異世界はチートなカードで乗り切ろう!?

田中 凪

47.クラス分け試験 シストリナ視点

ハルトが来るよりも少し早く来たシストリナは着席してから辺りを見回していた。
あそこにいるのは、確かアスクス子爵家のご子息だったかしら?今年はかなりの精鋭揃いと聞き及んでおりますし楽しみですね。
そんなことを思っていると、隣にハルトが座ってきた。
「あら、ハルトが隣なのね」
隣が顔見知りでホッとするわ。
「そのようですね。リナ様がお隣なら緊張もほぐれます。実技の際はくれぐれも建物ごと吹き飛ばさないようにお願いしますね」
「そ、そんなこと分かってるわよ!」
私だって手加減ぐらい心得てますわ!失礼しちゃうわ!
「ならよかったです」
とは言いつつもあの目は疑っている目ですね。ひどいです。そもそも、ドラゴンですら破壊は容易ではないと言われている壁を壊せるわけがないわ。
学科試験が始まるとその問題の内容に思わず溜息が出てしまった。
簡単すぎね…いえ、私はハルトの授業を受けていたからそう思うのでしょうけど。ちなみに、ハルトは歴史以外の筆記テストは10分ほどしたら寝ていました。
実技ではハルトとわかれます。ハルトは全ての距離に対応していますからね。バケモノですよ。そもそも、魔道具自体が反則級ですけどね…
さて、私達のいる遠距離戦闘に特化している組は訓練場に一面に並べられた鎧をどれだけ破壊できるのか、という殲滅力のテストよ。それにコントロールの緻密さのテストも残っているみたい。私の試験は最後なようなので退屈ね…他の受験生達のを見てもあまり参考になるようなところなんてありませんし。
そう思いながら試験を見ていると…
あら?あのままでは魔力が暴走して爆発してしまいそうだわ。建物は大丈夫そうだけど、人はミンチでしょうね。
試験を受けていた生徒の1人が制御を誤り、魔力を暴走させていた。リナは急いでその生徒に駆け寄り体に触れて魔力を制御する。
これはなかなか難しいわね。ハルトは簡単そうにやっていたけれど、規格外だから涼しい顔してできたのよね。そうに違いないわ。
リナは一つ大きな勘違いをしていた。それは確かに他人の魔力を涼しい顔をして操作するハルトに比べれば劣るが、10才の少女が他人の魔力を操作しているのは異常なのである。というよりも、そんなことはほんの一握りの高位魔術師でなければできないのである。近くにとんでもない規格外がいると、自分も傍から見れば十分規格外であることを認識できなくなるよい例である。
ハルトは何をやっているの?早く来なさいよ!!
指向性を一度与えられ、失った魔力は凶暴で制御は不可能に近い。それも他人のものとなると現状維持はおろか、制御しようとした瞬間に爆発してもおかしくない。それができている理由としては二人の魔力量に圧倒的な差があるからにすぎない。
「シストリナ様!危険です!おやめください!」
試験官の男がそう言うが、リナは睨みながら言い返す。
「そう思うならほかの生徒を避難させたらどうなんです?!そんな薄っぺらな障壁では意味がないわよ!!」
そう言われて何とも言えない表情になる試験官の男。
くっ、そろそろ限界を迎えそうですわ。ハルトはまだですの?!
そう思いながら必死に爆発しないように制御していると…
「リナ様!大丈夫ですか?!」
ようやく待ち望んでいたハルトがきた。
「遅いですわ!早く変わりなさい!」
「えぇ、そのつもりです」
ハルトに代わってからは早かった。暴走した魔力を操作するのは不可能と判断し、自分の魔力で暴走している魔力を包み外へ出すとマジックカードに吸収させた。
「ふう、どうにか収まりましたね。正直かなりギリギリでしたね。リナ様が踏ん張ってくれていなければここら一帯が更地になっていましたよ」
「そうね、もっと感謝、してくれても、いいんですよ…」
リナが息を切らしながらそう言うとハルトは苦笑しながら、ありがとう。と返した。
そんなハプニングがありながらも試験は続けられた。
「【火炎旋風】!」
「【プラントニードル】」
殲滅力、コントロールのテストにおいて、リナは2位以下に大差をつけ断トツの1位だった。


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