異世界転生を司る女神の退屈な日常
第16話 「表彰と褒美」
いつも外から見て「立派な建物だな~」っと思っていたが
なんやかんやで大聖堂内を歩くのは初めてだ。
赤い絨毯の上を歩きながら、ところどころ観察してみる。
派手過ぎずに装飾をされ、窓からは優しい光が入り込んでいる。
見上げてみれば、天井はどこまでも高く、壁には大天使が彫刻されていた。
広すぎる空間と緊張が混ざり合って眩暈がする。
そんな様子を見た天使が心配そうに声をかけてくる。
「う、うん。ヘーキヘーキ!」
顔をぺしぺしと叩いて緊張をごまかす。
「そういえば、どれくらいの人が見に来てるの?」
「えーっと、はっきりと定かではありませんが
天使学校の生徒たちは絶対参加なので、2万人以上は確実ですね~。」
二万人以上!
そんなに多くの人に注目されるのは初めてだ!
「リッカ様~。着きましたよ~。」
天使は大きな扉の前で止まる。
私は一度、大きく深呼吸をしてエリカちゃんに教えてもらった『おまじない』をもう一度やる。
……よし!
「天使さん!案内ありがとうね!」
私は覚悟を決めて重い扉を押し開いた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
開いた扉の隙間から、まぶしい光があふれだす。
「うへぇまぶしい。」
思わず口に出して喋ってしまうほどまぶしかった。
薄目を開けて、扉の向こうを確認する。
そこでやっと、たくさんの瞳がリッカのことを視ているのに気が付いた。
そこは、周りが階段状になっている円形の大広間だった。
そして、その空間にたくさんの天使や女神が居た。
開いてる座席がないのだろうか。宙にまでも天使たちが居る。
どこかで天使が「くすくす」と笑い、小さく注意される声が聞こえる。
リッカは慌てて取り繕い、シャキシャキと階段を降りる。
大きな広間の為、階段も無駄に長い。
左右の目を気にしながら降りて、ようやく中央のステージ
そして、そこに立つ人物が見えてきた。
天界で唯一『聖母』の名を持つマリアがそこにいた。
「女神リッカ、どうぞこちらへ。」
聖母マリアに導かれ、リッカは壇上に立つ。
「随分と緊張していらっしゃるようですね?
事務的な文句はすべて省いてしまいましょう。」
マリアが手をぱちんと叩いてニコリと笑う。
この場から一刻も早く去れるのなら本望だ。
「女神リッカ、あなたが送り出した転生者が魔王を討伐するという大業を成し遂げ、天界に大いなる貢献を果たしました。今回の偉業は、『勇者』のスキルを持つ転生者ではないとされ、多くの注目を浴びています。あなたが考え出したユニークスキルは前代未聞のスキルであって……………」
マリアの讃頌が延々と続く。
「…………ということで、今回は残念ながら『姓』を与えることができません。
もう一度このような機会があれば、与えて差し上げましょう。
さて、ではどのような褒美をあなたは望みますか?」
「あっはい!えーっとそうですね…」
突然の問いかけに少し戸惑う。
やっぱり、『姓』をもらうことはまだできないようだ。
私が今欲しいものは?
これから生活するうえで役立ちそうなものは?
家は仕事場から少し遠いけど、環境が気に入っている。
魔力だった並み以上に保有している。
特別な力が欲しいわけでもない。
…強いて言えば、『暇』が多い。
退屈なのだ。
退屈を紛らわす『娯楽』が欲しい!
「…『娯楽』が、欲しいです。」
「娯楽ですね。確かに天界には娯楽となるものが存在しません。
意図して存在しないようにしているわけですが…。まぁよいでしょう。
望む具体的な娯楽はありますか?」
具体的に…。
考えたことがなかった。
小さな天使たちが「サッカー!!」と叫ぶ声が聞こえた。
マリアがその声を聴いて微笑む。
そうか、私一人だけが楽しむ娯楽じゃなくていいんだ。
エリカちゃんと一緒に楽しむことができるものがいい。
そうすると……。
たくさんの候補が上がり、そのたびに別の案が浮かんで消えていく。
どうしよう!決められない!
