なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~
第31話 戦いを終えて
セントヘレンズ大聖堂の入り口にて。
「本当に、なんとお礼を言えばよいか……ありがとうございました」
高貴な法衣に身を包んだ金髪の少女が静粛に頭を下げる。この少女はサンノ大司教だ。悪魔にとり憑かれていた頃とは違い、穏やかな表情を浮かべている。その傍らでは聖騎士団長ポンドも頭を下げていた。
「あなた方が悪魔を退治してくれなければ、教団は愚かこの世界そのものが危機に陥っていたことでしょう。教団を代表すると共に、一個人としても厚く感謝させていただきます」
「いえ、俺らも偶然みたいなものでしたから……」
俺らは無事に悪魔を倒し、世界の危機を救ったのだった。で、その悪魔はというと……
「クソッ、離せ貴様ら! この俺を誰だと思っている!? 殺されたいのかー!」
俺のそばで縄でぐるぐるに縛られた少女がわめいていた。俺よりも一回り小さい少女は黒髪で肌は褐色、露出度の高い黒い衣装を着ていて、ステロタイプ的に矢印のような尻尾と蝙蝠の羽根がついている。目付きは悪く八重歯も鋭かったが声も顔も可愛く、物騒なことをわめいてもかわいいだけだった。
この子が悪魔の成れの果てだ。散々抗ったものの、あれほど憎んでいた【美少女】スキルに自分がかかってしまったのだ。スキルの力により俺への殺意は弱まり、ついでにセントヘレンズ大聖堂の聖職者たちによって念入りに力を封じられている。ぐるぐるに縛ったロープは俺が握っていた。
「こいつは俺らが厳重に監視させてもらいます」
「ええ、なまじ殺そうとしても悪魔は復活するもの、スキルの持ち主であるあなたの元で監視するのがよいでしょう……何かあればなんなりとお申し付けください、我々も協力できる限りのことをいたします」
「まっ、司教サンも巻き添えで女になっちまったしな! 結局戻る方法もわかんなかったし」
「マ、マグナムさん!」
「いえいえ……私は救って貰った身ですから」
マグナムの無礼な言動もサンノ大司教はにこにこと流す。体が美少女になっているのもあり実に和やかだった。
「ケッ、お人よしのアホ人間め。今に見ているがいい、貴様らが女神にうつつを抜かしているうちに、我ら悪魔は闇より……」
「はいはいグリ子ちゃん、あんまし憎まれ口叩くとお仕置きよ?」
「ぐ、グリ子!?」
「私本で読んで知ってるのよ、悪魔ってこの尻尾とか羽根とか触ると……」
「あ、ちょ、や、やめろバカ! くすぐった……んっ」
グリモワールあらためグリ子はルナルにいいおもちゃにされている。なんだか妙にハーレム計画という言葉の親和性も高い気がする。
「セイさん、今回はありがとう。スキルの解除法はわからなかったけれど、こちらでもそのスキルについては色々と調べてみるつもりです。神魔大戦と関わりの深い力ならば何か文献が残っているかもしれない」
「ありがとうございます、ポンドさん」
「じゃあポンドもついでに女になってきゃいいんじゃねえか? 調べるならサンプルが必要だろ? まさか大司教サマをサンプル扱いはできねえし」
「私は遠慮しておきます。スキルを受けたサンプルなら、ちょうどいい者がいますので」
ポンドがちらりと後ろを見る。そこには2人の少女、リックスとアルパが立っていた。アルパは笑っていたがリックスは不満そうだ。
「ポンド! おれらはあのあくまにだまされていたんだぞ、ひがいしゃだっ! 体も元にもどらないし!」
「それはそれ、これはこれ。別に罪人扱いするわけじゃあないんですから、スキル調査に協力してください。あなたも早く元に戻りたいんでしょう?」
「ぐぬぬ……」
「まっ、命あっての物種よ。私らだって助けられたんだしね。でも謎なのはあの子ねえ」
