それでも僕はその愛を拒む
予期せぬ二日間 1
1
僕は今日、約束通りに詩音の所に泊まりに来ている。出来る事なら泊まりになど絶対に来たくもないのだが、ノートのありかを聞くためだ……。仕方ない。
僕は詩音に指定された通りに二時に詩音のマンションを訪れ、今はいつも通り、詩音の自室にいる。
「ありがとう、ちゃんと来てくれたのね」
「まぁな、だが、お前が僕に言った事は覚えてるよな?」
「えぇ勿論、無月君が知りたい私の事を何でも一つ教えるって言う話の事でしょ? あなたに言われるまでもなく、ちゃんと覚えてるわよ」
今日もまた、詩音は人を見下す様な表情と、冷たい声音で僕と話している。
僕とて、詩音が自分で言った事を忘れているなんて本気で思っている訳ではないが、もし万が一にでも話が無かった事にでもされていたら、此処に来た意味がない。それ故の確認だ。
「でもね、私が無月君の質問にこたえるのは、あなたが帰る時、つまりは最後にご褒美としてこたえてあげるって言うこと」
最後にご褒美として? 言っている事の意味が分からないが、まぁ結局は僕の質問にこたえてもらえるのならば、何でも良いか。
「分かった。それで構わない」
「フフ、ありがとう。それと夕食の件なのだけど、私が作るから楽しみにしててね」
「詩音一人に全て頼んでしまっても良いのか?」
「大切なお客様に雑用を頼む訳にはいかないでしょ」
そう言えば、僕が此処に来ている時に詩音に何かを頼まれた記憶が無い。
「そうか、そういう事なら、よろしく頼む」
「はい。頼まれました」
その後も詩音と会話をし、いつも通りに時間が過ぎ、詩音は夕食の支度をすると言う事で、この部屋を出て行った。その際に夕食が出来るまでの間、僕はこの部屋でゆっくりしていてと言われた。
せっかくだから、この部屋にノートが無いかを確認しようかと思ったが、もしノートがこの部屋にあるのなら、そもそも僕をこの部屋に一人にするはずが無い、そう思った僕は、特にしたい事もなくなってしまったため、少しの間、眠る事にした。近頃は真衣にやたらと校内で付きまとわれるようになったため、以前よりも大分疲れている。こんな事さえ無かったら自分の部屋でゆっくり休んでいられたのだが、ノートの事が最優先事項だ。仕方あるまい。そんな事を考えていると徐々に眠くなってきて、僕は詩音の部屋の壁にもたれかかって眠ってしまった……。
2
目を覚ますと体は仰向けに寝かされており、詩音の顔が僕の目の前にあり、僕の頭部は詩音の膝の上という奇妙な状況が完成していた。
「おはよう無月君。よく眠れたかしら?」
「何だよ? これは?」
「何って、どう見ても膝枕じゃない」
「僕はお前の膝の上で眠った記憶が無いんだが?」
「それはそうでしょうね。私が眠っている無月君を起こさないようにを動かしたんだから、そんな記憶なんてある筈が無いでしょ」
「……分かった。ありがとう、もう良いよ」
「あら、もう少し眠っていても良かったのに……」
詩音が何か言っているが、無視して僕は自分の体を起こした。目覚めて早々、疲れる事になるとは思わなかった。
「お前が此処にいると言う事は、もう夕食は出来ているんだろ? 悪いな、眠ってしまっていて、お前が僕を呼びに来てからどの位たった?」
僕は起こしてくれれば良かったのにと思ったが、おそらく詩音は、あえて僕を起こさなかった。その証拠に膝枕なんてされていたのだから……。多少は下心もあっただろうが、本質は僕を休ませてくれていたのだと思う。眠っている間の事は覚えていないが、意識が目覚める時に、どこか心地良さを感じた。だから僕はこの事で詩音に対して文句など言えない。言えるのはこんな謝罪くらいだ。
「別に対して時間はたってないわよ。料理もあまり冷めていないと思うし。それに私があなたにゆっくりしていてと言ったんだから、無月君が謝る必要なんてないのよ。でも、それなら早く夕食にしましょう」
「あぁ、分かった」
そして、僕と詩音は夕食をとるために、リビングに移動した。リビングのテーブルには、美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。
「これを全部、作ったのか?」
「えぇ、大切なお客様をもてなすのだから、このくらい当然でしょ」
詩音の作った料理は見た目通り、どれも美味しかった。だが、出された料理を残すのも悪いので、完食するために、少しばかり食べ過ぎてしまい、ちょっと苦しい。
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「ありがとう。まさか全部食べてくれるなんて思わなかった。とても嬉しいのだけど、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫」
「本当に? そうは見えないのだけど、張り切って作りすぎたわね。ごめんなさい」
「僕は大丈夫って言ったんだ。それでお前が謝る必要なんてないだろ?」
「え? ……フフ、ありがとう。無月君って本当に優しいのね。あなたを縛っている本人にまで、そんなことを言うなんて」
僕の発言に対して詩音は一瞬、驚いたような表情をした後にまるで大切な物を慈しむかのような視線を僕に向けてきた。この時の僕の脳裏には詩音が今日、僕に対して言っていた大切なお客様と言う言葉が浮かんだ。
真衣と会話をしている時にも思ったが、詩音は僕の事をそれ程までに大切に思ってくれているという事なのだろうか?
