なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第14話 少女剣士と格差社会

 ギルドがあるベナスの街にて、住む家を手に入れた俺らのパーティ。無事にギルドに登録し、充分な大きさの拠点も手に入れて、順風満帆の俺らだが、それでもまだ問題はある。

「ずばり、食費ね」

 拠点のリビングにて、何やら紙にたくさん数字を書いたルナルは言った。俺、マット、神官様、メイドのベルガさんがその後ろから覗き込む。人外組は外で遊んでいた。

「わかるのかルナル」

「1年ひとり暮らししてたんだもの、わかるわよ。これからもこのパーティの会計は私が担当させてもらうわ」

「で、ルナルさん、食費ってどれくらい大変なんだ? ドラゴン退治の依頼の報酬、けっこう多かったと思うけど」

「そうね、しばらくはあれで生活できると思うわ。でもあれくらいの額をコンスタントに稼がないと減ってく一方よ、冒険者をやるなら治療費とか諸々かかるでしょうし……何より人数ね、やっぱり」

 今現在俺らのパーティは俺、マット、神官様、フェン、ルナル、モンチー、ジークン、あと同居するベルガさんで7人。けっこうな大所帯だ。

「これだけの人数で食べていくとなると、必要な額もそれなりよ。しかも今後増えていく予定なんでしょ? セイのスキルがあるからね」

「ん、まあ、そうなるな。【美少女化】した相手を放っとくのがまずいと思ったら、パーティに組み込むことになる」

「でしょ? そうなると経費はかかってくし……人間1人増えるとかーなーり必要額も増えるのよ」

 はあとルナルはため息をついた。

「とりあえず考えるべきは……セイのスキル以外で仕事をこなすことね。セイのスキルを使ってばっかだと食わせる相手が増える一方だもの」

「んー、俺以外のメンバーでいうと……神官様は僧侶系最上位職だし、ルナルもひとり暮らしできるくらいには魔法ができる。フェン、モンチー、ジークンは身体能力がかなり高いから……」

 必然的に、俺、ルナル、神官様の視線は一点に集まった。

「お、俺?」

 そう、我が幼馴染マット・オイル。巨乳美少女だがこれまでこれといった仕事もしていない男、もとい女。目の保養という役はこなしているか。

「まあ、たしかにパーティで一番役に立たないのは俺だけどさ……だからといって何ができるわけでもないし」

「お前のスキル【剣聖】だろ。剣で戦えよ」

「あ、忘れてた」

「このやりとり2回目だぞおい。今はまだ訓練もしてないからあれだろうが、ちゃんと訓練すれば強くなれるんじゃないか?」

「へえ、あなた【剣聖】なんだ、やるじゃない。スキル強度は?」

「え、あ、B-……です」

「【剣聖】でそれだけあれば十分よ。やっぱり剣士みたいなシンプルな戦闘員は必要よね」

「そうだな。でも剣の訓練って、いったいどうやれば……」

 その時だった。

「たのもーーーーー! たーのーもーーーー!」

 突然、大きな声が外から聞こえた。俺らは顔を見合わせ、とりあえず外へと向かった。



 俺らが玄関のドアを開けると、そこには3人の人間が待ち構えていた。

 まず背の高い男性。引き締まった肉体に肩当を身に着け、背には巨大な槍を背負っている。年齢でいうと20歳前後だろう、かなり強そうだ。凛々しい顔で俺らを見ていた。

 その隣には俺と同じくらいの背の女子がいた。桃色の髪をカチューシャでまとめ、やや簡素に見えるパンツスタイル。背には弓を背負っている。こちらはどこか不安げだ。

 そしてその2人の前に立つのが、挑戦的な視線を俺らに向けて来る金髪ツインテールの美少女だった。背は俺よりも一回りほど小さいが、腰に手を当て自信たっぷりに堂々とした態度だ。軽装の鎧を身に着けて、腰には剣も提げている。

「出てきたわね、インチキパーティ!」

 俺らの顔を見るなり俺を指差して金髪ツインテが言い放った。いきなりインチキと言われ俺らは面食らう。

「イ、インチキ?」

「そうよ! 冒険者になってすぐドラゴン討伐してこんな大きい家もらうなんてインチキに決まってるわ!」

 金髪ツインテは怒り顔でまくし立てた。後ろの男が慌ててなだめる。

「フラン、落ち着いてください」

「なによアッシュ! 落ち着いてられるなら殴り込みなんてかけないわよ!」

「そうではなくて……まず、自己紹介をしませんと。相手もフランの怒りを理解なされませんよ」

「……なるほど、それもそうね。わかったわ」

 金髪ツインテの少女は改めて俺と向かい合った。

「私はフラン、Bランク冒険者よ! こっちはパーティメンバーのアッシュとメイ」

「アッシュです。突然の訪問を謝罪いたします」

「あ、メイです。初めまして」

 金髪ツインテあらためフランたちも冒険者だった。ひとまず俺らも挨拶したが、自己紹介を遮るようにしてフランはまたまくし立てた。

「あんたたちは今日冒険者になったばっかの新米パーティって聞いたわ。それなのにこんないい家貰って……私たちですら普通の住居なのに! 許せないわ! あんたたち、私と決闘しなさい!」

