精霊たちと契約戦争

takuma

希望の光

「はー。」
「楓、そんなため息つくなよ。」
「そうだよ楓。せっかく助けてもらったんだから。」
紅葉と藺草が、呆れ顔で言った。
「いや、それはそうなんだけど。なんで俺ら、こんな所に閉じ込められてるの?」
俺たちはよく分からない地下室に閉じ込められている。
「でも、ここで待っててくださいって言われたからもうすぐ迎えが来るんじゃないかな。」
エマがそう言うとちょうど扉が開いた。
「あれ、新しいメンバーって君たちだったのかー。」
その人の顔は俺たちがよく知っている人だった。
「あれ?柚子先生じゃないですか!」
「なんで先生がここにいるんです!?」
「てか、ここ何なんだよ。先生!?」
「とりあえず、外に出してくんね。先生?」
俺たちはそう先生に問い詰めた。
「あー、分かったから落ち着け。とりあえず付いてきてくれ、話は歩きながらする。」
そう言われ俺たちはその部屋を出た。

長い通路がにはいくつかの部屋があり、随分と頑丈な作りになっている。
「先生、ここって地下なんですよね?」
「あぁ、そうだよ。ここは『埼玉第二高校』の地下だよ。」
話をしながら俺たちはエレベーターに乗り込んだ。
「じゃー、ここがシェルターなの?」
俺に続けて紅葉が質問した。
「いいわ、シェルターではないよ。」
「じゃー、ここはいった何なんですか?」
藺草が少し強い口調で聞き返した。
「今にわかるよ。」

エレベーターが止まった、目的地に着いたみたいだ。
その部屋は他の部屋より一回り大きい円形の部屋だった。壁にはモニターが沢山付いていて、一番大きいモニターには日本地図が映っていた。他のモニターには和歌山や京都などの様子が映されていた。
「なんだよ、これ。」
俺はこの状況をすぐに理解出来なかった。
「それが普通の反応だろうな。」
聞き覚えのない渋い声がした。その声の人物は、その部屋の真ん中にある椅子に堂々と座っていた。椅子ごとくるりと回りようやく俺たちに素顔を見せた。
見事なこげ茶色の皮膚で、髪は雪のように白い。眉毛までしっかりと整えていて、そして鋭い目つきの中には何故か優しさが感じられた。
「えと、あの人は?」
藺草が柚子先生を見ながら言った。
「あー、自己紹介くらいは自分でするよ。」
柚子先生が説明しようとしたが、そう割って入った。
「私は〈優控 雪笹〉ここの司令だ。」
「司令?そもそもここは何なんですか。」
「ほー、気になるかな。」
「当然でしょ。いきなりこんな所連れてこられて、こんなもの見せられたら。」
「それもそうだな。ここは『エスポワール』この日本の、最後の希望だ。」
「じゃあ、あなたは『エスポワール』のリーダーってことですか?」
「まぁ、そうだ。我々は2ヶ月前の事件によって生態系に変化を起こした奴ら『オプスキュリテ』と戦う組織だ。」
「『オプスキュリテ』と戦うって、あんなでかいモンスター見たいのとかよ!」
「あぁ、そうだ。」
「マジかよ・・・」
「でも、確かにあいつらでかくはなってるけど、大きさ以外は普通の虫と同じだし、戦えなくはないかな?」
「それは違うな。奴らは、ただでかくなっただけじゃない。柚子くん、データを。」
「はい。」
すると柚子はモニターの画面を切り替えた。
「これは、今までに接触してきた『オプスキュリテ』のデータだ。このデータを見て。」
柚子はモニターのデータを指さし説明を始めた。
「『オプスキュリテ』は大きさだけでなく、知能や個々の能力にも大きな変化が起きている。」
「個々の能力って何ですか?」
「それを君たちは、もう直接見ているよ。」
「まさか、あのクモの糸か!」
「あぁ、そうだよ。」
正直この説明を受けてもすぐに納得はできなかった。
「ここまでの話を聞いてもらったうえで君たちに頼みがある。」
雪笹はそう話を切り替えた。
「君たちにはこの組織、『エスポワール』に入って我々と共に戦ってほしい。君たちが、新たな希望の光になるんだ。」
その時の雪笹の目はとても真剣で、まっすぐと俺たちを見つめていた。

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