スキルにより前よりも年若い少女になったアルパははあとため息をついた。
「あの子?」
「トオイっていったかしら。あの子だけは最後まで謎だったわね」
「そういえば姿が見えないが、お主らの仲間だったのではないか?」
「違うわ、あの子は実は司教の部下じゃないのよ。私たちとは別口でセイを狙ってたらしくて、目的が一致したから協力してたけど、いったい誰の指示でセイを狙ってたのかしら?」
トオイ……いわゆる男の娘で、自ら望んでスキルによって【美少女化】した元少年。俺を狙ってアルパとリックスと現れた時は驚いたものだが、知らない間に1人姿を消していた。
「まっ、少し気になるけどなんとかなるだろ。まずはこのグリ子をなんとかすることにするよ」
「グリ子ってなんだ貴様らー!」
「それがよいでしょう。では道中お気をつけて、この先のご活躍を願っております」
「はい!」
サンノ大司教とポンドに見送られ、俺らはセントヘレンズ大聖堂を後にした。もちろん悪魔グリ子も連れて。
こうして俺らのセントヘレンズ大聖堂での戦いは終わり、仲間が待つ冒険者ギルドへと帰っていくのだった。
セイたちがセントヘレンズ大聖堂を離れた頃。
大聖堂最深部――イスフィール教団最高権力者の部屋。
トオイはその人間に跪いていた。窓の外から差し込む陽光を受け、背を向けたままその人物は語る。
「そうですか……まさか悪魔もまたあのスキルに」
「はい。セイさんたちを助けようと飛び込まなくて正解でした」
「ええ……しかしこれでまた、『聖女』については白紙ですね」
「申し訳ございません、僕がいながら」
「いいのです、そう簡単にいくとは思っていません。また準備をしましょう。トオイ、お疲れさまでした、しばし疲れを癒してくださいね。念願叶ったその体も、確かめさせてください」
「はい! もちろんです、教祖様」
大聖堂の奥で、光とも闇とも知れぬものは未だ蠢く――。
「本当に、なんとお礼を言えばよいか……ありがとうございました」
高貴な法衣に身を包んだ金髪の少女が静粛に頭を下げる。この少女はサンノ大司教だ。悪魔にとり憑かれていた頃とは違い、穏やかな表情を浮かべている。その傍らでは聖騎士団長ポンドも頭を下げていた。
「あなた方が悪魔を退治してくれなければ、教団は愚かこの世界そのものが危機に陥っていたことでしょう。教団を代表すると共に、一個人としても厚く感謝させていただきます」
「いえ、俺らも偶然みたいなものでしたから……」
俺らは無事に悪魔を倒し、世界の危機を救ったのだった。で、その悪魔はというと……
「クソッ、離せ貴様ら! この俺を誰だと思っている!? 殺されたいのかー!」
俺のそばで縄でぐるぐるに縛られた少女がわめいていた。俺よりも一回り小さい少女は黒髪で肌は褐色、露出度の高い黒い衣装を着ていて、ステロタイプ的に矢印のような尻尾と蝙蝠の羽根がついている。目付きは悪く八重歯も鋭かったが声も顔も可愛く、物騒なことをわめいてもかわいいだけだった。
この子が悪魔の成れの果てだ。散々抗ったものの、あれほど憎んでいた【美少女】スキルに自分がかかってしまったのだ。スキルの力により俺への殺意は弱まり、ついでにセントヘレンズ大聖堂の聖職者たちによって念入りに力を封じられている。ぐるぐるに縛ったロープは俺が握っていた。
「こいつは俺らが厳重に監視させてもらいます」
「ええ、なまじ殺そうとしても悪魔は復活するもの、スキルの持ち主であるあなたの元で監視するのがよいでしょう……何かあればなんなりとお申し付けください、我々も協力できる限りのことをいたします」
「まっ、司教サンも巻き添えで女になっちまったしな! 結局戻る方法もわかんなかったし」
「マ、マグナムさん!」
「いえいえ……私は救って貰った身ですから」
