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月がきれい

イリス

夜と月と私と僕と

「月がきれいだね」

満月がまるでスポットライトのように光を放ちキミを照らす。
そして、その一言だけを遺してキミは居なくなった
夏の匂いが残る池の近くに、まるで独りぼっちのようにある橋の上で
キミは寂しくも何故だか、楽しそうだった
その笑顔がなくなった後、涙は流れなかった。悲しいと言う感情に間違いはない。
光が、萎むように居なくなったキミが立っていた場所を見つめている

キミは居なくなったけど、何だか傍にはキミがいる気がしたんだ
その場所にしゃがみ、掌を当てて確かめた。キミがいた事を。


それから数年後----------------------

ぼくは毎日あの場所に足を運んでいる
どんなに忙しくても、体調を崩しても、必ず
そして今日。あの日、あの時のように満月がまるでスポットライトのように誰かを照らしている
まさか、とぼくは考え、橋へ向かった。
しかし、そこに居たのは全くの別人だった。走ってきた為に息を切らすぼくは変な人に見えたのだろうか、その人はそさくさと何処かへ消えていった。

そうだ、いるわけがない
小さく、悲しみをこらえながら微笑んだ
大丈夫、分かってるよ。さぁ、帰ろう。
そう、考え踵を返して背中を向け、歩き出そうとした瞬間


「あ、満月」

聞き覚えのある声が聞こえた。
独り言のように、誰かに話しかけるように。楽しそうに放ったその言葉は、声は、籠められた感情を、ぼくは知っている。
ぼくは振り返った。数年ぶりに涙を流しながら。
潤瞳に映るのは、あの日と変わらぬ容姿で此方を見つめる彼女の姿。

照らしている。

彼女を、月が祝福するように照らしている。

ぼくには眩しすぎる光景だ

互いに小さく微笑んだ後、2人の声はこう言った
「「月がきれいだね」」

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