異世界ライフ 〜異世界の自分を自分で救ってみました〜
戦闘②
2018/06/19 誤字修正しました。
お互い無言状態が続き、風が木の葉を揺らす音だけが響いていた。ーー理解が追いついていエスティがぼそっとつぶやく。
「私がもう1人……。あなたは何者なの?」
「僕は……ただの通りすがりだけど?」
「こんな所に、1人で? それにその見た目、なんのつもり!? いい趣味とは言えないわよ」
(確かにーー! こんな所通りすがる人なんて、普通いないよな)
ミズキは自分でツッコミを入れたあと、必死に言い訳をしようと思考を巡らせる。
「そ、そうだよ。気分転換に散歩に来てただけさ。本当に今日はたまたま森に足を運んだだけなんだよ。それにこの姿は元々で魔法とか一切使ってないから。エスティこそ、なんでこんな所にいるんだい?」
「私は特訓をしていただけよ」
「こんな朝早くからすごいね、邪魔しちゃ悪いから僕は行くね」
帰ろうとするミズキの手をエスティは掴んできた。そして彼女は手を掴んだまま離さない。むしろ強くなっていた。
「ん?  僕行きたいんだけど……」
(力強いんだよ!  この馬鹿力がーー!)
エスティはミズキを睨みながら静かに口を開く。
「私の名前……なんで知っているのかしら? 名乗ったつもりはないのだけど」
「領主様の娘の名前くらい、知っているのは当然ですよ」
  
(これ以上は、苦しいぞ……)
 「そうよね。失礼したわ」
エスティはミズキの言い分を聞き入れ握っていた手を離す。
(乗り切ったー!)
「それよりあなた、怪我をしているのね。余ってるポーションがあるから使いなさい」
「あの、お金持ってないですよ?」
「今回は特別よ、それにお金が無いのなら冒険者にでもなって働きなさい。貴方の年齢くらいになれば薬草採取ぐらいはできるでしょ」
「ありがとう。ありがたく受け取るよ」
(冒険者か……それもありかな)
話をしているエスティの背後から影が出現する。その影の正体は、大口狼の生き残りだった。彼女は背後から迫ってきている存在に気付いていないのか、全くの無防備状態になっていた。
(このままじゃ間に合わない!  背に腹は変えられない、エスティが死んだら僕も終わりだ!!)
「貫け! <雷槍>」
「えっーー!?」
彼女の横を雷槍が通過し、後ろの大口狼を貫き絶命させた。
だがミズキは、朝から練習で魔力を使い続けていた上に、魂のリンク分の精神的疲労が一気にきたせいで意識を失っていた。
(僕は夢を見ているのだろうか、ふかふかのベッドに横になっていて、とても綺麗な部屋にいる。窓からは立派な庭園も見えるのだ)
ミズキは「死んだのかな?」などと思っていると、部屋のドアが開き知っている人物が入ってくる。
「失礼します」
「あっ……」
「ーーミズキさん! お目覚めになられたのですね」
「アティ? アティが何でこんな所に……これは何かの夢かい?」
部屋に入ってきたのはアティだった。だがミズキは、彼女が何故ここにいるのか全く理解できなかった。それに、さっきまで森にいたはずなのに今はとても綺麗な部屋にいるのだ、今の状況を夢と思い込んでしまっても仕方がなかったのだ。
「ふふっ。ミズキさんは面白いですね。ここはノワール家の屋敷でございます」
(ダメだ、全然思い出せない)
「びっくりしましたよ。魔力切れで意識を失っていたミズキさんを、エスティ様が屋敷まで連れて帰ってきたのですから」
(連れて帰って来た?  ってことはあの戦闘は夢じゃなかったんだな、死んでないってことはエスティを救えたってことか)
心の中で安堵の息をもらす。
「『ノワール』ってエスティの家名なんだね」
「そうですよ。正式のお名前は、エスティ・ノワール様です。あっといけません、ミズキさんが目覚めたらエスティ様を呼ぶように言われていたのでした。呼んできますので私はこれで失礼します」
そう言い残し、アティは部屋を出て行ってしまった。
「呼んでくる……か……。ハァ、色々聞かれるんだろうなぁ」
この後のことを考えると胃がキリキリと痛くなってきているのがわかる。ーーそういえばと、怪我をした肩を触ってみると傷が完璧に消えていることに気付く。