 フランの唐突な申し出に俺らはただただ唖然とするばかりだった。すると長身の男アッシュが厳かに頭を下げる。

「申し訳ございません、フランは少し負けず嫌いなところがありまして……あなた方の噂を聞いて、実力を確かめてやると言って聞かず……」

「そうだよフランちゃん、やめようよ~」

「余計なこと言わないでよアッシュ! メイも黙ってて! いいから誰か代表を出しなさい! そうね、ドラゴンを倒した奴がいいわ! 私が直々に確かめてあげる」

 パーティメンバーにたしなめられても怒り心頭のフランは聞く耳を持たない。美少女に絡まれるのはけっこうだが面倒になことになった。

「確かめるって……どうやって?」

「言ったでしょ、もちろん決闘よ。アッシュ、あれを」

「はい」

 長身の男アッシュは槍と共に背負っていたものを2本、フランに手渡した。それはどうやら木で作った棒のようだ。それなりの長さと太さがある。

「このスティックを使って決闘をして勝敗を決めようじゃないの! ドラゴンの角を持って帰ってきたってことは剣士なんでしょ? 私と剣術で勝負よ!」

「スティック……その木の棒か」

「本物の剣ではないのか、安全じゃな」

「当たり前でしょ、冒険者は体が資本、余計な怪我のリスクを背負うなんて三流のやることよ」

 フランが言うと俺らの後ろでベルガさんがうんうんと頷いていた。しかし、決闘自体余計なリスクではないのだろうか。

「さあいいからドラゴンを倒した奴を出しなさい! ドラゴンの角を斬った奴でもいいわ!」

 重ねて迫るフラン。どうも言って聞くような相手ではなさそうだ。
 だがそこで俺はピンと閃いた。

「ああ、それならこいつだよ」

「えっ、セイ!?」

 俺はマットを引っ張り出してどんと押した。自分が出されるとは思ってなかったのかマットはバランスを崩し前のめりになる。

「わっ」

「んぶっ!?」

 ちょっと強く押し過ぎたのか、マットとフランが当たってしまった。ただし長身のマットと小柄なフランの身長差から、マットの胸辺りがフランの顔に当たって……早い話が、マットの豊かな胸にフランの顔がめり込む形となった。

「あっ! ご、ごめんなさい……わ、わざとじゃないんです」

 慌ててマットは身を引く。フランはおっぱいに埋めてた顔をぺたぺたと触った後、おもむろにマットの胸に手を伸ばした。むにゅっとマットの胸が揉まれた。

「んっ、な、なにを……」

「なにこれ……なによこのサイズ……私なんて……」

 何やらぶつぶつ言っているフラン。改めてみるとフランの胸は見事なまでの大平野。鎧の上からでは起伏すら見受けられない。小柄なのもあるだろうが、下手すると神官様のそれよりも小さいかもしれない。

「ゆ・る・せ・な・い……」

「あだだだっ!? は、離してくれっ!」

 握りつぶさんばかりの勢いだったフランの手を慌てて振り払うマット。上気した顔で胸を抑える仕草はもうただの女の子である。
 ただそんなマットを、フランはこれまで以上の怒気で睨んでいた。

「ぜっっったいにあんたら許さないわ! 覚悟しなさい、この私がぼっこぼこにしてやるんだからぁっ!!」

 明らかに最初とは怒りの動機が変わったフラン。こいつが対抗意識を燃やす相手は実は男なんだけどな……俺はこのまな板美少女に憐れみの目を向けていた。



 ベナスの街の中心部を少し外れたところにある公園で決闘は行われた。ちなみに決闘に付き添ったのは俺とルナルだけで、神官様とベルガさんはフェンたちの面倒を見るため残った。

