異世界勇者は現世の魔王

すずろ

6,いいからその銃を降ろすんだ、降ろしてくれ! よーし、いい子だ

「ふあああ……2時間、早えーな」


目を覚ました俺は、あくびをしながら辺りを見回す。
いつもの図書室、いつもの席。


「今日は気付かれてねーのか」


図書委員の日高。
今回は学生服をアイテムボックスから出す心構えをしていたので、目覚めてすぐさま着替えた。
腰巻きの布はアイテムボックス行き。


結局、日高は図書室におらず、下校のチャイムがなっても戻ってくることはなかった。
まあいいかと帰路につく俺。
色々と思い出してニヤける。


エクスプロージョンをここで唱えたらどうなるんだろうか。
転移やアイテムボックスで一儲けできるんじゃないだろうか。
むふふ。
夢は膨らむ。
俺だけに与えられた力。
異世界も現世も俺の手の中。
アンヌじゃないけど、まじで神になれるかも。
明日は土曜で学校休みだし、いろいろこっちで試してみるか。
ちなみにゲートが開く例の本も、図書室から借りてきた。
よく考えたら図書室にいかなくてもゲートを持っていればどこでもいけるじゃん、と。





興奮冷めやらぬまま迎えた翌朝。
あんま、寝れなかったわ。
妄想が膨らんで。
ゲートが閉じたあとも魔法が使えるとは限らねーしな。
早く行動していこう。


それで決めたことは、


やはりまずはお金。
そして女。
あとは地位とか名誉か。
それは別にどうでもいいけど。


なにより金があれば現世で困らない。
金こそ勇者、金こそ魔王。


まずは金を手に入れるぞ――


あんまり目立つとFBIとかに連れ去られるって聞いたことあるし、やべーよな。


脅したり盗んだりはダメ。
人を傷つけるのはよくないよな。


それでどうするか。


俺が使えるのは、火属性魔法と空間魔法、瞑想。
すぐお金になりそうなのは……


瞑想だな。
人探しスキルで懸賞金のかかった犯罪者とかを見つけ出せば金が手に入るんじゃね?
そこで俺はネットを使い、懸賞金のかかった犯罪者を調べてみた。


「25億……だと」


とある宗教指導者にかけられた懸賞金額が出てきた。
世界の犯罪者はすげーな。
あまり大きくない、目立たない案件がいいけど。
5億ってのもいるな……
お金欲しい。
どうしよう。


だが逆にヤバイやつほど、見つけた俺のことは報道されないんじゃないか?
逆恨みの危険性を考えてさすがに警察もなんとかしてくれるでしょ。
5億いっちゃうか。



こうして俺は瞑想スキルで5億の犯罪者の居場所を探した。
もちろんGPSのように簡単につきとめられたわけで。


そして俺は、こいつを捕まえるために渡米。


なぜアメリカかって?
海外なんてテレビでもロサンゼルスぐらいしか見たことないので、そこなら転移でいけるからである。
だからカリフォルニアに潜伏している犯罪者を狙うわけだ。
いざとなれば結界でも空中浮遊でも、最悪ファイアボールでも戦えるし。






……なんて考えてたのが浅はかだった。


「(こいつぁ、いったいだれだ!?)」


俺は今、マフィアに囲まれて手足を縛られている。


「(ちくしょう! なぜここがバレちまったんだい!)」


そんなことを叫んでる……気がする。
ほんとは何言ってんのかわかんねーけど。
まったく、異世界より異世界してるじゃねーか。


「おいクソ野郎! どうやって入ってきたんだ!?(←って言ってるような気がする)」
「もごもごもご!」


いやとりあえず猿ぐつわ外せよ。
こんな時でも仙人職のせいか、冷静な俺。
いやいや、防御結界張る前に撃たれたら終わりだろ。
なんとかしなければ。


とりあえずこの縛られている紐を焼くか。
頭の中でイメージするんだ。
ファイアボールよりうんと小さいやつ。
こないだのライターぐらいでいいんだぞ。
よし。


「もごごーごーご!(ファイアボール!)」


そう唱えると俺の手から……



俺の手から巨大な火の玉が!


「やべえ、またやっちまった!」


とりあえず自分を縛っていた紐は焼け焦げ、自由になった手で猿ぐつわも外す。


「防御結界!」


自分の出したファイアボールから身を守るため、自分の回りに結界を張る。
その間も大きくなっていく火の玉。


「おーファック! なんて火だ!!(←うまいこと言うじゃねーか)」


そんな感じの叫び声が聞こえ、マフィアたちも慌てふためいている。
そこへ完成したファイアボールが放たれ、基地もろとも燃え盛る。
燃ーえろよ燃えろーよ。
周囲に住民はいないと思うが。
これはやばいやつです。



瓦礫と化した基地の真ん中で立ち尽くす俺。
そこへパトカーが駆けつける。


「両手を上げろ!(←たぶんそう言ってる)」


ええと、こうゆうときは……


「ジーザス!!」


で、いいのかな。
てか俺がもらえるはずの金はどうなんの。


仕方ない。
一度自宅へ転移で戻るか。
感謝はされども怒られる所以などないんだが。
捕まっても絶対厄介なことになるのは目に見えているし。
よし、俺の部屋をイメージして……


その時、足元から刺すような光が八方へ広がり、辺りが異常な明るさに包まれた。
やべっ、持ってきてたゲートの本だ。
おいおい、こんな時に召喚のお時間かよ。
てか、どうなるんだよ。
目の前で俺が消えちゃうぞ。
やべえって。
ニュースなるじゃん。


そして俺はゲートへ吸い込まれ、意識を失った――

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