マグナムの無礼な言動もサンノ大司教はにこにこと流す。体が美少女になっているのもあり実に和やかだった。
「ケッ、お人よしのアホ人間め。今に見ているがいい、貴様らが女神にうつつを抜かしているうちに、我ら悪魔は闇より……」
「はいはいグリ子ちゃん、あんまし憎まれ口叩くとお仕置きよ?」
「ぐ、グリ子!?」
「私本で読んで知ってるのよ、悪魔ってこの尻尾とか羽根とか触ると……」
「あ、ちょ、や、やめろバカ! くすぐった……んっ」
グリモワールあらためグリ子はルナルにいいおもちゃにされている。なんだか妙にハーレム計画という言葉の親和性も高い気がする。
「セイさん、今回はありがとう。スキルの解除法はわからなかったけれど、こちらでもそのスキルについては色々と調べてみるつもりです。神魔大戦と関わりの深い力ならば何か文献が残っているかもしれない」
「ありがとうございます、ポンドさん」
「じゃあポンドもついでに女になってきゃいいんじゃねえか? 調べるならサンプルが必要だろ? まさか大司教サマをサンプル扱いはできねえし」
「私は遠慮しておきます。スキルを受けたサンプルなら、ちょうどいい者がいますので」
ポンドがちらりと後ろを見る。そこには2人の少女、リックスとアルパが立っていた。アルパは笑っていたがリックスは不満そうだ。
「ポンド! おれらはあのあくまにだまされていたんだぞ、ひがいしゃだっ! 体も元にもどらないし!」
「それはそれ、これはこれ。別に罪人扱いするわけじゃあないんですから、スキル調査に協力してください。あなたも早く元に戻りたいんでしょう?」
「ぐぬぬ……」
「まっ、命あっての物種よ。私らだって助けられたんだしね。でも謎なのはあの子ねえ」
スキルにより前よりも年若い少女になったアルパははあとため息をついた。
「あの子?」
「トオイっていったかしら。あの子だけは最後まで謎だったわね」
「そういえば姿が見えないが、お主らの仲間だったのではないか?」
「違うわ、あの子は実は司教の部下じゃないのよ。私たちとは別口でセイを狙ってたらしくて、目的が一致したから協力してたけど、いったい誰の指示でセイを狙ってたのかしら?」
トオイ……いわゆる男の娘で、自ら望んでスキルによって【美少女化】した元少年。俺を狙ってアルパとリックスと現れた時は驚いたものだが、知らない間に1人姿を消していた。
「まっ、少し気になるけどなんとかなるだろ。まずはこのグリ子をなんとかすることにするよ」
「グリ子ってなんだ貴様らー!」
「それがよいでしょう。では道中お気をつけて、この先のご活躍を願っております」
「はい!」
サンノ大司教とポンドに見送られ、俺らはセントヘレンズ大聖堂を後にした。もちろん悪魔グリ子も連れて。
こうして俺らのセントヘレンズ大聖堂での戦いは終わり、仲間が待つ冒険者ギルドへと帰っていくのだった。
セイたちがセントヘレンズ大聖堂を離れた頃。
大聖堂最深部――イスフィール教団最高権力者の部屋。
トオイはその人間に跪いていた。窓の外から差し込む陽光を受け、背を向けたままその人物は語る。
「そうですか……まさか悪魔もまたあのスキルに」
「はい。セイさんたちを助けようと飛び込まなくて正解でした」
「ええ……しかしこれでまた、『聖女』については白紙ですね」
「申し訳ございません、僕がいながら」
「いいのです、そう簡単にいくとは思っていません。また準備をしましょう。トオイ、お疲れさまでした、しばし疲れを癒してくださいね。念願叶ったその体も、確かめさせてください」
「はい! もちろんです、教祖様」
大聖堂の奥で、光とも闇とも知れぬものは未だ蠢く――。
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