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それでも僕はその愛を拒む

Kanon1969

予期せぬ二日間 4

1
「どのくらいの時間に帰るの?」

「朝食が食べ終わった後に、支度を済ませたら帰るつもりだ、あまり世話になる訳にはいかないからな」

僕は今、詩音と一緒に朝食を食べている、朝食は全て詩音が作った物で、僕は何も手伝わせてもらえなかった。

「そぅ、別にゆっくりしていっても良いのよ」

「遠慮しておく、僕は約束通り此処に泊まった、だからいい加減に帰らせてもらう」

此処にこれ以上の長居はしたくない、早いとこ、ノートのありかを聞いて帰りたい。

「はぁ、そこまで言うんだったらしょうがないわね」

「約束、覚えてるよな?」

「分かってるわよ、無月君が帰る時になったら教えてあげる」

「分かった」

このためだけに此処に泊まりに来たのだ、正直、昨日を振り返っただけで頭が痛い...だが、世話にもなった、あえて文句を言うつもりは無い。

「昨日は、とても楽しかったわ、ありがとう」

「...それは良かったな」

詩音はいつもの冷たい声音で僕にそう告げる、聞いてる側としては、本当にそう思っているのかまるで分からないが、まぁ詩音は楽しかったのだろう。

僕は楽しいとは言えない、ただノートのありかを聞き出すために僕は詩音の言う通りにしていただけだ、楽しい筈がない。

「あら、無月君は楽しくなかったの?」

「僕にそれを聞くのか?」

「クスッ、良いじゃない、教えてよ」

あえて僕に楽しかったかどうかを聞くなんて、何を考えているんだこの女は、また僕はこの女に遊ばれてるのか?本当に良い趣味をしている、それなら僕も正直に答えるまでだ。

「楽しい訳ないだろ?ずっとお前に遊ばれてる気分だったよ」

「そう思われるのも無理ないわね、少しだけ、楽しかったって言ってもらえる事を期待してたのだけど、やっぱり駄目みたいね」

何だよ期待って、理解できない、僕が楽しかったなんて言う訳ない事くらいコイツも分かりきっていた筈だ、その中で期待していたって言うのか?一体何を考えてるんだよ。

「ごちそうさま、ありがとう、うまかった」

「やっぱり、無月君って優しいわね」

「チッ...」

何で詩音の事を気にかけなきゃいけないんだ、僕も僕で変になってるな、まぁ良い、早いところ帰り支度を済ませよう。


2
朝食を食べ終え、帰り支度を始めるために、僕は許可をもらい、荷物の置いてある詩音の部屋入った。

「はぁ、ようやく帰れる、それに聞きたい事も聞けると思うと少しは気分が良くなってきた」

この長い時間に終止符を打つ事が出来る、だが何故だろうか、少し寂しい様な気もする。 

昨日、寝る前に詩音に噛まれた首元に手を当てると、少しだけ、心に暖かさを感じる、詩音の事が僕は誰よりも嫌いな筈なのに...

「やめろ、余計な事は考えるな!何にせよ、詩音が僕を縛り付けているのは変わらないんだから!」

そうだ、詩音が僕を自分から離れられない様にしているのは変わらない、ノートを取り返さないと僕はずっと詩音から逃れられない、それだけは何がなんでも回避しなければならない、絶対にだ。

ゆえに、僕にとって詩音と言う存在は障害でしかない筈だ、余計な感情など、持ってはならない。

「早く帰り支度を済ませよう、また気分が悪くなりそうだ」

大して荷物がある訳では無いので、本来であれば支度を終えるのにあまり時間は必要ないのだが、余計な事を考えていたせいで無駄に時間がかかってしまったが、まぁ良い、詩音に帰る事を伝えて、ご褒美とやらを貰いに行くか。


3
詩音は朝食の片付けをしていたため、リビングに居た。

「帰る前にご褒美を貰いたいんだが」

「本当にもう帰るの?まだ9時前よ」

「帰る、このまま此処に居ると、また何かさせられそうだ」

「もう大丈夫よ、そんな心配しなくても」

だとしても僕は此処に長居する意味が無い、詩音の要件はクリアしたのだ、あとは聞きたい事を聞いて帰るだけだ。

「...はぁ、分かったわよ、で、何が聞きたいの?」

ようやくだ!ようやくこの時が来た!

「僕のあのノートのありかを教えろ」

「...一番奥の部屋の中にある金庫の中に入ってるわよ」

一番奥の部屋?確かにそんな部屋あったな、廊下の突き当たりにあるあの部屋か、何の部屋か全く分からなかったが、あの部屋の中にあったのか。

え?でも、金庫?そんな物を一体どうやって開ければ良いんだよ、じゃあ僕はずっとこの女と付き合い続けなきゃいけないのか...?

「クスッ、ひどい顔ね、真っ青じゃないの」

「...」

「仕方ないわね、あなたにチャンスをあげる」

チャンス?何だそれ、自分にとって損しかない筈なのに僕にチャンスをくれると言うのか、本当におかしな奴だな、だが...

「ありがとう」

「良いわよ、お礼なんて、あなたには必要でしょ、だから私は与えるの、でもその代わり二度は与えない」

「分かった」

「それじゃあ、一度しか言わないからよく聞きなさい、金庫は四桁の暗証番号で開く仕組みになってるの、私は今回みたいに無月君にして欲しい事を合計で四回言うから、無月君はその要件をクリアする、クリア出来たら、ご褒美として一回ごとに一桁ずつ暗証番号を教えて上げる」

要するに僕は四回、詩音の頼みを聞けば良い訳だ、ただし、ご褒美としてだから、その頼み事を遂行する際にも詩音に何かさせられるだろうが、仕方あるまい、全てはノートを取り返すためだ。

「分かった、だが、お前も覚えてるよな、付き合うにあたってした、いくつかの約束の事を」

「覚えてるわよ、その上で言ってるんだから、もう少し嬉しそうにしなさいよ」

「あのノートを僕が取り返した場合、僕はお前と別れる事が可能になる」

「もぅ、覚えてるって言ってるのに、何でわざわざ言うのよ...」

言わば、あのノートは僕が詩音と別れる事を可能にする唯一の道だ、それを分かっていて僕にそれが返ってくる可能性があるチャンスを与えるなんて...

「本当に良いのか?」

「何度も言わせないで、この私が良いと言ってるのよ、チャンスをあげるって、それにあんな顔の無月君を私が切り捨てられる訳ないじゃない」

「ありがとう、詩音」

「はぁ、今回だけだからね、もう二度と無いわよこんな事、それと失敗したらそこで終わりだからね」

「ああ、分かってる」

詩音は僕に一度だけチャンスをくれた、僕はこれを無駄には出来ない、失敗したらそこで終わりだ、なんとしてでも、ものにしなければならない。

「それじゃあ、僕は帰る」

「そぅ...」

「...まぁ確かによく考えてみると、そこそこ楽しかった」

「っ!ありがとう、気をつけて帰るのよ」

帰り際、何となく、そんな事を言ってしまった、何で楽しかったなどと言ってしまったのか、僕にはよく分からなかった、だが、別れを告げる詩音はとても嬉しそうな表情をしていた、それを見ると不思議と言ってしまった事に対して後悔はしなかった。

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