そんなふざけた事を言う詩音は、いつもの人を見下すような感じなど、どこにも感じなかった。それは、おそらく大切な物へ向けるような慈しみの視線を僕に向けていたからなのだろう。だが、僕にはその視線が純粋なものなのか、それとも偽りのものなのかの区別がどうしてもつかなかった……。
「ねぇ無月君、一緒にお風呂入りましょう」
「は?」
僕は今日、約束通りに詩音の所に泊まりに来ている。出来る事なら泊まりになど絶対に来たくもないのだが、ノートのありかを聞くためだ……。仕方ない。
僕は詩音に指定された通りに二時に詩音のマンションを訪れ、今はいつも通り、詩音の自室にいる。
「ありがとう、ちゃんと来てくれたのね」
「まぁな、だが、お前が僕に言った事は覚えてるよな?」
「えぇ勿論、無月君が知りたい私の事を何でも一つ教えるって言う話の事でしょ? あなたに言われるまでもなく、ちゃんと覚えてるわよ」
今日もまた、詩音は人を見下す様な表情と、冷たい声音で僕と話している。
僕とて、詩音が自分で言った事を忘れているなんて本気で思っている訳ではないが、もし万が一にでも話が無かった事にでもされていたら、此処に来た意味がない。それ故の確認だ。
「でもね、私が無月君の質問にこたえるのは、あなたが帰る時、つまりは最後にご褒美としてこたえてあげるって言うこと」
最後にご褒美として? 言っている事の意味が分からないが、まぁ結局は僕の質問にこたえてもらえるのならば、何でも良いか。
「分かった。それで構わない」
「フフ、ありがとう。それと夕食の件なのだけど、私が作るから楽しみにしててね」
「詩音一人に全て頼んでしまっても良いのか?」
「大切なお客様に雑用を頼む訳にはいかないでしょ」
そう言えば、僕が此処に来ている時に詩音に何かを頼まれた記憶が無い。
「そうか、そういう事なら、よろしく頼む」
「はい。頼まれました」
その後も詩音と会話をし、いつも通りに時間が過ぎ、詩音は夕食の支度をすると言う事で、この部屋を出て行った。その際に夕食が出来るまでの間、僕はこの部屋でゆっくりしていてと言われた。
せっかくだから、この部屋にノートが無いかを確認しようかと思ったが、もしノートがこの部屋にあるのなら、そもそも僕をこの部屋に一人にするはずが無い、そう思った僕は、特にしたい事もなくなってしまったため、少しの間、眠る事にした。近頃は真衣にやたらと校内で付きまとわれるようになったため、以前よりも大分疲れている。こんな事さえ無かったら自分の部屋でゆっくり休んでいられたのだが、ノートの事が最優先事項だ。仕方あるまい。そんな事を考えていると徐々に眠くなってきて、僕は詩音の部屋の壁にもたれかかって眠ってしまった……。
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目を覚ますと体は仰向けに寝かされており、詩音の顔が僕の目の前にあり、僕の頭部は詩音の膝の上という奇妙な状況が完成していた。
「おはよう無月君。よく眠れたかしら?」
「何だよ? これは?」
「何って、どう見ても膝枕じゃない」
「僕はお前の膝の上で眠った記憶が無いんだが?」
「それはそうでしょうね。私が眠っている無月君を起こさないようにを動かしたんだから、そんな記憶なんてある筈が無いでしょ」
「……分かった。ありがとう、もう良いよ」
「あら、もう少し眠っていても良かったのに……」
詩音が何か言っているが、無視して僕は自分の体を起こした。目覚めて早々、疲れる事になるとは思わなかった。
「お前が此処にいると言う事は、もう夕食は出来ているんだろ? 悪いな、眠ってしまっていて、お前が僕を呼びに来てからどの位たった?」
僕は起こしてくれれば良かったのにと思ったが、おそらく詩音は、あえて僕を起こさなかった。その証拠に膝枕なんてされていたのだから……。多少は下心もあっただろうが、本質は僕を休ませてくれていたのだと思う。眠っている間の事は覚えていないが、意識が目覚める時に、どこか心地良さを感じた。だから僕はこの事で詩音に対して文句など言えない。言えるのはこんな謝罪くらいだ。
「別に対して時間はたってないわよ。料理もあまり冷めていないと思うし。それに私があなたにゆっくりしていてと言ったんだから、無月君が謝る必要なんてないのよ。でも、それなら早く夕食にしましょう」
「あぁ、分かった」
そして、僕と詩音は夕食をとるために、リビングに移動した。リビングのテーブルには、美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。
「これを全部、作ったのか?」
「えぇ、大切なお客様をもてなすのだから、このくらい当然でしょ」
詩音の作った料理は見た目通り、どれも美味しかった。だが、出された料理を残すのも悪いので、完食するために、少しばかり食べ過ぎてしまい、ちょっと苦しい。
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「ありがとう。まさか全部食べてくれるなんて思わなかった。とても嬉しいのだけど、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫」
「本当に? そうは見えないのだけど、張り切って作りすぎたわね。ごめんなさい」
「僕は大丈夫って言ったんだ。それでお前が謝る必要なんてないだろ?」
「え? ……フフ、ありがとう。無月君って本当に優しいのね。あなたを縛っている本人にまで、そんなことを言うなんて」
僕の発言に対して詩音は一瞬、驚いたような表情をした後にまるで大切な物を慈しむかのような視線を僕に向けてきた。この時の僕の脳裏には詩音が今日、僕に対して言っていた大切なお客様と言う言葉が浮かんだ。
真衣と会話をしている時にも思ったが、詩音は僕の事をそれ程までに大切に思ってくれているという事なのだろうか?
そんなふざけた事を言う詩音は、いつもの人を見下すような感じなど、どこにも感じなかった。それは、おそらく大切な物へ向けるような慈しみの視線を僕に向けていたからなのだろう。だが、僕にはその視線が純粋なものなのか、それとも偽りのものなのかの区別がどうしてもつかなかった……。
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「は?」
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