それでも僕はその愛を拒む

Kanon1969

兄と妹の思考

1
「ねぇ兄さん、何でこんなに帰りが遅いの?参考書を買いに行っただけなんだよね?」

「え~と、町で友達に会って、その友達と遊んでたらこんな時間になってしまいました」

色々な面倒事に巻き込まれた挙句の果てに帰宅した時刻は4時を少し過ぎていたため、案の定、帰宅早々僕はリビングで花恋に遅れた理由を問い詰められているのだが、まさか花恋に美麗や詩音との事を話す訳にはいかないため、友達と会った事にして話を進める事にした。

「はぁ、じゃあ何で花恋に連絡の一つもくれなかったの?」

「家に携帯を忘れてしまって」

「...もう携帯くらいちゃんと持って外出してよ、花恋がどれくらい心配したと思ってるの?お昼前には帰ってくる筈なのにお昼を過ぎても一向に帰って来ないから何か事故とかに巻き込まれたんじゃないかって凄く心配だったんだから!」

花恋にそこまでの心配をかけていたとは...本当に申し訳ないな、今後はこういった事がないように外出する時はちゃんと携帯を持っているか確認してから外出するとしよう。

「すまない」

「じゃあこれからは外出時はちゃんと携帯を持って、帰りが遅くなる時は花恋に連絡してよね」

「分かりました」

「あと、お昼は食べたの?」

あ、そう言えば食べてないな、まぁ立て続けに面倒事に巻き込まれたから食べてる時間もなかった訳だが...

「食べてない」

「え?!何で?」

「すっかり忘れてました」

嘘ではないよな?時間がなくて食べ忘れてしまった訳だし、まぁ友達と遊んでたなどという嘘を既についている上で今更嘘ではないなどと言うのも心苦しいものがあるが、

「昼食を食べ忘れるとか、普通ないよ、第一友達と一緒に居たんでしょ?まさかその友達も昼食の事を忘れてたとか言わないよね?」

「え?あぁそれは、昼前と昼時で別の友達に会ってさ、それで気付けば昼に何も食べてなかった」

うわ...これじゃあまるでいたずらがバレないように必死に取り繕ってる子どもみたいじゃないか。

「ふ―ん、そうなんだ、でも今後はそんな事ないようにしてよ、ちゃんと昼食はとること」

「分かった」

「それじゃあ私はそんな昼食を食べてない兄さんのために早く夕食を作っちゃうから兄さんは出来るまで部屋でゆっくりしてて」

「ああ、ありがとう」 

はぁ、花恋には迷惑をかけっぱなしだな、もっと僕も兄としてしっかりしないとな。



自室に戻ると案の定、携帯は部屋にあり、何か通知が入っていないか確認すると、

「え?」

花恋からの不在着信やメールなどが30件以上あった。

「いや、いくら心配だったからって、え?こんなに?」

メールの内容はどれも、何で帰りが遅いの?や大丈夫?等の僕の身を案じるものばかりだったが、

「流石にこれは多過ぎないか?」

それ程までに僕の事が心配だったのだろうか?だとしたら花恋には非常に申し訳ない事をしてしまったな。

「...でも、何故だろうか?」

普通ではない何かを感じる、それはもはや異常に近い何かを...

「いや、やめだ、今日の件は全て僕がいけないんだ、花恋に余計な心配をかけてしまった僕が悪いんだ」

だからこれ以上考えるのは良そう、きっとそんなに深い理由は無い筈だ。

そぅ、ただ花恋は僕の事が心配だっただけだ。


3  (花恋視点)
「昼前と昼時で別の人間か...」

兄さんは友達と言っていたが、果たして本当に友達なのだろうか?そもそも兄さんは友達との交友を避けている筈だから、仮に本当に友達と会っていたとしてもここまでの時間を共にするだろうか?

それに、兄さんの話し方はまるで何かを隠していて、それを必死に私にバレないようにしているようにしか思えなかった。

相変わらず兄さんは隠し事が下手だなぁ。

つまりは友達と会った訳ではないのだろう、もし仮に本当に会っていたとしてもここまでの時間を共にはしないだろうし。

「じゃあ、誰に会ったのかな?」

この前に兄さんが泊まりに行った所の人?

チッ、思い出しただけでも忌々しい、兄さんを縛る私の敵、まさかこんなにも身近にその存在を感じる事になろうとは...

だが、一人はそいつだったとしても、もう一人は一体誰?

...はぁ駄目かな、私の持っている情報はあまりにも少ないがゆえに、もう一人が兄さんにとってどういった存在なのかという結論には確実に辿り着きそうにない。

もっと兄さんに探りを入れないといけなかな、でも兄さんに怪しまれない様に事は慎重に進める必要がある。

「少し時間がかかりそう、でも」

私は何としても全てを暴いてみせる。

誰にも兄さんは譲らない。

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