでスポーツマンの様だった。
そして、そんな彼女が苦笑いしながら急に謝ってきた、
「ボクの幼馴染がごめんよ」
「ん? 謝れることはされてないと思うんだけど?」
「きみが戦った貴族のことだよ。ミールはボクの幼馴染なんだ……ミールは根が真面目過ぎて、いつもの事だと放って置いたらあんなことになって……ダブルくんたちに迷惑かけちゃったよ。本当にごめんよ」
貴族と言っていた彼女がなんの迷いもなく頭を下げてきたことに驚く。貴族が平民に、それも人前で頭を下げるなど絶対にありえないことで、友人としては正しい行動かもしれないが、貴族としては間違っている行動なのだ。
「頭をあげてください、ウェラさんは悪くありません。それにその幼馴染のミールさんもちゃんと正式な形で勝負をしたじゃないですか」
「きみがそう言うなら……なにか困ったことがあったらいつでも言ってね。必ず協力するからさ」
丁度2人の会話が終わるころ、担任の先生が戻ってきた。先生は教卓の前で止まると、手に持っていた資料を教卓に叩きつけるように置いた。
急に発せられたその音でクラス内は重い空気になる。
「入学早々問題を起こして……次問題を起こした奴はそれ相応の罰を受けてもらうから留意するように!」
一斉にダブルに視線が集まる。そしてその視線にはテッツやウェラさんの視線も含まれていた。
「そんなみんな僕のことを見て……ハハハッ…………本当にすいませんでした——!!」
みんなの視線に耐えられず謝るのだった。そんな姿を見ていた一部のクラスメイトが笑っていたことにダブルは、僅かにだが貴族と平民の間の溝がなくなったことを感じた。
「あんな凄い魔法使えるのになんでへこへこしてるんだよ。今度俺にも教えてくれよ」
「あんな魔法今まで見たことないよっ! 本当すごいよ!」
(この感覚懐かしいな……よくみんなでワイワイ話したっけか……)
ダブルは1人で元いた世界の事を考えていた。そして再び学生を楽しめる事を深く感謝していた。
「さあ、話はその辺にして既に遅れているんだ、早速授業を始めるぞ」
先生の一言で全員座席につき、午前中の座学が始まるのであった。
トーラス学園では午前中は魔法についての座学中心で、午後は実技の授業となっている。一般教養等は既に習得している前提のカリキュラムのため、一日中が魔法に関することが学べる仕組みになっているのだ。
そして午前中の時間はあっという間に過ぎ、お昼休みの時間になる。
「あー、やっと終わったよー」
大きく伸びをしながらテッツからやる気のない声が漏れていた。テッツは一年留年しているため、全く同じ授業を受けてることになる、もともと真面目だったテッツは授業内容をしっかりと覚えていたため、退屈な時間となっていた。
「ダメですよ、テッツさんちゃんと授業受けないと。また留年しちゃいますよ」
「ぐぬぬっ。それを言われると言い返せない……」
そこへボクっ娘ウェラさんが会話に入ってきた。
「ダブルくん、お昼はどうする予定なんだい? よかったらボクと一緒に学食いこうよ」
学食、学生生活には欠かせない場所。普段会えない上級生や先生方が一同に集まる場所。そんな場所に誘われて断る者などいないだろうとダブルは返事をする。
「是非、行きましょう!! テッツさんも行きましょう」
ダブルはテッツも誘うが、テッツさんは乗り気ではなく今日は購買で済ませるよと教室を出て行ってしまった。
(はて、これは何かある感じですね。寮に戻ったら聞き出しますか)
  
テッツさんが購買に向かった後、ダブルとウェラは一緒に学食へと向かった。
「うわー!! ここが学食ですか…………」
ダブルは学食の大きさに我を忘れてしまう。それもそのはず、トーラス学園の学食は元いた世界のどの学食よりも大きく、そして立派なものだったからだ。
(そういえば、学生の頃他の学食はどんなものかって学食周りしたこともあったっけか……懐かしいなぁ)
…………ダブルくん、…………ダブルくん。
「ダブルくん——!!」
「わぁっ!! 耳元でびっくりするじゃないですか!」
「ダブルくん何度呼んでも反応ないから、仕方なくだよ」
