精霊たちと契約戦争

takuma

夢と精霊の謎

[深夜2時34分]
「〈遠大 楓〉、君はすごいね。こんなバケモノみたいの見たことないよ。」
聞き覚えのない声が夢の中で俺に話しかけてきた。視界が霞んでよく見えない。まるでモヤがかかっているように、自分の姿を見せないように。
「何故これだけの力があるのに、戦うことを躊躇しているんだい。君ならこの国はおろか世界を支配できるほどの才能を持っているというのに。」
その話し方はまるで俺を試すような、丸め込むような口調だった。
「僕なら君に力をあげられるよ。その戦う才能を僕が限界まで引き出してあげる。」
さっきまで霞んでいた視界が少しずつ見えてきた。目の前に黒い小さな生き物がいるのは分かったが、それが何なのかは分からない。
「お前は誰だ。」
俺の問いかけに少し間を置いて答えた。
「今の君にそれを知る資格はないよ。でも、いつか分かる、いつか君は僕に会いに来る。そう遠くないうちにね。」
そんな話を長々とした後、あいつは僕の前から去っていき、それと同時に僕は目を覚ました。なんだか目覚めが悪い。机の上のデジタル時計はもう7時30分になっていた。

俺は着替えてすぐに、藺草の部屋へと向かった。
(コンコン)
俺はドアを軽く叩いた。
「はーい。」
「俺だ、楓だよ。今いいか?」
「あぁ、ちょっと待ってくれ。」
ドアが開くとそこには藺草がいた。ボサボサな髪のまま、目の下にはクマがあった。
「おいおい、ひどい顔だなー。そんなに疲れてたのか?」
「確かに疲れてたんだけど、ちょっと変な夢を見て。」
思わず反応してしまう。
「変な夢、それってどんな!?」
「どんなって、何かはわからないけど夢の中で俺に話しかけてきて。」
「それで?」
俺は藺草に休む間も与えずに質問をした。
「何か、『力が欲しいか』とか何とか。」
「俺と同じような夢だ。」
正直驚きが隠せなかった。友人に見た夢の相談をしに来たら相手も同じような夢を見ていたのだから。
「マジかよ。あいつよく見えなかったけど、男の声だったよな。」
「え、俺が聞いたのは女の声だったぞ。」
(コンコン)
ノックだ。
「はーい。」
「私たちだけど。」
前から知っている声、紅葉だ。私たちということはきっとエマも一緒だ。
「どうぞー。」
「おっじゃまー!」
「お邪魔します。」
「なんか2人とも、顔色が悪いよ。大丈夫?」
俺と藺草はお互いの顔を見て、女子2人に背を向けた。
「どうする、夢のこと話すか?」
「まあ、話しても問題ないだろ。いくら何でも4人全員が同じ夢を見るなんてありえないだろ。」
そして俺たちは夢のことを二人に話した。

「「え?」」
「見たの?」
「同じ夢?」
「うん。」
「見た。」
4人全員が、同じような夢を見ていた。流石にこれを偶然というのは無理がある。
「ちなみに2人に話しかけてたのはどんな奴だった?」
「私は緑っぽい子で、女の子の声だった。エマちゃんは?」
「私は青っぽい子で、声は紅葉さんと同じ女の子だったよ。」
「黒と赤と緑と青か、わけわかんねえな。」
その夢のことを四人で考えていたら、きずけばもう8時30分を過ぎていた。一時間ほど考えても夢のことは、分かるどころか謎は深まるばかりだった。
「とりあえず1回部屋に戻るか。紅葉とエマはどうする?」
「私たちも一度戻ります。」
エマがそう言うと2人はドアの方へ歩いていった。
「じゃあ、また後でな。」
俺たちが部屋に戻ろうとドアを開けると部屋の前には、身長150センチもない女の子が立っていた。
「は、初めまして。私〈優控 椿〉って言います。」
とても綺麗な白い髪の毛、左目には眼帯をつけている。
「君はあの時に、俺たちを助けてくれた。」
(優控、どこかで聞いたような気がする。)
この少女は俺たちが学校で『オプスキュリテ』に襲われていた時、一撃で仕留めて助けてくれた子だった。
「こんな小学生も戦ってたの!?」
「しょ、小学生なんかじゃないです。あたしもみなさんと同じ高校生です!」
「うそ!」
「ほ、本当です。」
正直動揺。
「あ、あの、話は変わるんですけど 司令が呼んでます。」
そして俺たちは少女に連れられ昨日と同じ、地下3階まで下りた。
「し、司令 皆さんを連れてきました。」
「ありがとう、それじゃあ話をしよう。所で今日見た夢はどうだったかな?」
俺達は驚きのあまり声も出せなかった。
「きっと今君たちの中では、なぜ私がそのことを知っているのかという疑問が生まれただろう。気になるか?」
雪笹は少し意地悪をするように、俺たちの目を見て言った。
「当たり前だろ。4人全員が同じような夢を見たら、誰だって不思議に思う。」
雪笹は頷くと少しためて口を開いた。

「君たちに夢を見せていたのは、我々に手を貸してくれている者達、と言っても人間ではないがな。」

「人間じゃない・・・」
「てか、俺らに夢を見せていたって言ったけど、そんなこと出来るやつなんてこの世に存在するのかよ。」
藺草が話終えるのと同時に雪笹が言った。
「いるよ。正確には、夢を見せるのではなく、[夢の中に入る]だがね。」
「何ですかそれ、そんな生き物聞いたこともない。」
紅葉が言った。時間があればいつも生物の本を読んでいる紅葉が知らないんじゃ、俺達が知ってるわけがない。
「それも当然、見つかったのはつい最近だからな。今から紹介するよ。椿、見せてあげてくれ。」
椿は小さく頷き、左目につけていた眼帯を外すと光が溢れ出した。そして俺たちの前に現れたのは、手の上に乗るようなサイズの小さな生き物。見た目は人に似ていたが青い目に青い髪、背中には青い羽が付いていた。
「〈フーちゃん〉いきなりごめん ね。」
「いいよ、それにしても今日はお客さんが多いいね。」
「あの雪笹さん、この可愛い小さな子が。私たちに夢を見せていたんですか?」
エマの質問に対して雪笹は、真剣な目で俺たちを見て言った。

「あぁ、こいつが君たちに夢を見せて、今我々に協力してくれている『精霊』だ。」

その時の目は前にも1度だけ見た、冗談を言っているようには見えなかった。

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