「ん!? 完全に傷が消えてる? 魔法で治したのかな? そんな魔法があるなら是非とも使えるようになりたいな」
そんなこんなを考えてると、再びノックの音がしてドアが開く。そしてエスティとススゥが部屋に入ってきた。
「失礼するわ、目を覚ましたようね。色々と聞きたいことがあるのだけど大丈夫かしら?」
「えーと、今度じゃダメかな?」
「あんた助けてもらっておいてその態度はないでしょ!!」
一緒にいたススゥが怒りをあらわにするが、エスティはそれを止める。
「大丈夫よ。自分に敬語を使われてるみたいで逆に気持ちが悪いもの。それと少し2人にしてくれるかしら?」
「エスティ様!  正気ですか!? こんな得体の知れない人物と2人きりになるなんて!!」
「ねぇススゥ、2度は言わないわよ?」
「--っ!  わかりました。部屋の前にいますので、何かありましたらお呼びください」
納得しきれていないススゥはミズキをすごい形相で睨みつけ、部屋の外へ出た。
(すごいな……悪魔も睨み殺しそうな目つきだったな。ススゥは普通にしてれば可愛いと思うのにな、もったいない……)
「これでゆっくり話せるかしら? まずは助けてくれた事、感謝するわ……」
「…………」
「さて、お礼は言ったわ、私の質問に答えてちょうだい。あの魔法……あなたが使った属性について、話してくれるかしら?」
「魔法?  属性?  なんのことか----って!!  ハハッ、なんの冗談ですかねこれは!?」
  そう、ミズキのクビには剣が突きつけられていた。
「冗談? 私は本気ですよ。  貴方が2日寝てる間に少し調べさせてもらいました。町の人に貴方のことを聞いたところ、貴方のような人物をこの町で見たことがないと言っていました。
  それにススゥとアティから聞きいたのですが、ススゥが囚われていた時、貴方あのボロ屋敷にいたそうですね。それならこの町の人間でない貴方が私の名前を知っていたのも納得がいきます」
(そこまで知られているのか!?)
「わかった。言うからこの物騒なものをしまってくれないか?」
「少しでも妙な動きをしたら斬り刻むわよ」
彼女は突きつけていた剣をクビから離してくれた。ミズキはその部分をさすりながら話し始める。
「魔法の使い方は、最近アティに教えてもらったんだ」
「アティに?」
  頷いて話を続ける。
「属性に付いては土属性と……雷属性が使えるんだと思う。一応アティにも雷属性が使えることは言ったけど、信じてもらえてなかったみたいだから君に話してないんだと思うよ」
エスティは、話を聞いていくうちに表情が嫌悪したものへと変わっていた。
「そう、わかったわ、次が最後の質問よ。町に入った痕跡の無い貴方が、なぜあのボロ屋敷に居たのかしら?」
「それについては僕の方が聞きたいよ。なんせ気付いだ時にはあのボロ屋敷の中にいたんだから」
ミズキは最後に嘘をついた。事実を言ったところで信じてもらえないだろうし、今の状況で言った場合ふざけているのかと剣でぶっ刺されると思ったからだ。
「わかったわ、話してくれたこと感謝するわ。今日までこの部屋を貸すわ、明日になったら自分で宿を探しなさい」
「ありがとう、助かるよ」
「それと私と同じ姿で悪さしたら、殺すから……」
そのまま部屋を出て行ってしまった。
(どっかで聞いたセリフだ、まるでデジャヴだな)
 
特にすることのないミズキは今後のことを考えていた。
明日からの宿については、お金が貯まるまではボロ屋敷に居座ろうと決めていたが、肝心の仕事についてはどうするか悩んでいた。
  ミズキはエスティに年齢的に冒険者になれると聞いていたのだが、なにせ見た目がまんま彼女と一緒で、このまま冒険者になろうとするとまた面倒が起きるとこは目に見えていたのだ。
  夕方から考えていたミズキはなにかいい案が浮かんだのか、これしかないかとベットの上で1人頷いていた。ーー気付くと外は暗くなっており、お腹のなる音がする。
「もう夜か、そういえば何も食べてないな」
バン! っと勢いよくドアが開き、ススゥとアティが夜ご飯を持ってきてくれた。ススゥはなんで私がという表情をしていて、アティはそれに苦笑いしていた。
「なぁ、スーー」
「ーー気安く呼ばないで!」
(えーーーー!)
