なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第21話 スキルの功罪

 玄関からの悲鳴を聞いた俺らが駆けつけてみると、ベルガさんが尻餅をついて倒れていた。

「ベルガさん? どうしたんですか」

「い、いえ、あの子がいきなり、棒で叩こうとしてきて……」

「あの子?」

 ベルガさんが指さした玄関には、1人の幼女が立っていた。

「ふーっ、ふーっ……!」

 息を荒げる幼女はたしかにベルガさんの言った通り木の棒を構えている。ぼさぼさの髪、サイズの合ってない汚れた服を着て、俺を睨みつけていた。といっても年齢は神官様よりさらに幼くかわいらしいものだが。

「ど、どうしたんだ君。いきなりそんなものを持って……」

「うるせえうるせえうるせえッ!」

「うわ、っと」

 幼女はいきなり木の棒で俺に殴りかかってきて驚く。だが力は見た目相応でたいして痛くもなく、俺も難なく木の棒を受け止めた。

「クソクソクソッ! 離しやがれ!」

「落ち着きなよ。いったいどうしたんだ」

「おうおうおう! この俺のツラを見ててめェこそなんだなんだなんだその言い草はァ!」

 幼女は木の棒から手を放し、今度は素手で俺に殴りかかる。だがどんなにがんばっても子供のリーチとパワー、ぽこぽこと駄々をこねるように俺の足を叩くばかりだった。

「顔……そういえばこいつ」

「ん、マット、知り合いか?」

「いやお前らも会ってるぞ? ほら、初めに冒険者ギルドに来た日だよ。お前、絡んできた柄の悪い冒険者1人にスキルかけただろ? それも無力化するため子供にした」

「お……ああ! そういえばそんなこともあった」

 マットに言われて思い出した、たしかに俺らが冒険者ギルドに初めて来た日、難癖をつけて絡んできた大男が1人いた。セクハラまでしてくる下劣っぷりだったので容赦なく幼女にしてやったが……そういえば、目の前にいる幼女がそうだった。

「おうおうおう! やっと思い出したかこの野郎!」

 今の見た目では見る影もないが、この横柄な態度はまさしくあの男だ。たしか名前はゴレムといったか。

「お前か……今さら何の用だ」

「何の用だと? 決まってるだろクソ女! この俺を元の姿に戻せ! でなきゃぶっ殺してやるッ!」

 ぶんぶんと腕を振って怒鳴るゴレム。女児の体なので怖くもなんともないが、さすがに全力の腕が当たれば多少は痛く、乱暴な物言いもあって俺は少しむっとした。

「やめろって」

「あうっ」

 俺は軽く押しただけのつもりだったが、ゴレムの小さな体は予想以上に軽くゴレムはとてんと尻餅をついてしまった。子供をいじめてるようで少し心が痛む。

「あ……悪い、そんなに強く押したつもりじゃ」

「う、うるせえうるせえうるせえっ! いいからとっとと俺を戻せ! 戻せ! 戻せーッ!」

 ゴレムはひたすらに戻せと叫び続ける。小さな体ではこらえきれないのか、その目には涙すらにじんでいた。どうも単なる恨みつらみでの殴り込みじゃなさそうだと俺らも察する。

「ゴレムといったな……何かあったのか? いきなりそんな必死に……」

「うるせえって言ってるだろ! うだうだ言わず戻せ戻せ戻せ!」

「いや、そう言われても、このスキルで【美少女化】したものを戻す方法は俺らにもわからないんだ」

 俺が告げるとゴレムは心底驚いた顔で目を見開いた。

「な、なんだと!? 嘘をつけ!」

「本当だ。俺もこのマットも元は男で、戻りたいんだが今も方法は見つかっていない。悪いが戻す方法はない、これは誓って本当だ」

「ぐ……ならばもう、貴様らに用はないッ!」

 ゴレムは吐き捨てるように言うと立ち上がり、踵を返し駆け出す。だがいきなり走り出したためか玄関にけつまずき転んでしまった。

「ゴ、ゴレム、大丈夫か?」

「うぐ……黙れ黙れ黙れぇっ!」

 ゴレムはやっとのことで立つとすぐに駆け出し去っていった。顔は見えなかったが、その声には涙がにじんでいた。



 ベナスの街の外れ、冒険者のための家が立ち並ぶ場所。
 ゴレムは小さな足でとたとた走り、その中のひとつに戻ってきた。

「……クソッ」

 壊された鍵を憎々しく見つめ、迷った挙句に手を伸ばす。今の体では背をいっぱいにしてやっと届くドアノブを掴み、なんとか引き開けた。中からは大勢の男たちの下卑た笑い声が響いている。