ダブルが「ボーッ」と突っ立っていた動かないからウェラが何度も呼びかけていたのだ。ウェラは両頬を膨らませていたので、ダブルは笑いながら謝る。
「ハハッ、すいませんつい昔を思い出してました。それにしてもとても広いですね。こんなに広いとは思いませんでしたよ」
「昔って、ダブルくんはボクと同い年でしょ?」
「……そう……でしたね。と、とりあえず並びましょうか!」
ダブルとウェラはカウンターにできている長蛇の列の最後尾に並びにいくのであった。
闘技場の上には意識を失い倒れている貴族と、そのすぐ側に平然と立っているダブルの姿がある。
先程まで魔力が暴走していたとは思えないほど、場は静寂に包まれていた。そこにダブルの中性的な声が先生に向かって発せられた。
「先生、勝者の宣言をお願いします」
そう、決闘では勝者の宣言がある前に闘技場から降りて失格扱いになってしまうのだ。そうやって失格になった者が数多くいた。
「勝者…………ダブル」
普通だったらここで歓声が上がるはずなのだが、貴族が平民に負けた試合で観戦を上げる者など、余程のバカか世間知らずだけだろう。
それに、観戦してるクラスメイトはほぼ貴族しかいないため全く上がるわけがないのだ。だが、1人だけそんなバカがいたのだ。
「よっしゃー!! 流石ダブルだぜ!!」
大声を出して喜んでいたのはテッツだった。貴族に怯えていた者とは思えない程の愚行をしているにも関わらず、本人は全くそれに気付いてないのだ。
ダブルはそんな彼を見て大きくため息を吐きながら闘技場から降りた。
大喜びしている彼の元に戻ると、
「嬉しいのはわかりますが、他の貴族に目を付けられてしまいますよ? もう遅いと思いますが」
テッツはダブルに言われやっと気付く。そしてクラスメイトの貴族の者はほぼ全員がテッツを睨んでいた。
「おい、ダブル…………これやばいんじゃないのか? ——みんなこっち見てるぞ!!」
「いや、テッツさん…………あなたのせいですよ」
テッツの間抜けさ加減に呆れてしまうが、こっちで初めてできた友達だからそのうち慣れるだろうと、気にしないことにした。
その後、先生が倒れている貴族以外教室に戻るように指示が出たので、全員教室に戻るのであった。
〜
教室に戻ってきたダブルはまだ自分の席がどこか知らないことに気付く。そもそもどうやって席が決まっているのかもわからなかった。
こんな状況だと誰かに聞くしかないのだが、先程のテッツさんの愚行の所為で聞ける空気じゃなくなっていたのだ。そして、事の原因のテッツはダブルの後ろに隠れてビクビクしていた。
理由は貴族からの視線を避けるためと聞かなくてもわかるが、自業自得だろうとテッツのことは無視し、どうしたものかと考え始める。
すると、ずっとドアの前で立っている事を不思議に思ったのか、既に席に座っている女の子から声がかかる。
「えっと、ダブルくんとか言ったっけ? なんでずっとドアの前で立ってるの?」
これはチャンスとダブルはすぐに答える、
「実は、席がどのよう決まってるかわからなくて困っていました」
「ああ、そんなことで悩んでたんだね、席は自由だよ。ちなみにボクの横も空いてるよ」
その女の子は「テシテシ」と席を叩きながら教えてくれた。
なんと親切な人なんだと感謝する。そしてお言葉に甘えて彼女の横に座ることにし移動する。
「初めまして、僕はダブルと言います。よろしくお願いします。それでこっちはテッツさんです」
「よ……よろしく」
「ボクは『ウェラ・シグヴァ』、よろしくね。一応貴族なんだけど、普通に接してくれると嬉しいな」
2人の挨拶に爽やかに返してくれるウェラ・シグヴァと名乗る彼女は、元の世界で言うボクっ娘だ。短い髪は金色に輝いており、スラットし引き締まった体はまるでスポーツマンの様だった。
そして、そんな彼女が苦笑いしながら急に謝ってきた、
「ボクの幼馴染がごめんよ」
「ん? 謝れることはされてないと思うんだけど?」
「きみが戦った貴族のことだよ。ミールはボクの幼馴染なんだ……ミールは根が真面目過ぎて、いつもの事だと放って置いたらあんなことになって……ダブルくんたちに迷惑かけちゃったよ。本当にごめんよ」
