異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第132話 「7割完成品」

 
 ルームサービスで届いた夕食を食べながら想像を繰り返す。
 机の上から溢れた剣は、私の魔法庫に入れた。


「ちょっとリッカ!
 食べるか創るかどっちかにしなさいよ!
 さっきから玩具みたいな剣しか創れてないじゃない!」

「む! ごめんなさい!」


 ガツガツとよくわからない美味しい肉を頬張り、『想像』に集中する。
 重さや長さは完璧だ。
 あとはパーム考案のデザインを上手く埋め込めば完璧だ。

『想像』の仕方も少し変えてみた。
 今までは頭の中で考えた物を『ポンッ』と出現させていたが、端っこからジワジワゆっくりと『想像』するようにしてみた。

 柄の部分からゆっくりと出現させていく為、いつもの倍は時間がかかる。


「そう……いいわよ。
 そこ! ちょっと出っ張らせて……そうそう!
 先端に近づくにつれて平らに……良いわ」


 パームが出現していく剣に顔を近づけて興奮している。
 少し気が散ったが、何とか最後まで完成させた。


「どうですか?
 結構上手く出来たと思いますよ!」


 パームが剣を持ち、両手で振ってみる。


「重さと長さは良いわね。
 デザインをモデル通りできてるわ。
 ただ……」

「ただ……?」


 パームが石床の上に剣を突き立てる。
 鉄の擦れる甲高い音が響き、剣先が床に刺さる。


「やっぱり切れ味が悪いわね。やり直し」

「えぇーそんなぁ!」


 パームが剣を墓場の山に投げようとしたとき、私たちを見ていたグレンが椅子から立ち上がった。


「ちょっと見せてもらうよ」


 グレンが剣を受け取り、剣先を眺める。


「切れ味が良すぎると望んでいない事態が起こるかもしれない。
 僕はこれくらいが良いと思う。
 刃こぼれもしてないし、完璧だよ」

「やった! 監督のオーケーでましたよパームちゃん」

「いいの?
 切れない相手が居ても文句言わないでね」

「これ以上切れ味が良いと、足の上に落としただけで大変なことになりそうだからね」


 グレンが剣を振り、満足そうに抱える。


「ところでリッカ、鞘も創ってほしいんだけど……」

「え、前と同じやつじゃダメなんですか?」

「刃幅が広くなったから入らないよ」


 新しい剣を鞘に入れると、半分過ぎたくらいで引っ掛かっている。


「んーちょっと待ってくださいね」


 想像した剣を思い浮かべながら、それに沿うように鞘を創る。
 ポンッと簡単に想像してみた。

 見た目は鉄のようだが、革のように軽く鉄よりも頑丈!
 オマケにベルトも付けておいた。


「どうですか? ピッタリ合いますか?」


『チンッ』と子気味良い音を立てて鞘に剣が収まる。


「ありがとう、完璧だよリッカ。
 パームもありがとう」

「お安い御用ですよねパームちゃん!
 さぁ明日は早いんですから早く寝ましょ」


 ベッドのシーツを整えようとすると、グイグイと服を引っ張られた。


「リッカ、アナタはまだ仕事が残ってるわ」

「……なんですか?」


 パームが床を指さす。
 何事かと思いながら床に目をやると、床には所々に切れ味を試した傷が出来ていた。


「わ! 傷だらけですね! 弁償モノですよこれ!」

「だから直すのよ。
 『想像』で削れた分の石を創ってはめ込むの。
 私も手伝うから早く済ませちゃいましょ」


 渋々、石を創ってはめ込んでいく。私が造った穴じゃないのに……。
 必死に一つの石を『想像』するパームを尻目にため息を吐いた。

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