異世界転生を司る女神の退屈な日常

禿胡瓜

第68話 「そういうタイプ」

 
 宿屋を確認したあと、夕食を食べに来た。
 グレンがどこか吹っ切れているように見える。
 食べる食事の量より、飲むお酒の量のほうが多い。


「いや、あのね?
 正直ぶったまげたよリッカ。
 君は一体何歳なんだい?」

「よ、四百歳くらいですかね……」

「四百歳! はっは!はははっははー!」


 なんだか絡み方が五月蠅い。
 はーきっついなぁ。

 普通ならお酒を飲むと『酔う』らしい。
 だいたいの人はテンションが上がって、いつもと少し違う人になる。
 正直、それに素面で付き合うのは面倒だ。
 私も一所懸命果実酒を飲んでいるが、一向に酔うことができない。
 ただのこってりと甘い液体だ。


「まぁ、四百歳でも四千歳でもいいさ!
 僕が言いたいのは、君は見た目の年齢に反して知識が無いということさ!」

「えっ酷い……」


 急に悪口を言われた。
 まぁ確かに女神育成学校では下から数えた方が早い成績だったが、グレンに言われる筋合いはない!……と思う。


「ちょっと知識が無いは言い方が違うかな?
 なんか、リッカは抜けているところがあるんだよ。
 子供っぽいというか……子供っぽい!」

「酷い……」


 テンシの気持ちが今になって分かった。
 確かに子供扱いされるのはムッとする。

 そんなことを考えているうちにも、グレンが話す話題がコロコロと変わる。
 酔った人をまともに相手してはいけないようだ。
 疲れてしまった。
 グレンの言うことを適当に受け流しながら、夕食を食べる。おいしい。

 しばらくすると、グレンがやけに静かな事に気が付いた。
 様子を伺ってみると、グレンが机に突っ伏して寝ている。


「えっ、グレンさんちょっと起きてくださいよ」


 身体を揺すってみるが、起きる気配はない。
 めんどくさい。
 幸い、広い酒場の奥の方に居るため一目が無い。
 念の為、グレンを椅子から転がり落として床に寝かせる。
 誰か見ている人が居ないか確認してから、グレンのことを魔法庫に入れた。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 部屋いっぱいの布団の中にグレンを放り出す。
 せっかくなので、ロープを生成してグレンの腕と身体を固定させる。
 これで寝相が悪くてもそう動くことはないだろう。
 私のスペースも確保できる。


 寝っ転がって魔導書を取り出して見る。
 今日覚える魔法を探し始めた時に気が付いた。
 机が無いと、魔法陣を描く気にならない。
 椅子に座って、机に向かうのが一番集中できるのだが、そもそもこの部屋は椅子すら置く隙間がない。

 寝る気もしないしなぁ……。
 少し、少しだけ外を散歩してみよう。
 そう思い、音を立てないように部屋から出た。

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