チート特典スキルは神より強い?

ゴッティー

第32話 魔王襲来

「勝者、魔法学院チーム! 優勝、おめでとうございます!!!」

 会場から鳴り響く大きな歓声。この会場で観戦していた他の出場者達や今まで戦ってきた試合の相手も皆、何万人もの人々が今、俺達へと歓喜の声を上げていた。

「優勝しちゃったわね…」

「ああ。」

「凄い歓声…」

 その時、ドーム状の会場の壁に何か巨大な物が落ちたような轟音。その音はドーム状の天井に何度も鳴り響いた。しばらくすると、羽の生えた何かがドームの天井を突き抜けて炎を纏い落下した。その物体は会場の中心、いわゆる俺達のいる場所、近くに衝突した。衝突と共に鳴り響く衝撃音は凄まじく、会場全体に地響きが鳴り響いた。

 衝突場所時の煙が消え、先ほど落ちてきた謎の物体がはっきりと見えるようになったことにより、アキレア帝国と平和条約を結んでいた魔王であることが分かった。

「きゃああああ!」

 すると観客はパニック状態になり、会場の入り口や非常口へと駆け込んだ。入り口と非常口には大量の人で一杯になり、人を踏みつけてでも生きようと、皆お互いを押し倒してでも先に進もうとしていた。

「はっはっはっ、やはり人間というのはいつ見ても汚らしいな」

「お前は?」

「ん? 我はそこに倒れておる者の魔王城に今日から移り住むことになったグーゼだお主は名乗らんのか? まあ良い、どうせ今から貴様もこの場の人間も死ぬのだからな!」

「よせ、孤立の魔王」

「エル、お主は黙っておれ、心配はせずともお主を含めて一人残らずあの世へと送ってやるわ!」

 魔王は人差し指を前に出し、爪の先からレーザーを会場の入り口に向かって放った。だが、俺が[ブラックホール]を生成したことによってレーザーは消えた。

「ふむ、面白い魔法を使うのだな。こんな感じか?[ブラックホール]」

 そう言って、魔王は俺と全く同じ威力の[ブラックホール]を作り、会場の入り口へ放った。そこにいた人々は次々に吸い込まれ、消えて行った。人を吸い込み終わると、そのブラックホールは周りの椅子、壁、地面などのあらゆる物を吸い込み、ブラックホールの周りにあるものが全て無くなると、消滅した。

「なるほど、威力はまあまあだが、中々良い魔法ではないか」

「きっ貴様!! まさかこの近辺の魔王城に移り住んだ初日から我が国での大量殺戮をするとは!」

 セリーヌは刀を抜きグーゼに斬りかかった。だが、魔王はそれをいとも簡単に指先で跳ね返した。魔王はニターと笑い、爪で自分の手の平を少し斬り、一滴の血を流した。その血は地面に落ちることはなく、手の平の上で浮いている。そしてグーゼが手を振るうと、その血が一瞬にしてセリーヌ姫の額に向かって放たれた。俺はセリーヌ姫の真上に結界を張ったが、グーゼの血の勢いを止めることも出来ずに破壊され、その下に重ねるようにしてブラックホール、結界、バウンドなどの魔法を作り、彼女の額に届く数ミリでやっとグーゼの血は止まった。

「ふっはは——―――まさか我の血を止めるとは。今まで生きてきてこんなことは初めてだ。いいだろう、今回はお前に免じて引き下がるとしよう。だが、また会う時には我を楽しませてくれることを期待しておるぞ」

 グーゼはそう言うと、その場から消えた。彼女が去ると会場は静まり返り、皆ほっとしようだった。だがしばらくすると、ブラックホールに吸い込まれ、家族を失った人々は次々と膝を地面に下ろし、悲しんだ。

「えっと、今頃だけどブラックホールに吸い込まれた人は生きてるぞ」

[ホワイトホール]

 俺はホワイトホールを使い、中に吸い込まれた人々を放出した。ブラックホールに吸い込まれていた人々は何が起こったかわからないと言った感じで、その家族は泣いて生還を喜んだ。

「凄いな、まさかブラックホールに吸い込まれた人々を無事生還させることができるとは」

「アウル殿、国民の失われかけた命、そして拙者の命すらも助けていただいて心より感謝する。そしてアウル殿に使用してしまった禁術の件、今この場で謝罪したい」

「あ、えっとそんなに頭下げなくても良いよ。それにあの魔法は今年に法律の改変でもう禁術では無くなったんだろ?」

「その御心遣いに感謝いたします。礼はまた後日改めて申し上げたく存じます」

 そう言ってセリーヌ姫は去って行った。俺達はその後観客の感謝の言葉を掛けられながら、会場の外へと出た。

「なんかすごい事になっているわね」

「そうだね。一体どれだけ暴れたんだろうね」

 会場の外には大きなくぼみが数多くあり、見当たる建物だけでもかなりの数が破壊されていた。

「はあ…。死ぬかと思ったよ…。まさかあんなに一方的にやられるとはね」

 後ろから歩いてきたのはボロボロになったエルっていう魔王だった。片足を引きずり、背中を丸くしてとぼとぼとこちらへ向かって来ていた。

「あなた生きていたの?」

「一応はね。でも背骨と足の骨が数十本折れてるかも。それに僕の体は今、あいつの血に毒されているから回復魔法が効かないんだよね。」

「えっと、エル、さん? まずは病院に運んだ方が良いかしら?」

「お願いします….」

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