ミズキは余りの返事の早さに目を見開く。だが、ここでお願いをしないと夕方から考えたことが台無しになってしまう。ミズキは自分に負けるなと言い聞かせながら再び話しかける。
「なぁ、スーー」
「ーーなによ!!」
(はやっ!  でも聞いてくれる感じか)
「僕がこの姿で問題起こすと大変だよね?」
「--っ!! アティ!! 今すぐこいつを殺すわよ」
「ススゥさん落ち着いてください。ミズキさんはそんな方ではありません!」
「アティ!? あんたアティに何かしたのねーー!!」
アティがミズキを庇ったことに驚きつつも、殺気を放ちながらミズキを睨む。
「僕はなにもしてないよ。それより話の続きなんだけど、ある物を準備してほしいんだ」
「なにを言ってるの? 自分の立場をわかっていないようね」
「わかってるからこそのお願いだよ」
「どういうことよ?」
(よし、乗ってきた)
話が思い通りに進み内心喜ぶが、まだお願いを聞いてもらえてないため、注意深く話を進めていく。
「ススゥとエスティからすると、この姿で行動されるのが不安でしかないのであれば、隠せばいと思うんだ」
「…………」
「だから僕は所望する。フードと顔を隠す仮面をね!」
ススゥは真剣に考える。仮に準備したとして、彼が仮面を人前で外さないとは限らない。だがボロ屋敷で問題を起こさないようにと言った時はちゃんと言いつけを守っていた。ーー信用ならないが約束は守っていたことがススゥを悩ませていたのだ。
「人前で素顔をさらさないと約束できるの?」
「もちろん約束する」
「わかったわ。明日の朝までに準備するわ」
アティだけ部屋に残りススゥは行ってしまった。ススゥがいなくなったのを確認し、アティが少し怒りながら言ってきた。
「もう、ミズキさんは無茶するんですから! 下手したら殺されていたんですよ!」
「なに? ススゥってそんな強いの?」
「はい。 侍女をしていますが、土属性魔法に関してはズバ抜けているんですよ」
「そうだったんだね……」
今更ながら冷や汗が出る。そんな危険人物に強気で喋ってたとか命知らずにも程があると、ミズキは次から気をつけようと思うのであった。
 「明日からは冒険者か……」
「ミズキさんなら大丈夫ですよ」
  不安は残るが、なるようになるかと夜ご飯を食べ明日に備えて早めに寝ることにした。
お互い無言状態が続き、風が木の葉を揺らす音だけが響いていた。ーー理解が追いついていエスティがぼそっとつぶやく。
「私がもう1人……。あなたは何者なの?」
「僕は……ただの通りすがりだけど?」
「こんな所に、1人で? それにその見た目、なんのつもり!? いい趣味とは言えないわよ」
(確かにーー! こんな所通りすがる人なんて、普通いないよな)
ミズキは自分でツッコミを入れたあと、必死に言い訳をしようと思考を巡らせる。
「そ、そうだよ。気分転換に散歩に来てただけさ。本当に今日はたまたま森に足を運んだだけなんだよ。それにこの姿は元々で魔法とか一切使ってないから。エスティこそ、なんでこんな所にいるんだい?」
「私は特訓をしていただけよ」
「こんな朝早くからすごいね、邪魔しちゃ悪いから僕は行くね」
帰ろうとするミズキの手をエスティは掴んできた。そして彼女は手を掴んだまま離さない。むしろ強くなっていた。
「ん?  僕行きたいんだけど……」
(力強いんだよ!  この馬鹿力がーー!)
エスティはミズキを睨みながら静かに口を開く。
「私の名前……なんで知っているのかしら? 名乗ったつもりはないのだけど」
「領主様の娘の名前くらい、知っているのは当然ですよ」
  
(これ以上は、苦しいぞ……)
 「そうよね。失礼したわ」
エスティはミズキの言い分を聞き入れ握っていた手を離す。
(乗り切ったー!)
「それよりあなた、怪我をしているのね。余ってるポーションがあるから使いなさい」
「あの、お金持ってないですよ?」
「今回は特別よ、それにお金が無いのなら冒険者にでもなって働きなさい。貴方の年齢くらいになれば薬草採取ぐらいはできるでしょ」
「ありがとう。ありがたく受け取るよ」
(冒険者か……それもありかな)
話をしているエスティの背後から影が出現する。その影の正体は、大口狼の生き残りだった。彼女は背後から迫ってきている存在に気付いていないのか、全くの無防備状態になっていた。
(このままじゃ間に合わない!  背に腹は変えられない、エスティが死んだら僕も終わりだ!!)