「おおゴレム、帰ってきやがったか!」

「どーこ行ってたんだコラ。飾りの花はおとなしく飾られてろっての!」

「ぎゃははははははは!」

 家の中には元々のゴレムにも負けない大男たちが乱雑に散らかしながら酒盛りをしていた。

「どうしたーっ手ぶらかてめェ! 俺らに詫びのひとつもないのか!」

「酒のひとつくらい持ってこいウスノローッ!」

 男たちの1人が空の酒瓶をゴレムに向けて投げ、横の壁にぶつかってガシャンと砕けた。突然のことに驚いたゴレムはびくっと体を縮ませ、それを見た大男たちは大笑いした。
 ゴレムはぐっとこぶしを握り締めた。

「いい加減にしろよてめえら……! いつまでも俺のうちでのさばりやがって! 今日という今日は許さねえ、今すぐてめえら全員ここから出て行けッ!」

 怒りを露にして叫ぶ。すると大男たちはイラついた顔でゴレムを見た。

「なんだぁゴレム……その言いぐさは」

「俺らはパーティメンバーだろ? そう邪険に扱うこたねえじゃねえか」

「へへへ……ま、パーティじゃなくてもこんな便利なとこ出ていきゃしねえがな」

「黙れ! お、俺のスキルで……追い出してやる!」

「けっ、バカが」

 ゴレムは飛び掛かったが、大男の1人はあっさりとその腕を捻りあげた。

「ぐううううっ!? は、離せ!」

「お前のスキルはよーく知ってるぜ、【武闘の心得】だろ? 格闘技術に対する技術だが……こんだけ力があっちゃなんも意味はねえよなあ」

 ぎゃはははは、と男たちの笑い声が響く。腕をとられたゴレムは悔しげに唇を噛み、瞳には涙をにじませた。

「わかってんだろ~ゴレム~? お前はもう冒険者にはなれねえ! 金もねえてめえじゃどこにも行けねえ! 俺らに食わせてもらうしかねえんだよ!」

「わかったら黙って俺たちを楽しませな! ガキの体にゃ用はねえが、いじって遊ぶ分にゃオモチャとして悪くねえ」

「歯向かった罰だ、とっとと脱げ! 酌なり踊るなりで俺らを楽しませな!」

 好き勝手言う男たちに、ゴレムはただ涙をこぼすばかりだった。力では到底敵わず、この男たちのされるがままにしなければ生きることすらできない。泣くしかできなかった。その涙を見て男たちはさらに笑い声をあげる。
 が、その時。

「んん?」

「なんだてめえら!」

「どこから入って……」

 男たちがゴレムの後ろに目を向け騒ぎ出す、それと同時にその体が光に包まれた。
 次の瞬間、ゴレムを嬲っていた屈強な男たちは姿を消し、代わって同じ人数の少女がそこにいた。ゴレムよりはずっと年上の体だが、それでも巨漢たちとは比べ物にならない。

「へ、ええっ!?」

「なんだこりゃあ!? お、俺らの体が……」

「こ、これって、まさか、俺らまで……!」

 慌てる男たち。ゴレムは呆然とそれを見た後、ハッと気づき振り向く。
 そこにはあの憎きセイ・ブルームとそのパーティメンバーが立っていた。セイは今しがた変化したばかりの少女たちを睨みつけて言う。

「お前ら、言われた通り出て行け。でなきゃ俺らが追い出してやるぞ。フェン、ジークン!」

「おう!」

「やっちゃうね!」

「ひ、ひえええっ!?」

 犬のような少女と翼と尻尾の生えた少女が飛び出し、大男だった少女たちに噛みついたり尻尾で払ったり。たまらずに少女連中はほうほうの体で逃げていった。
 後にはゴレムとセイたちだけが残った。

