やっと封印が解けた大魔神は、正体を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~

魔法少女どま子

神の力で無理やり合格!

「ひっ……!」
 魔王ワイズは顔の前で両腕を交差させた。
「お、お辞めください! わ、わわ私を殺しても良いことはありません!」

「ふふ」
 僕はにっこり微笑んだ。
「そうかなぁ? 僕としては十年前の借りを返したいところだけど」

「に、人間側の国王……ナイゼルは狡猾な男です! 自分の身が安全だと判断すれば、間違いなく攻め込んできます! ですから……」

 ナイゼル。
 その名前には聞き覚えがあった。

 たしか、もとは前王の第八王子だ。
 多くの兄が存在したにも関わらず、さまざまな罠を仕掛け、兄弟みなを退陣に追み、自身だけが政界に躍り出た。

 彼のずる賢さを、僕は知っている。神殿でずっと覗き見ていたからだ。 

 いまやナイゼルの周囲に彼の反対派はいない。信頼できる忠臣だけを抱え、刻一刻と力を蓄えている。単純な強さなら魔王のほうが断然上だが、その知略、頭脳は、魔王など相手にならないだろう。

 ――仕方ないか。
 僕はふっと息をつくと、突きだしていた右手を降ろした。

「今回は見逃してあげるけど……わかってるよね? 君は所詮、僕に生かされているに過ぎないんだよ」

「は、はい……肝に銘じます……」

 こうして、《僕による魔王の面接》は幕を閉じた。





 その後、一般受験生たちの面接が行われた。

 あの気味の悪い部屋に入る直前、受験生たちはやけに緊張した面持ちだった。

 あんな小者臭こものしゅう溢れる魔物、適当にあしらっておけばどうということはないのだが。

 ちなみにコトネだけは面接を行っていない。

 彼女が拒否したからだ。
 魔王ワイズの奸計かんけいにより、僕のみならず、コトネの人生も窮地に陥った。そんな奴と同じ空気を吸いたくない……というのが理由だった。

 もちろん、それでも僕とコトネの合格は揺るがない。存分に魔王を脅しておいたからね。これくらいのワガママではむしろ足りないくらいだろう。

 そして数日後。
 僕とコトネの住むアパートの一室に、当然のように合格通知書が届いていた。

 入学式は三日後。それまでに制服や勉強道具など、必要なものを取り揃えてほしい――と書いてあった。

 有り難い配慮だが、それらの準備は魔王城に来る前から済ませてある。いまさらなにを用意するでもないので、僕とコトネは、せっかく空いた時間を城下町の探索に費やすことにした。


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