なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第24話 山賊

 ベナスの街に7人いるSランク冒険者。1人1人が並の冒険者100人以上の価値を持ち、Sランクの称号だけで一生食べていけるほどの実績と実力を示す。

 その内の1人、『超水』の異名をとるのがマグナム・アトランティス。

 水に関する異名の通り、マグナムは水を操り、水に生きる冒険者。水を自在に操り、また水中において敵はない。

 その特異な力は様々な場所で活躍し、戦闘、人命救助、はては治水によるあらゆる政治への寄与など多岐にわたる。

 彼の偉業の最たるものとして、セントヘレンズ大聖堂の崩壊の危機を救ったことが挙げられるだろう。
 建設後数百年、彼の他に誰も気付いていなかった地下水脈による地盤沈下の危機をいち早く察し、苦難の末にその問題の解消に成功した。

 彼と彼の一族自体が女神イスリエラを信奉することもあり、マグナム・アトランティスの名はセントヘレンズ大聖堂では尊ぶべき存在として広く知られ、また自由に大聖堂に出入りできる特別待遇人物の1人とされており、その存在価値は絶大なものがある。

 Sランク冒険者の中でも秀でた実力とそれ以上の成果を持つ大人物。それがマグナム・アトランティス。



 ……の、はずなのだが。

「おおーまさかこんなおもしろいことにーなーるとはーなーぁー……」

 赤ら顔でけらけら笑い、自分の【美少女化】した体を遠慮なくいじり倒し、道端で屈みこんだかと思えばいきなり寝始める少女が、そんな大それた人物とは到底思えなかった。

「寝るなマグナム。まだ酒が抜けてないのか」

「んはっ! んああ、おー嬢ちゃん目付きわりぃなー」

「俺だ、インフェルノだ。いい加減に目を覚ませバカ」

「ああ、そうだったそうだった。んあ、ところでなんで俺女になってるんだ?」

「14回目の説明をさせるつもりか。いいから歩け」

「んーぉーおー、りょりょりょー」

 千鳥足で山道を進む。まるでインフェルノに介護されているようだった。
 その後ろをついていく俺らは驚くやら呆れるやら、実に複雑な気持ちでマグナムを見ていた。

「あの人、一応すごい人なんだよな?」

「そのはずよ、Sランク冒険者のはずだし……」

「うぅーむ、セントヘレンズの救世主といえばワシでも知っているのだがのう」

 今回は俺、ルナル、神官様の少数精鋭で向かっている。元々そう大人数では通してくれないらしいし、マットは修行があり、フェン・モンチー・ジークンは宗教概念的にグレーなので仕方がない。

 俺たちはスキルの解除法を探し、セントヘレンズ大聖堂に向かうため山道を進んでいた。Sランク冒険者のインフェルノとマグナムがいっしょなので安心……のはずなのだが。

「うひょー、美少女だらけだー! うっひひひ」

「落ち着け。そんなんだからセイにスキルをくらったんだぞ」

「なんだよぉ酔ってないぞぉ」

 マグナムは相変わらずの酔っ払いだし、インフェルノはその介護。見た目が美少女になっていることもあって威厳は皆無である。

「なあインフェルノさん、この人ほんとにSランク冒険者なんですか? ただの酔っ払いにしか」

「うむ、俺もそう思う。だが働くときは働く男だ。その長所の全てを酒のひとつで台無しにしているがな」

「んんー、セイって言ったかぁ? 男のくせにかわいーいじゃーねぇーのぉー、こっち来いよぉ」

「酒が抜けたらな。どんだけ飲んでたんだアンタ」

「なーにほんの升々……おれぁさけぬけるのおそいんだー、たのしみが長くていーだろぉ?」

 呂律もぐだぐだなマグナム。信じがたいが、これでいてセントヘレンズ大聖堂に自由に出入りできるごくごく限られた人間の1人らしい。
 俺らが向かうセントヘレンズ大聖堂については、神官様がよく知っていた。

「しかし、こんなことでかの聖地に赴くことになるとはのう……長生きはするものじゃな」

「神官様は行ったことないんですか? 神官なのに」

「神官といえどピンキリじゃよ、ワシはまだまだひよっこ。もう10年ほど神官職を続ければ許可が下りるやもしれんかったが、この姿となり半ばあきらめておったのじゃが……人生万事塞翁が馬といったとこじゃな」

 心なしか神官様ははしゃいでいるようだった。子供の姿のせいか最近の神官様はあまり感情を隠さず、子供らしく素直に行動する。憧れの聖地に行けるということでうきうきとするその姿を見ると実に和んだ。

 が、そんな和みを粉砕する無粋な輩もいた。

「待て、てめえら!」

 突然響く声。同時に、山道の裾から何者かが飛び出してきた。
 それは武装した男たちだった。布で顔を隠し、手にはナイフなどの武器を持っている。道を塞ぐように3人がいきなり現れて、俺たちに武器を突きつけた。

「女のガキだらけで俺らの山を通ろうとはのんきなもんだ!」

「命が惜しけりゃまず着てるもん全部脱いで置きな」

「5人もいるんだ、嫌なら1人ぐらい殺したっていいんだぜ」

 どうやら山賊らしい。いつの間にか背後にも同じ人数が立ち塞がり、俺らは包囲されてしまった。正直インフェルノも俺もいるのでまったく緊張感はないが、神官様はひっと怯えて俺に縋りついた。かわいい。