「では私が審判を務めさせていただきます。互いにスティックで打ち合い、もし本物の剣ならば死亡が確定するような状況に陥り次第決着とします」

 間に入ったアッシュを挟み、フラン、そしてマットが対峙する。互いに持っているのは木の棒であり危険はないが、ぶつけられればそこそこ痛い。自信満々かつマットへ呪詛のような目を向けるフランに対し、マットは怯えた目で後ろで応援する俺らを振り返っていた。

「な、なんで俺がこんなことやらなくちゃいけないんだよ」

「剣を修行するいい機会になると思ってな。相手もそれなりに強そうだし、負けてもいいからがんばってこい」

「そ、そんなぁ……」

「それに、相手はかなりやる気みたいだしな」

 やる気というか殺る気というか。フランはマットの胸部を睨みつけぶつぶつと怨嗟を漏らしていた。悪いのはあのダブル爆弾である。

「では……始めッ!」

 アッシュが声を張り上げて、決闘は始まった。

「うにゃああああーーーーーっ!」

「わ、わわ、わっ!?」

「よいせ! ほら! てんゃーっ!」

 妙な声を張り上げてマットに襲い掛かるフラン。木の棒が何度も打ち下ろされるが、マットもなんとかそれをしのぎ切っていた。

「おお、やるじゃないかマット」

「やっぱ【剣聖】スキルがあるからね、ある程度はスキルの力で戦えるみたい」

「そ、そうだけどぉ! こ、この子こわいんだよぉー!」

「ほんぬらあーーーーっ!!」

 フランは掛け声は独特だがこちらも剣の腕前は相当なもののようだった。鬼神さながら一方的に攻撃を続けている。

「わっ、ちょっ! やめっ、あぶっ! わわわっ」

 大慌てのマットだがなんだかんだ攻撃を受け止め続けている。その度に衝撃で胸が揺れ、俺にとっては眼福だが、それによりフランの怒りは一層燃え上がっているらしい。

「ぬやああああああああああーーーーーーっ!」

「うわああっ!?」

 フランの気迫に押し負けたのかマットはバランスを崩して後ろに倒れ、フランがその上にのしかかった。

「あー、やっぱりスキルがあっても付け焼刃じゃ勝てないな」

「あ、でも待って、様子が変よ」

 本来なら木の棒を首に突き立てるなりすればフランの勝ちのはずだが、なぜかフランはマットにのしかかった状態で木の棒をぽいと投げ捨てた。
 そしてその両手で、マットの巨乳を鷲づかみにした。

「なんなのよこのサイズ……なんなのよこれ! このデカ乳! バカ乳ぃ!」

「あっ、んっ、ちょっ、まっ……やめっ」

「牛みたいなおっぱいして! どうなったらこうなるのよ! 揉むの? 揉めばこうなるの? こんな風に!」

「あっ、待って! やめて! あっ」

「見せつけるようにブルンブルンさせて! 勝ったはずなのに敗北感しかないわよぉ!」

「あっ、あっ、ちょ、本気で、あっ!」

「このこのこのこのこのぉ!」

「あーっ!?」

 マットのおっぱいを揉みしだくフラン。となぜかルナルはその光景を止めるわけもなくガン見していた。もはや決闘もクソもない。

「ちょ、ちょっとフランちゃん、その人のおっぱいとれちゃうよ~!」

 見かねたフランのパーティメンバーのメイが割り込んで、ようやくフランも我に返ってマットから離れていった。マットはくったりと脱力している。決闘は終わりのようなので俺らも近寄った。

「お疲れマット。よかったぞ」

「うう……もうお嫁にいけない……」

「あんた男でしょ」

 好き放題されたおっぱいは、あおむけにされてるのになおもハリを持って天を向いている。今ならちょっとくらいいいんじゃないか? と思った俺がそーっとそこに手を伸ばした時。

「あんたたち、やっぱりインチキね!」

 フランの怒声がぴしゃりと飛んだ。

「そいつにドラゴンを倒せるわけないわ! 【剣聖】スキルがあるのにろくに鍛えてない! だいたいそんな胸ぶら下げて戦えるわけないわ! 絶対そうよ!」

 たしかにすごい揺れ方だった。などと考えている場合ではない。

「本当にインチキなんだとしたら許せないわ。裏金? それとも依頼者とグルなの? どっちにしろ必ず真相を突き詰めてやるから! 覚悟しなさいよあんたたち!」

 フランは本気のようだ。思いの外高い剣の腕前もそうだがフランはよくも悪くも冒険者としてプライドが高いらしく、インチキをした(と思われてる)俺らを許せないのだろう。実際、マットがドラゴンを倒したというのも大ウソだし。
 どうしたものかと俺らが考えていると、長身の男アッシュが割り込んできた。

