異世界はチートなカードで乗り切ろう!?

田中 凪

59.一週間前

普通の授業とハルトの特訓を受け続けること数ヶ月、学園内闘技祭の季節がやってきた。
「さて皆さん今年もこの季節がやって来ましたよ。とは言っても皆さんは入学したばかりなので初めてでしょうが…」
帰りのSHRショートホームルームで先生がそう言った。
「詳しくは明日説明しますが、学園内闘技祭は上級生ほど有利であると言えるので皆さんは気負わずに参加してください」
ゾルダはこのクラスが放課後に行っている特訓によって上級生相手であってもそこそこ戦えるほどの実力になっていることを知らないためそう言っているが、生徒達の纏う空気がなんとなくピリピリしており、何かしらあるんだろうなぁ…と思っていたりする。
「さて、先生はああ言っていましたが僕達はこの数ヶ月でかなり強くなりました。そこで、今回の目標は上級生の撃破、ということにします。最初は同学年でトーナメントをやるらしいですからね。そして、今日から闘技祭当日までは自主訓練とします。一週間めいっぱい休むもよし、クラスメイトに模擬戦を申し込むもよしです」
ハルトのその宣言に理解が進まず、呆然としているクラスメイト達にハルトはこう続ける。
「あまり張り詰めすぎると体のパフォーマンスが落ちますからね。当日に筋肉痛や疲労でまともに動けないのはイヤでしょう?まあ、最低限のトレーニングはやってもらいますが」
ハルトには前世で所属していた地域のスポーツクラブでの苦い思い出があり、それゆえの今回の行動だった。そして、ハルトの予想していたような反応が返ってきた。
「そ、そんなんで勝てるのか?」
「ええ、疲労がたまった状態ではまともに体は動かせませんよ。無様な姿を家族にさらしたくはないでしょう?」
他のクラスではどうかはわからないが、少なくともSクラスの生徒の親は自分の子どもの活躍をみに学園に観戦に来る。その時にあまりにもひどい動きをしていたら何と思われるかわかったものではない。また、クラスメイト達も親にはかっこいいところを見せたいという気持ちの方が強いので、ハルトの言葉に素直に従うことにした。



とりあえずみんなに納得してもらい、5分で終わる体幹トレーニングを教えた後、ハルトはシストリナと王都の商店街に繰り出していた。
「あそこまで自由にさせてよかったの?」
「えぇ、いいんですよ。最近は鍛錬を詰め込みすぎましたからね。ここらでゆっくり過ごすのもいいでしょう」
「そうね。最近は鍛錬ばかりだったものね。あ、ハルトこれ食べたいわ」
「わかりましたよ。おっちゃん、このサンドウィッチ2つちょうだい」
「あいよ!ちょっと待ってな」
シストリナが食べたいと言ったのは、冷やした果物をふんだんに使ったサンドウィッチだった。
「その後ろにある箱がおっちゃんの魔道具なの?」
「そうだぜ。こいつのおかげで俺はこうして食っていけてるんだ。まあ、貰った当初は冒険者に憧れてたってのもあってガッカリしたけどな」
「そうなんですか。でも、冒険者になってもかなり使えそうですけど」
あれ、どう見ても日本の企業が出してる冷蔵庫…だよなぁ。なんなら家で使ってたのと同じっぽい。まさか地球から色々パクって魔道具にしてるんじゃないだろうな…
ハルトは雑談をしながらも自分の家の冷蔵庫と同タイプの魔道具を見ながらそう思った。
「これが小さくなって持ち運びが簡単ならそれもできたんだろうがなぁ…」
「できないんですか?」
「ああ、残念ながらな…ま、結果的には冒険者をやってるより稼げてるからいいんだけどな。はら、できたぞ。2つで銅貨30枚だ…まいどあり!」
受け取ったサンドイッチをシストリナにわたしながら屋台を後にする。
「次はどこに行きますか?」
「そうね…次は新しい服が買いたいから付き合ってもらうわよ」
「はいよ。じゃあ、外で待っt…「もちろんハルトも一緒にお店に入ってもらうわよ」服のセンスは絶望的なので遠慮したいn…はい、行きます」
結局、ハルトはシストリナの圧に負けて服屋に入ることになった。まともなアドバイスやらができるわけがなく「かわいい」か「いいと思うよ」としか言わずに怒られたが。
なんて理不尽?!
他のクラスメイト達も久しぶりにゆったりとした時間を過ごし、リフレッシュしていた。


お気に入り登録者様が248人、イイネが390件になりました。ありがとうございます。できるだけサクサクと物語を進めて行けるよう努力します。
お金についての説明ってどこかでしましたっけ?ダラダラとやっているせいかどこでどんな説明をしたか覚えてない…(おい)

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品