「…お困りのようですね。『娯楽』に精通している生き物といえば、人間ですね。
少し彼らを参考にしてみましょう。」
マリアがそう提案し、どこからか本を取り出して読み上げる。
「運動、釣り、音楽、カラオケ、ゲーム、ボーリング、裁縫、写真撮影、神社巡り…」
マリアが次々と候補を上げてくる。
これらがみんな、人間の娯楽なのだろうか。
「料理、陶芸、ダンス、へぇ~、石集めなんてのもあるらしいです!」
石集めは娯楽なのだろうか?
ふとそう思い、マリア様の本を覗いてみる。
本のタイトルは『ちょっと珍しいのも紹介? ~800種以上の趣味を紹介~ 』
趣味は娯楽ではないのでは?
そう思ったが、少し興味を惹かれるタイトルだった。
心なしかマリア様は、私そっちのけで本に夢中である。
私も…読みたい!
これを褒美にしてもらおう!
「マリア様!決めました!人間の本をたくさん図書館において欲しいです!」
「あらいいですね!確かに天界にも図書館がありますが、どれも退屈なものばかりです。
人間が娯楽として読むような本を、異世界中から図書館に取り寄せましょう。」
天使たちが歓声を上げる。
天界に初めて歴とした娯楽が生まれるのだ。
こうすれば、退屈な日常も少しは紛らわすことができるだろう。
「女神リッカ、本日の表彰式はこれでおしまいです。
本の件は、迅速に対応しましょう。
これからも精進して転生に励んでください。」
マリア様に一礼して、壇上を降り、広間を後にする。
天使たちがすれ違いざまにサムズアップをしてくる。
他の神々も少し口元がほころんでいるように見える。
『娯楽』とは、それほどの力を持つのだ。
だが、何事にもいずれ『飽き』が来る。
だとすれば、ほかの娯楽も必要になるだろう。
『ちょっと珍しいのも紹介? ~800種以上の趣味を紹介~ 』とやらを参考に娯楽を増やしていけば
天界で退屈な日常を過ごすことはなくなるだろう。
そう女神リッカは考え
天界を娯楽で埋め尽くすことを胸に誓った。
なんやかんやで大聖堂内を歩くのは初めてだ。
赤い絨毯の上を歩きながら、ところどころ観察してみる。
派手過ぎずに装飾をされ、窓からは優しい光が入り込んでいる。
見上げてみれば、天井はどこまでも高く、壁には大天使が彫刻されていた。
広すぎる空間と緊張が混ざり合って眩暈がする。
そんな様子を見た天使が心配そうに声をかけてくる。
「う、うん。ヘーキヘーキ!」
顔をぺしぺしと叩いて緊張をごまかす。
「そういえば、どれくらいの人が見に来てるの?」
「えーっと、はっきりと定かではありませんが
天使学校の生徒たちは絶対参加なので、2万人以上は確実ですね~。」
二万人以上!
そんなに多くの人に注目されるのは初めてだ!
「リッカ様~。着きましたよ~。」
天使は大きな扉の前で止まる。
私は一度、大きく深呼吸をしてエリカちゃんに教えてもらった『おまじない』をもう一度やる。
……よし!
「天使さん!案内ありがとうね!」
私は覚悟を決めて重い扉を押し開いた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
開いた扉の隙間から、まぶしい光があふれだす。
「うへぇまぶしい。」
思わず口に出して喋ってしまうほどまぶしかった。
薄目を開けて、扉の向こうを確認する。
そこでやっと、たくさんの瞳がリッカのことを視ているのに気が付いた。
そこは、周りが階段状になっている円形の大広間だった。
そして、その空間にたくさんの天使や女神が居た。
開いてる座席がないのだろうか。宙にまでも天使たちが居る。
どこかで天使が「くすくす」と笑い、小さく注意される声が聞こえる。
リッカは慌てて取り繕い、シャキシャキと階段を降りる。
大きな広間の為、階段も無駄に長い。
左右の目を気にしながら降りて、ようやく中央のステージ
そして、そこに立つ人物が見えてきた。
天界で唯一『聖母』の名を持つマリアがそこにいた。
「女神リッカ、どうぞこちらへ。」
聖母マリアに導かれ、リッカは壇上に立つ。
「随分と緊張していらっしゃるようですね?