「おーぉー……? なんだこいつら? せぇっかくむさい酒場から女の園だったぁーってぇーのによぉー」

「マグナム、しゃんとしろ。山賊だ」

「しゃんぞくぅ? へー……おっ、そうだ」

 未だ酔っ払うマグナムはいきなり俺に振りむいて言った。

「セイ! こいつらも女にしちまえ! おまえのスキル、使うとこみてぇんだ」

「え? でも、あんまりこのスキルの乱用は……」

「いいからやれよぉ、案内してやらねーぞー」

「うーん……まあいいか」

「いいのセイそんなんで」

「山賊だし、今まさに犯行の瞬間だし。俺としてはこんな男たちよりもどうせなら美少女に脅されたい」

「真顔で言うことじゃないでしょ、同感だけど……やるなら早くやっちゃいなさい」

 話し込む俺らに対し「なにをごちゃごちゃ言ってやがる」「さっさとしろ」と山賊たちが迫る。今にも襲い掛かってきそうだ。
 皆を守るためもあり、俺はスキルを発動した。

「暴発防止に1人ずつやるか。まずお前は平均的な美少女、せっかくなのでツインテール」

「えっ……おおっ!?」

 俺が指さした1人が光に包まれ、服装はそのままの山賊少女になる。他の山賊たちが驚いている隙に俺は次々やっていった。

「お前はロリで。最初のと姉妹みたいな感じでどうだ」

「へっ、な、なんだぁ!?」

「そっちは一転ボーイイッシュ。女子に人気出そうなイケメン、と」

「お、おお!?」

「お前は童顔で、アンバランスな巨乳……やりすぎたか?」

「ひああぁ!?」

「そういえば貧乳ってやったことなかったな、試しにフラン並の絶壁でと」

「へっ? うわ!?」

「最後はそうだな、長身で大人のお姉さん風に……美少女よりも美女って感じだ」

「げえええ!?」

 ポンポンと山賊たちを【美少女化】していく。むさい男たちが美少女に変わっていく様は爽快だった。ああ、やっぱこのスキル俺向きなんだなと実感する。神罰が降りそうだが。

「よし、完了と。どうだったマグナム」

「いーねーいーねー最高最高! 解除なんてしねえで世界中の人間こうしちまえばいいのに」

「そうもいかないだろ……さすがに」

 だが、その時。

「てめえら、何しやがったァ!?」

 盗賊の1人、最初に【美少女化】したツインテが剣を手に襲い掛かってきた。しまった、美少女になっても武器はそのまま、何より相手も同じような体格なのであまり関係ない。狙いはマグナムだ。
 慌てて止めようとした、その時。

「おぉー、そんなにあそびたいかっ、と」

 俺が口を開くよりも早く、酔っ払ってインフェルノに支えられていたはずのマグナムの体が動く。するりと相手の懐にもぐりこんだかと思った瞬間、その拳を腹に叩き込んでいた。

「がっ、ふ……!?」

 殴られた盗賊少女が黄色い液体を吐き出し、そのままピクピクと痙攣しながら崩れ落ちた。お、お、と声にならない嗚咽を漏らしている。一瞬の出来事に俺らも他の盗賊たちも唖然とした。
 そんな俺らを尻目にマグナムは呂律の回らない舌で笑っていた。

「おーぉー、元男とはいえ嬢ちゃんにやり過ぎたかねーぇー……ちと水分ゆらしただけだぁーよ、死にゃしない、まっ、飲み過ぎた翌朝みてぇーなもんだぁ」

 赤ら顔で笑う少女の足元に、息も絶え絶えの盗賊。Sランク冒険者の実力を垣間見た気がした。

「ひ、ひぃいぃぃっ!」

「わけがわからねえ!」

「逃げろ! 逃げろぉぉっ!」

 マグナムに恐怖した盗賊たちが一目散に逃げだした。幼女になったのが遅れてとてとてと駆けていくのを最後に、マグナムにやられた1人を残してあっという間に逃げ去っていった。
 もはや言葉も出ない俺に対し、ふいにマグナムが指をさす。

「セぇーイよ……さっきスキル見せてもらったなぁ……おれぁセントヘレンズに出入りしてぇ、スキルについてもよく知ってっからぁ、ひょっとしたら……解く方法、わかったかもしれねえ」

「えっ、ほ、本当か!?」

「ああ。それはな、ずばり……」

 俺らは固唾をのんでマグナムの言葉を待った。目をつむり、何か考え込むようにしたマグナム。やがて沈黙の果てに彼女が紡いだのは。

「……ぐぅ」

 いびきだった。

「いい加減にしろこの酔っ払いがぁ!」

「ぐお!? おお、嬢ちゃんいい蹴りしてるねぇ、もっと蹴っていーぞぉー」

 思わず蹴り飛ばしてしまった俺に対しなおも酔いの覚めないマグナム。そのそばではさっきの盗賊少女がまだピクピクしている。つくづく意味の分からない男だと、俺はでかいため息をついた。

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