貴族と言っていた彼女がなんの迷いもなく頭を下げてきたことに驚く。貴族が平民に、それも人前で頭を下げるなど絶対にありえないことで、友人としては正しい行動かもしれないが、貴族としては間違っている行動なのだ。
「頭をあげてください、ウェラさんは悪くありません。それにその幼馴染のミールさんもちゃんと正式な形で勝負をしたじゃないですか」
「きみがそう言うなら……なにか困ったことがあったらいつでも言ってね。必ず協力するからさ」
丁度2人の会話が終わるころ、担任の先生が戻ってきた。先生は教卓の前で止まると、手に持っていた資料を教卓に叩きつけるように置いた。
急に発せられたその音でクラス内は重い空気になる。
「入学早々問題を起こして……次問題を起こした奴はそれ相応の罰を受けてもらうから留意するように!」
一斉にダブルに視線が集まる。そしてその視線にはテッツやウェラさんの視線も含まれていた。
「そんなみんな僕のことを見て……ハハハッ…………本当にすいませんでした——!!」
みんなの視線に耐えられず謝るのだった。そんな姿を見ていた一部のクラスメイトが笑っていたことにダブルは、僅かにだが貴族と平民の間の溝がなくなったことを感じた。
「あんな凄い魔法使えるのになんでへこへこしてるんだよ。今度俺にも教えてくれよ」
「あんな魔法今まで見たことないよっ! 本当すごいよ!」
(この感覚懐かしいな……よくみんなでワイワイ話したっけか……)
ダブルは1人で元いた世界の事を考えていた。そして再び学生を楽しめる事を深く感謝していた。
「さあ、話はその辺にして既に遅れているんだ、早速授業を始めるぞ」
先生の一言で全員座席につき、午前中の座学が始まるのであった。
トーラス学園では午前中は魔法についての座学中心で、午後は実技の授業となっている。一般教養等は既に習得している前提のカリキュラムのため、一日中が魔法に関することが学べる仕組みになっているのだ。
そして午前中の時間はあっという間に過ぎ、お昼休みの時間になる。
「あー、やっと終わったよー」
大きく伸びをしながらテッツからやる気のない声が漏れていた。テッツは一年留年しているため、全く同じ授業を受けてることになる、もともと真面目だったテッツは授業内容をしっかりと覚えていたため、退屈な時間となっていた。
「ダメですよ、テッツさんちゃんと授業受けないと。また留年しちゃいますよ」
「ぐぬぬっ。それを言われると言い返せない……」
そこへボクっ娘ウェラさんが会話に入ってきた。
「ダブルくん、お昼はどうする予定なんだい? よかったらボクと一緒に学食いこうよ」
学食、学生生活には欠かせない場所。普段会えない上級生や先生方が一同に集まる場所。そんな場所に誘われて断る者などいないだろうとダブルは返事をする。
「是非、行きましょう!! テッツさんも行きましょう」
ダブルはテッツも誘うが、テッツさんは乗り気ではなく今日は購買で済ませるよと教室を出て行ってしまった。
(はて、これは何かある感じですね。寮に戻ったら聞き出しますか)
  
テッツさんが購買に向かった後、ダブルとウェラは一緒に学食へと向かった。
「うわー!! ここが学食ですか…………」
ダブルは学食の大きさに我を忘れてしまう。それもそのはず、トーラス学園の学食は元いた世界のどの学食よりも大きく、そして立派なものだったからだ。
(そういえば、学生の頃他の学食はどんなものかって学食周りしたこともあったっけか……懐かしいなぁ)
…………ダブルくん、…………ダブルくん。
「ダブルくん——!!」
「わぁっ!! 耳元でびっくりするじゃないですか!」
「ダブルくん何度呼んでも反応ないから、仕方なくだよ」
ダブルが「ボーッ」と突っ立っていた動かないからウェラが何度も呼びかけていたのだ。ウェラは両頬を膨らませていたので、ダブルは笑いながら謝る。
「ハハッ、すいませんつい昔を思い出してました。それにしてもとても広いですね。こんなに広いとは思いませんでしたよ」
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