事務的な文句はすべて省いてしまいましょう。」
マリアが手をぱちんと叩いてニコリと笑う。
この場から一刻も早く去れるのなら本望だ。
「女神リッカ、あなたが送り出した転生者が魔王を討伐するという大業を成し遂げ、天界に大いなる貢献を果たしました。今回の偉業は、『勇者』のスキルを持つ転生者ではないとされ、多くの注目を浴びています。あなたが考え出したユニークスキルは前代未聞のスキルであって……………」
マリアの讃頌が延々と続く。
「…………ということで、今回は残念ながら『姓』を与えることができません。
もう一度このような機会があれば、与えて差し上げましょう。
さて、ではどのような褒美をあなたは望みますか?」
「あっはい!えーっとそうですね…」
突然の問いかけに少し戸惑う。
やっぱり、『姓』をもらうことはまだできないようだ。
私が今欲しいものは?
これから生活するうえで役立ちそうなものは?
家は仕事場から少し遠いけど、環境が気に入っている。
魔力だった並み以上に保有している。
特別な力が欲しいわけでもない。
…強いて言えば、『暇』が多い。
退屈なのだ。
退屈を紛らわす『娯楽』が欲しい!
「…『娯楽』が、欲しいです。」
「娯楽ですね。確かに天界には娯楽となるものが存在しません。
意図して存在しないようにしているわけですが…。まぁよいでしょう。
望む具体的な娯楽はありますか?」
具体的に…。
考えたことがなかった。
小さな天使たちが「サッカー!!」と叫ぶ声が聞こえた。
マリアがその声を聴いて微笑む。
そうか、私一人だけが楽しむ娯楽じゃなくていいんだ。
エリカちゃんと一緒に楽しむことができるものがいい。
そうすると……。
たくさんの候補が上がり、そのたびに別の案が浮かんで消えていく。
どうしよう!決められない!
「…お困りのようですね。『娯楽』に精通している生き物といえば、人間ですね。
少し彼らを参考にしてみましょう。」
マリアがそう提案し、どこからか本を取り出して読み上げる。
「運動、釣り、音楽、カラオケ、ゲーム、ボーリング、裁縫、写真撮影、神社巡り…」
マリアが次々と候補を上げてくる。
これらがみんな、人間の娯楽なのだろうか。
「料理、陶芸、ダンス、へぇ~、石集めなんてのもあるらしいです!」
石集めは娯楽なのだろうか?
ふとそう思い、マリア様の本を覗いてみる。
本のタイトルは『ちょっと珍しいのも紹介? ~800種以上の趣味を紹介~ 』
趣味は娯楽ではないのでは?
そう思ったが、少し興味を惹かれるタイトルだった。
心なしかマリア様は、私そっちのけで本に夢中である。
私も…読みたい!
これを褒美にしてもらおう!
「マリア様!決めました!人間の本をたくさん図書館において欲しいです!」
「あらいいですね!確かに天界にも図書館がありますが、どれも退屈なものばかりです。
人間が娯楽として読むような本を、異世界中から図書館に取り寄せましょう。」
天使たちが歓声を上げる。
天界に初めて歴とした娯楽が生まれるのだ。
こうすれば、退屈な日常も少しは紛らわすことができるだろう。
「女神リッカ、本日の表彰式はこれでおしまいです。
本の件は、迅速に対応しましょう。
これからも精進して転生に励んでください。」
マリア様に一礼して、壇上を降り、広間を後にする。
天使たちがすれ違いざまにサムズアップをしてくる。
他の神々も少し口元がほころんでいるように見える。
『娯楽』とは、それほどの力を持つのだ。
だが、何事にもいずれ『飽き』が来る。
だとすれば、ほかの娯楽も必要になるだろう。
『ちょっと珍しいのも紹介? ~800種以上の趣味を紹介~ 』とやらを参考に娯楽を増やしていけば
天界で退屈な日常を過ごすことはなくなるだろう。
そう女神リッカは考え
天界を娯楽で埋め尽くすことを胸に誓った。
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