「て、てめえら、どうしてここに」

「お前の様子が明らかに変だったからな、念のため追って来たんだ。フェンがいれば臭いでも追跡できる」

「でもまさかこんなことになっているなんてな……」

「大丈夫? ひどいことされてたわね」

「ケガはないか? ワシが治してやるぞ」

「う……うるせえッ!」

 差し伸べられた手を、ゴレムは振り払った。涙目でセイたちをキッと睨みつける。

「情けなんかいらねえぞクソ共! 誰が助けろなんて言った!? 余計なんだよ! 死ね、死ね死ねクソクソクソォッ!」

 ゴレムはなおもセイたちに暴言を吐き続けた。むっと後ろの女が睨むが、当のセイがそれを手で制した。

「ゴレム……こんなに辛い状況にあるなら、なぜ誰にも助けを求めなかったんだ。ギルドに言うのもいいし、俺らにだって……」

「黙れ黙れ黙れ! んな情けねえことができるか! 無様にてめえに負けてガキにされて、あんな奴らにいいように嬲られて……ひーひー言って助けてくれだと!? んなこと俺のプライドが許さねえ!」

「プライドとか言っている場合じゃないだろ、お前は……」

「うるせえうるせえうるせえ! これは俺の男としてのプライドだ! ガキの、いや女の体にされて、力も何もかも奪われて、この上男のプライドまでなくしたら……俺は俺じゃいられねえだろうがーっ!!」

 ゴレムは必死に叫んだ。涙がこぼれるのは、もはや止められなかった。



 俺はゴレムの涙を見ながら、俺はゴレムがあんな態度をとった理由が分かった。あの乱暴で横柄な言動は全て、自分のプライドを守るための、追い詰められたゴレムの必死な抵抗だったのだ。
 そしてもうひとつ、改めて自分のスキルと自分の行いの恐ろしさを思い知った気分だった。俺があっさりと使ったスキルが、あの屈強な男をここまで追い詰めたのだから。

「男のプライド、か。俺らは同じ素性の人間が集まってるから意識しなかったが……」

「たしかに体がまるっきり変わっちまうと辛いものはあるよな」

「それを武器にしてきた冒険者なら特に、ね」

「うむ。ベルガのように、戦う術を失った冒険者は生活の根幹を奪われるわけだからのう」

 パーティの皆も同じことを思っているようだった。となれば……俺がやるべきことはひとつだ。
 俺はゴレムの目線に合わせて膝をついた。

「ゴレム。どうだ、金が欲しくないか」

 泣き続けるゴレムに声を掛ける。もちろんゴレムは反発した。

「黙れ! 誰がてめえなんかのお情けをもらうかよ!」

「じゃあ仕事をしろ。仕事をして対価を貰う、それならいいだろ? 実は俺のメンバーでは少し手が足りなくてな……頼むゴレム、手を貸してくれ」

 ゴレムのプライドを守るように申し入れる。ゴレムはしばし押し黙った後、涙を拭いニヤリと笑った。

「フン! そこまで言うなら手を貸してやるよ、俺に感謝することだな!」

 ふんぞり返って横柄に言い放つ。だがゴレムも俺の意図は察しているのだろう、その態度が虚勢であることはすぐにわかった。そうわかればゴレムの態度も子供が偉ぶってるようなかわいいものにも見えてくる。

「セイ、仕事ってどうする気だ?」

「ベルガさんの手伝いをしてもらおう。子供の体でもやれることは多少あるはずだ。元に戻るまでは十分だろ」

 立ち上がりマットたちと話す。

「そうね……今回のことで改めて、元に戻す方法を見つけなくちゃって思ったわ。ベルディアーデさまの助けも借りてね」

「そうだな、その通りだ。俺もそろそろ本腰入れてスキル解除法を探さないとな」

 俺は自分の手を見つめた。このスキルは幸せばかりを呼ぶものではないのかもしれない……ようやくそのことに気付いていた。

「でも、ま……」

 俺は気付かれないようにゴレムをちらりと見た。偉ぶって胸を張る小さな姿は背伸びしていてかわいい。

「最悪ハーレムに加えちゃえばいいもんな……フフフ……」

「セイ、何か言った?」

「いやなにも」

 俺の夢というだけでなく、このスキルの受け皿のためにもハーレムが必要だな……そんなことを大義名分に、スキル解除法と同時に、俺は密かにハーレムの必要性も再認識するのだった。

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