なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第19話 前途洋々……?

 冒険者ギルドの一画にて。

「改めて……インフェルノ・シンフォニーだ。Sランク冒険者として『超鳴』の称号を持っている。救ってくれたこと、感謝する」

 俺らの前に座った美少女、インフェルノが頭を下げた。【美少女化】された彼あらため彼女は三白眼で目付きはだいぶ鋭い。しかし全体的に顔つきは幼げに整っており、艶やかなボブの黒髪が美しい10代前半の美少女になっていた。傍らには赤い兜を置き、首から下は【美少女化】に巻き込まれ美少女サイズになった青色の鎧を着ている。

 今は単に目付きの悪い美少女だが、元々は屈強な体躯と有無を言わさぬ眼光を誇ったSランク冒険者だ。

「当然のことをしたまでですよ。それに呪いを解くためとはいえ【美少女化】しちゃいましたし……」

「冒険者稼業に影響が出たりはせんかのう」

 神官様が心配したように、俺のスキルを受けると身体能力も見た目相応になってしまう。Sランク冒険者として鍛え抜かれたインフェルノの肉体は失われて、今は見た目通りの少女の肉体だ。
 特にインフェルノは剣術の腕前に長けた武闘派……インフェルノも神妙に頷いた。

「影響は避けられん。軽く体を動かしたが、この体はこれまでのそれとは使い勝手がまるで違う。鍛錬で補うことはできるがこれまでの技術はまったく通用しないだろう。充分に体の使い方を確かめれば、スキルもあるので冒険者稼業自体は可能だろう。しかしSランクと称される働きはもはやできまい」

「そうですか……」

「どの道死ぬ身だった、それ以上は望まん。元々呪いを負う失態が生んだこと、我が身相応ということだろう」

「でもインフェルノさん!」

 明るい声で微笑んだのは同席するシオナさんだった。

「インフェルノさんのこれまでの仕事ぶりはその業績だけでSランク冒険者としてふさわしいものです。仕事の如何に関わらず、インフェルノさんにはこのままSランクに残留していただきますよ! 7人のSランク冒険者さんは他の冒険者さんたちの指標でもありますので」

「ギルド側がそういってくれるのならばありがたく受けよう。冒険者たちが認めてくれる間は、な」

 Sランク冒険者はやはりその名前だけで重大な意味がある。俺も改めてその地位を目指したいと思った。

「さて……問題は、こいつだ」

 インフェルノは俺の傍らに視線を向ける。俺もそちらを見る、そこには同じく【美少女化】された存在が座っていた。

「グググ……」

 黒い肌に紫色のボディペイント、蛇のような牙と舌を持つ異形の少女。今は縄で両手足を拘束している。白目が黒く染まった奇妙な瞳はなおも俺を睨む。『呪い』そのものを【美少女化】した存在だった。
 【美少女化】した対象は俺に服属するとはいえ得体の知れない『呪い』は不気味だ。俺らの額に冷や汗が伝った。
 ただしフェン・モンチー・ジークンは一切警戒せずにしげしげ眺めたり肌をつついたりしていたが。

 そもそも俺らとインフェルノがこうして話し合っているのは、この『呪い』をどうするかを話すためだった。

「インフェルノさん、この『呪い』を受けた詳しい経緯をお聞きしていいですか」

 ルナルが問いかける。インフェルノは頷いた後、俺らに視線を向けた。

「『閉ざされた地』……というものを知っているか」

 俺は曖昧に頷いた。他はというとマットは俺と似たような反応、神官様は完全に首を傾げ、ルナルはある程度知っているような感じ。他は聞いてすらいなかった。

「聞いたことはありますけど、この世の果てにある、普通は入れないすごく危険な場所……ぐらいにしか」

「そうだな。それで大方合っている。魔術師たちは諸々説を唱えるが有力はあれど確実はなく、答え自体存在しないのかもしれない。言えるのは世界各地にある人の住めぬ絶界であること、膨大かつ強大な魔物が生息するということ。そのような『閉ざされた地』にはえてして誰も見たことのない生物や地理が無数に存在し……俺が出会ったのも、その類だった」

 冷静なインフェルノの頬に冷や汗が浮かんだ。

「不気味な魔物だった。いや、魔物かどうかも今思えばわからない。人とよく似た姿をしていたが無数の腕と目が蠢き、黒とも青ともとれぬ肌を光らせ……見たこともない動きで襲い掛かった。そして俺がその腕を切断した時、その身から体液が吹き出し、俺はそれを浴びてしまった。それが呪いだった」

「『閉ざされた地』の魔物の呪い……神官職でも解呪できないほどのものでしたからね。『閉ざされた地』には無限の恩恵と災厄が眠っていると言われていますが、今回のもそのひとつと言えるでしょう。冒険者ギルド連盟の方にも報告しておきます」

 シオナさんがギルド関係者らしくインフェルノの話をまとめた。冒険者ギルド連盟というのは初耳だがとりあえず大事だということは俺にもわかる、Sランク冒険者が死の淵に追いやられたというのはそれほど重大な出来事だったのだろう。
 そしてそれを救った俺……というより俺のスキルがいかに強力かも相対的にわかる。俺はやはり、このスキルが単に男子の嗜好を満たすためだけのものではないと薄々感じていた。