「貫け! <雷槍>」
「えっーー!?」
彼女の横を雷槍が通過し、後ろの大口狼を貫き絶命させた。
だがミズキは、朝から練習で魔力を使い続けていた上に、魂のリンク分の精神的疲労が一気にきたせいで意識を失っていた。
(僕は夢を見ているのだろうか、ふかふかのベッドに横になっていて、とても綺麗な部屋にいる。窓からは立派な庭園も見えるのだ)
ミズキは「死んだのかな?」などと思っていると、部屋のドアが開き知っている人物が入ってくる。
「失礼します」
「あっ……」
「ーーミズキさん! お目覚めになられたのですね」
「アティ? アティが何でこんな所に……これは何かの夢かい?」
部屋に入ってきたのはアティだった。だがミズキは、彼女が何故ここにいるのか全く理解できなかった。それに、さっきまで森にいたはずなのに今はとても綺麗な部屋にいるのだ、今の状況を夢と思い込んでしまっても仕方がなかったのだ。
「ふふっ。ミズキさんは面白いですね。ここはノワール家の屋敷でございます」
(ダメだ、全然思い出せない)
「びっくりしましたよ。魔力切れで意識を失っていたミズキさんを、エスティ様が屋敷まで連れて帰ってきたのですから」
(連れて帰って来た?  ってことはあの戦闘は夢じゃなかったんだな、死んでないってことはエスティを救えたってことか)
心の中で安堵の息をもらす。
「『ノワール』ってエスティの家名なんだね」
「そうですよ。正式のお名前は、エスティ・ノワール様です。あっといけません、ミズキさんが目覚めたらエスティ様を呼ぶように言われていたのでした。呼んできますので私はこれで失礼します」
そう言い残し、アティは部屋を出て行ってしまった。
「呼んでくる……か……。ハァ、色々聞かれるんだろうなぁ」
この後のことを考えると胃がキリキリと痛くなってきているのがわかる。ーーそういえばと、怪我をした肩を触ってみると傷が完璧に消えていることに気付く。
「ん!? 完全に傷が消えてる? 魔法で治したのかな? そんな魔法があるなら是非とも使えるようになりたいな」
そんなこんなを考えてると、再びノックの音がしてドアが開く。そしてエスティとススゥが部屋に入ってきた。
「失礼するわ、目を覚ましたようね。色々と聞きたいことがあるのだけど大丈夫かしら?」
「えーと、今度じゃダメかな?」
「あんた助けてもらっておいてその態度はないでしょ!!」
一緒にいたススゥが怒りをあらわにするが、エスティはそれを止める。
「大丈夫よ。自分に敬語を使われてるみたいで逆に気持ちが悪いもの。それと少し2人にしてくれるかしら?」
「エスティ様!  正気ですか!? こんな得体の知れない人物と2人きりになるなんて!!」
「ねぇススゥ、2度は言わないわよ?」
「--っ!  わかりました。部屋の前にいますので、何かありましたらお呼びください」
納得しきれていないススゥはミズキをすごい形相で睨みつけ、部屋の外へ出た。
(すごいな……悪魔も睨み殺しそうな目つきだったな。ススゥは普通にしてれば可愛いと思うのにな、もったいない……)
「これでゆっくり話せるかしら? まずは助けてくれた事、感謝するわ……」
「…………」
「さて、お礼は言ったわ、私の質問に答えてちょうだい。あの魔法……あなたが使った属性について、話してくれるかしら?」
「魔法?  属性?  なんのことか----って!!  ハハッ、なんの冗談ですかねこれは!?」
  そう、ミズキのクビには剣が突きつけられていた。
「冗談? 私は本気ですよ。  貴方が2日寝てる間に少し調べさせてもらいました。町の人に貴方のことを聞いたところ、貴方のような人物をこの町で見たことがないと言っていました。
  それにススゥとアティから聞きいたのですが、ススゥが囚われていた時、貴方あのボロ屋敷にいたそうですね。それならこの町の人間でない貴方が私の名前を知っていたのも納得がいきます」
(そこまで知られているのか!?)
