チート特典スキルは神より強い?

ゴッティー

第52話 実家へ4

「ヤバイね、ここ」

「だね…」

 二人は俺がとった部屋内の一つに足を踏み入れ、周りを見渡した。床は赤のカーペットで染まっており、ゴージャスでふかふかなベッドにその他にも高級そうな家具に囲まれた部屋。アリスとジークの部屋よりも圧倒的に部屋のレベルが違う内装。

「まあ、この宿屋の一番高い部屋をとったからね」

「やっぱりお金持ち…。それに最上階ってなんか凄いわね」

 まあ、最上階はこの宿の中で一番広い部屋であり、景色は町全体を見渡せるほどだからかなりリラックスできるだろう。

「今、思ったのだけど冒険者ギルドのクエストを受けてお金を稼いだりする必要あったのかしら?」

「…….」

 クエストで金稼ぎをする必要は全く無いのだが、ただただ魔物を狩っているだけでは勿体なので一応ギルドのクエストもついでに取っておいた方が良いと思ったのだが。基本的に魔物を狩る理由は全員の魔力制限の練習とゼレシアが魔物を倒すことができるようにといった理由だけなのだが、どうやら彼らは毎日欠かさず魔力制御の練習をしているようなのでこのまま数週間もすればなんとか魔力制御を出来るようになるだろう。

「まあ、全員魔力と威力の制御がかなり上達しているからあと数週間もすれば大丈夫だろう」

 実際、全員魔力と威力の制御を俺の予想を遥かに超えた速度で習得していき、このままだと本当に数週間後で完璧に制御出来るようになるのではないかと思う。それに魔物を倒すとは言ってもまず魔力の制御を最低限まで出来ていないと魔物との戦闘をしても意味を成さない。

「ありがとう。まあ、頑張るわ」

 と言いアリスは人差し指の数ミリ先に直径一センチほどの火の玉を出現させた。見事な魔力制御だ。それは普通、火がゆらゆらと揺れながら燃え上がるはずのその魔法。だがそれはまん丸なビー玉のような綺麗な丸であり、温度もそこまで高くなく、その温度を保ち続けていた。

「ああ。アリスも魔力の制御にかなり慣れてきたようだな。というよりはもう完全に制御できるようになったんじゃないか?」

 俺は素直にアリスが魔力の制御を完全に出来るようになったかと思い、そう言った。

「そんなわけないでしょ。今私が制御できるのはこんな感じの最小の威力から初級程度よ。中級や上級なんかはまだよ」

 だが、まだ完全にどの威力も制御できるというわけでは無いらしい。アリスは指先の上に浮いてある真っ赤な玉を消すと、その後アリスは「おやすみなさい」と言い、部屋の中へ入って行った。アリスが扉を閉める瞬間、ジークの姿がほんの少し見えたのだが、どうやら彼は物凄く疲れているようだ。彼の顔を以前に増してより歳のいった姿になっており、その姿は本当に老人といった感じだった。

 アリスも同様の様子だったが、彼女はこれから部屋に付いてある個人用の温泉に入るらしく、少しだけ元気がまだ残っているようだった。本当に今頃だが、二人は森の中でもかなり疲労が激しいように見えた。やはり老人になったのは外見だけではなく、身体もなのだろう。だが、それにしても森の中で老人二人が何時間も歩き続けとは物凄いことだ。地球だとこんな険しく登り下りと坂が激しい森の中で何時間も歩き続けるということをできる人はかなり少ないだろう。

「あ~、、、、、、。」

 今日、歩いた分の疲れを部屋の外に設置されてある温泉の中に入り、少しずつ癒していく。やはり疲れた時は温泉に限る。[ヒール]を使っても良いのだが、それだとせっかくの温泉の気持ちよさが半減してしまう。

「やっぱり温泉は最高だな~」

 個人温泉に少し漬かっているとセリーヌの声が隣からわずかに聞こえてきた。セリーヌも今、彼女の部屋に付いてある屋外個人用温泉に入っているようだ。隣の様子は竹の壁で塞がれているため、あちらの様子を窺うことは出来ないが、どうやらセリーヌは温泉に満足してくれたようだ。

 目を閉じるとまだ酒場で飲んでいるのであろう若者たちが歌を歌い、道で喋り歩く人々の声が耳へ入ってくる。それと同時に少しひんやりとした風も吹いており、最上階の為少し落ち着いた静かさもある。とてもリラックスの出来る状態だ。この宿屋の店主、良い趣味をしているな。学院が終わったらこういう家でゆっくりと過ごすのもいいかもしれないな。

 その後、数十分。俺は湯から体を起こし、部屋へと戻った。体はもうポカポカ。後はもうぐっすりと眠るだけ。

 そう思っていたのだが、残念ながらそうはいかないらしい。

 ドンッ!!!

 俺が寝室で着替えていると隣の部屋から何か物凄い音がした。とても重たいような音。となりの部屋へ行くとそこには壁に空いた大きな穴。そしてその穴の向こう側、要はアリスとジークの部屋からこちらを向いて「しまった!!!」といった感じの表情をしているアリスがいた。派手に壁を壊したな。これは魔法の失敗といったところか。練習なら屋外でするように言っていたのだが、まあ壊れてしまったことにはしょうがない。

「あ、あの…。ごめんなさい」

 アリスは申し訳なさそうに壁の向こうから頭を下げた。まあ、わざとでは無いというのなら良いが少し注意が足りないかな。今回は壁を壊す程度で収まったが、今はまだ魔力の制御を練習しているところ。もしかしたらこの宿屋全てを消滅させてしまうような失敗もありかねない。だが、もうアリスは謝っているので今回は許してやることにしよう。

「大丈夫だよ。今回は俺が直しておくから。次からは気を付けてね」

「わかったわ。本当にごめんなさい」

 そう言い、アリスはその部屋から出て行った。そして俺は当然ながらその大きな穴を修復し数分経った後、宿屋の従業員がこの部屋を訪ねてきた。やはりあの音は下の階まで届いてしまっていたようだ。だが当然ながら穴は俺が修復したため、宿屋の従業員は少し部屋を歩き見た後、カウンターのある一階の受付へエレベーターで戻って行った。

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