「それでこの『呪い』ちゃんどうしましょうか。今のとこ呪いとしての効力はなくなって、セイさんの首しめたがる危ない子ってだけみたいですけど」

「そうだな……セイといったか。お前のスキルで少女化したものの体は完全に人間になるのか?」

「あ、はい。基本的にはそうですね、食べるものとかの体質も……たとえばここにいるフェンは元狼の魔物ですけど、今は完全に人間として生活してます。嗅覚とか一部は狼の特徴も残ってますけど」

「ん? セイ、よんだか?」

「いや、ちょっと話に出しただけだよ。遊んでていいぞ」

「わかった!」

 フェンはまた『呪い』の臭いをかぐ作業に戻った。フェンが元狼と聞いてシオナとインフェルノは少なからず驚きを見せていた。

「なるほど、強力なスキルだ。おそらく呪いとしての効力はすでに失われ、発揮するにしても人間の行動として反映される状態なのだろうな。ならば危険性はそう高くないか。殺そうと思えば殺せるのだろうが……」

 インフェルノは思案しながらちらりと俺を見た。その視線の意味するところを一拍置いて察し、俺は改めて『呪い』を見た。

「グッグググ……」

 縄で縛られてなお俺を睨みつける『呪い』。その姿は不気味の一言であり、その正体も得体が知れない。【美少女化】されたとはいえそこに込められた悪意あるいは殺意はそのままであり、危険な存在であることに間違いはない。始末してしまうのが一番いいのだろうが……俺は決心した。

「こいつ、俺が引き取ってもいいですか?」

 俺の言葉にシオナさんは驚き、インフェルノは無言で応じた。

「【美少女化】スキルでこいつは俺にある程度従いますし、殺すのもなんだか偲びないので……できるだけ残しておいた方が『閉ざされた地』の研究にもいいですよね?」

「そ、そうですけど、セイさんはいいんですか? 危険じゃないですか?」

「危険なんでしょうけど、やっぱり放っとけないんで。ちょうど大きな家ももらってますからね」

 顔も慣れると意外とかわいいし……とはさすがに言わなかった。
 俺は将来ハーレムを作ろうという身だ。これくらいの危険娘も囲ってこそのハーレム、ハーレムの主には器が求められるのだ。実のところそれがこの『呪い』を引き取る本音だったが、インフェルノの前なので黙っておく。

「お前らもいいか?」

「俺はセイに任せる」

「ワシもじゃ。ワシらの代表じゃものな」

「私も興味の方が先に立つわね」

「セイがいいならおれもいいぞ!」

「いーおムネしてるしおれも賛成」

「僕も仲間が増えると嬉しいよ!」

 パーティメンバーの了承も貰って、俺は改めてインフェルノに向き合う。インフェルノはわかっていたとばかりに頷いた。

「お前に任せよう。全ての選択権はお前にあって然るべきだ」

「ありがとう、インフェルノさん」

 こうしてこの『呪い』が擬人化したような少女は俺らのパーティで引き取ることになった。だいぶ狂暴だがフェンも最初はこんな感じだったしなんとかなるだろう。ハーレムを目指す者として腕の見せ所だ。

「セイ、命を救ってもらったばかりか『呪い』までお前に押し付けてしまって悪いな。何か礼をしたい。俺にできることならばなんなりとしよう、言ってくれ」

「いいですよお礼なんて、俺がやりたくてやったんですから」

「いや、ぜひ礼をさせてほしい。俺のためでもある、なんでもいいから言ってほしい」

「そうですね……じゃあ、そうだ。インフェルノさんって剣術が得意なんですよね? うちのパーティに【剣聖】スキルを持ってるんですけど、てんで剣の経験のない奴がいて……そいつに修行をつけてほしいんです。時間がある時でいいので」

 俺が見たのは当然マットだ。マットはお、俺? と驚いた顔で自分を指差す。驚き顔のマットとは対照的にインフェルノは深く頷いた。

「あいわかった。俺の持ちうる技術、授けよう。そこのお前、名前はなんという」

「お、俺ですか? ま、マットですけど……」

「ではマット。これから時間を見つけお前に剣の修行をつけよう、先に言うが楽ではない。心しておけ」

「ひ、ひええ」

 Sランク冒険者直々に修行をつけられることとなり、ただでさえ運動嫌いで剣素人のマットは恐れおののいていた。だが剣の修行の必要は本人も察しているのか、嫌だとは言わなかった。
 改めてインフェルノは俺と向き合う。

「お前たちには恩ができた。これからも必要とあれば俺に言ってくれ、可能な限り力を貸そう」

「は、はい!」

 図らずもSランク冒険者とのパイプができた俺ら。
 これを皮切りに、俺らのパーティはギルド内でますます知名度を上げていくことになる。

「お前もよろしくな。『呪い』とはいえ、これからは仲間だ」

 俺は隣の『呪い』の頭をそっとなでた。
 が。

「ゲゲーッ!」

 『呪い』はさっと身を引くと、差し出した俺の手をかぶりと噛んだ。

「あだだだー!?」

「セ、セイ!?」

「こらー!」

 俺の手に食いついて話さない『呪い』。なんだかんだ、俺らの未来はまだまだ前途多難なのだった。

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