「わかった。言うからこの物騒なものをしまってくれないか?」
「少しでも妙な動きをしたら斬り刻むわよ」
彼女は突きつけていた剣をクビから離してくれた。ミズキはその部分をさすりながら話し始める。
「魔法の使い方は、最近アティに教えてもらったんだ」
「アティに?」
  頷いて話を続ける。
「属性に付いては土属性と……雷属性が使えるんだと思う。一応アティにも雷属性が使えることは言ったけど、信じてもらえてなかったみたいだから君に話してないんだと思うよ」
エスティは、話を聞いていくうちに表情が嫌悪したものへと変わっていた。
「そう、わかったわ、次が最後の質問よ。町に入った痕跡の無い貴方が、なぜあのボロ屋敷に居たのかしら?」
「それについては僕の方が聞きたいよ。なんせ気付いだ時にはあのボロ屋敷の中にいたんだから」
ミズキは最後に嘘をついた。事実を言ったところで信じてもらえないだろうし、今の状況で言った場合ふざけているのかと剣でぶっ刺されると思ったからだ。
「わかったわ、話してくれたこと感謝するわ。今日までこの部屋を貸すわ、明日になったら自分で宿を探しなさい」
「ありがとう、助かるよ」
「それと私と同じ姿で悪さしたら、殺すから……」
そのまま部屋を出て行ってしまった。
(どっかで聞いたセリフだ、まるでデジャヴだな)
 
特にすることのないミズキは今後のことを考えていた。
明日からの宿については、お金が貯まるまではボロ屋敷に居座ろうと決めていたが、肝心の仕事についてはどうするか悩んでいた。
  ミズキはエスティに年齢的に冒険者になれると聞いていたのだが、なにせ見た目がまんま彼女と一緒で、このまま冒険者になろうとするとまた面倒が起きるとこは目に見えていたのだ。
  夕方から考えていたミズキはなにかいい案が浮かんだのか、これしかないかとベットの上で1人頷いていた。ーー気付くと外は暗くなっており、お腹のなる音がする。
「もう夜か、そういえば何も食べてないな」
バン! っと勢いよくドアが開き、ススゥとアティが夜ご飯を持ってきてくれた。ススゥはなんで私がという表情をしていて、アティはそれに苦笑いしていた。
「なぁ、スーー」
「ーー気安く呼ばないで!」
(えーーーー!)
ミズキは余りの返事の早さに目を見開く。だが、ここでお願いをしないと夕方から考えたことが台無しになってしまう。ミズキは自分に負けるなと言い聞かせながら再び話しかける。
「なぁ、スーー」
「ーーなによ!!」
(はやっ!  でも聞いてくれる感じか)
「僕がこの姿で問題起こすと大変だよね?」
「--っ!! アティ!! 今すぐこいつを殺すわよ」
「ススゥさん落ち着いてください。ミズキさんはそんな方ではありません!」
「アティ!? あんたアティに何かしたのねーー!!」
アティがミズキを庇ったことに驚きつつも、殺気を放ちながらミズキを睨む。
「僕はなにもしてないよ。それより話の続きなんだけど、ある物を準備してほしいんだ」
「なにを言ってるの? 自分の立場をわかっていないようね」
「わかってるからこそのお願いだよ」
「どういうことよ?」
(よし、乗ってきた)
話が思い通りに進み内心喜ぶが、まだお願いを聞いてもらえてないため、注意深く話を進めていく。
「ススゥとエスティからすると、この姿で行動されるのが不安でしかないのであれば、隠せばいと思うんだ」
「…………」
「だから僕は所望する。フードと顔を隠す仮面をね!」
ススゥは真剣に考える。仮に準備したとして、彼が仮面を人前で外さないとは限らない。だがボロ屋敷で問題を起こさないようにと言った時はちゃんと言いつけを守っていた。ーー信用ならないが約束は守っていたことがススゥを悩ませていたのだ。
「人前で素顔をさらさないと約束できるの?」
「もちろん約束する」
「わかったわ。明日の朝までに準備するわ」
アティだけ部屋に残りススゥは行ってしまった。ススゥがいなくなったのを確認し、アティが少し怒りながら言ってきた。
「もう、ミズキさんは無茶するんですから! 下手したら殺されていたんですよ!」
「なに? ススゥってそんな強いの?」
「はい。 侍女をしていますが、土属性魔法に関してはズバ抜けているんですよ」
「そうだったんだね……」
今更ながら冷や汗が出る。そんな危険人物に強気で喋ってたとか命知らずにも程があると、ミズキは次から気をつけようと思うのであった。
 「明日からは冒険者か……」
「ミズキさんなら大丈夫ですよ」
  不安は残るが、なるようになるかと夜ご飯を食べ明日に備えて早めに寝ることにした。
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