「フラン、失礼ですがそれは早計かもしれませんよ」

「なによアッシュ。こいつらをかばう気?」

「いえ……事実、そこにいる女性がドラゴンを討伐したというのは嘘でしょう。しかしドラゴン討伐の任務を果たしたのは嘘ではないのかもしれません」

「はああ? どういうことよ」

「今、そこのあなたは言っていました。『あんた男でしょ』、と」

 アッシュの言葉に俺らはギクリとした。たしかに今さっきルナルがうっかりそう言ってしまっている。

「こんなおっぱいの大きい男いるわけないでしょ!!」

「いえそうではなく……メイさん、シオナさんから話を聞いてましたよね?」

「あ、はい!」

「……どういうこと? メイ」

「うん。シオナさんが言ってたんだけど、この人たちのスキルは【美少女化】って言って、何かを女の子に変えちゃうスキルなんだって。それで、ドラゴンを女の子にして任務を達成したんじゃないか、って」

「はあ!? 何それ!」

 ギルド受付のシオナさんが口を滑らしたらしい。あるいは特に隠そうともしてなかったのか……俺らはあちゃーと頭をかいた。これが広まると少しややこしいことになる気がしていた。

「【美少女化】? そんなスキルが存在するわけ……いやでも……あんたたち、それホントなの? ってことはこいつはそのスキルで女になった元男ってわけ?」

「ああ、そうだよ。全部本当のことだ、俺がそのスキルを持っている」

 隠し通せる気もしなかったので俺は白状した。するとフランは怒るわけでなく考え込む。

「元男……なのになんでこんな……おかしい、絶対におかしいわ。こんなことあっていいはずがない……そう、信じられないわ!」

 フランは1人で何やら考え込んだ後、思わぬことを言い出した。

「そんなスキルがあるというなら見せてみなさい! でなきゃ信じられないわ」

「見せるって言ってもな……元となるものがないといけないし、何より俺のスキルは一度かけると基本戻せないんだ」

「いいわよそんなの! アッシュ! あんた実験台になりなさい」

「えっ、わ、私ですか?」

「そうよ! あんたしかいないでしょ!」

「むう……わかりました」

 フランに言われたアッシュはおとなしく進み出てきた。俺らは面食らう。

「いいんですか? 一度【美少女化】すると戻れませんよ」

「構いません、フランが言うなら。私のスキルがあれば体が変わろうと問題はないですしね」

「まあ本人がそういうなら……何かリクエストとかありますか?」

「そうですね、あまり身長が縮むと槍を背負いにくくなるので……私からはそれくらいです。フランはなにかありますか?」

「フン、スキルが本当っていうなら、その……そこのおっぱいお化けみたいにすればいいじゃない!」

「了解。じゃあ……えいっ!」

 俺はアッシュに手を向けてスキルを発動した。アッシュの長身が光に包まれて、やがて晴れる。

「おお……これが……」

 アッシュは自分の体を驚いた様子で確かめていた。
 リクエストどうり身長はほぼ変わらず、かなり背の高い女性だ。凛々しい顔立ち、黒い髪を引き継ぎ、服装も同じなので全体の雰囲気はアッシュとあまり変わらない。髪が伸びて腰まである長髪になったことと、引き締まった体が全体的に女性的になったことと……そして何よりの変化は、マットのそれと負けず劣らずの、豊かなバストだろう。
 アッシュの身長が高いので俺も下から見上げる形になったが、下から見る巨乳はかなりの代物だった。

「ほ、本当に、女の子に、なった……」

 フランは唖然としている。だがハッと気が付くと、自分の胸をぺたぺたと触った後、アッシュに歩み寄る。

「フラン、どうし……」

「どうしたもこうしたもないわよッ!!」

「あっ!?」

 フランはいきなりアッシュの胸をぐわしと掴んだ。柔らかなそれが歪んでこぼれる。俺らは例によってガン見。

「なんであんたまでこんな……こんな! 男のくせにぃ!」

「フ、フラン、落ち着いて! あなたが望んだんですよ?」

「うるさい!」

「ううんっ……や、やめ……」

 ひとしきりアッシュの胸を揉んだ後、フランは俺を睨みつけた。

「とにかく! あんたらのこと覚えたからね! 今に見てなさい、絶対に越えてやるんだから! 行くわよメイ」

「あ、うん、フランちゃん」

「アッシュも! なにへたりこんでるのよ! 重いの? 胸が重いの? ねえ!」

「フ、フラン……さすがに理不尽ですよ……」

 長身美女になったアッシュとメイを引き連れて、嵐のようにフランは去っていった。

「結局俺、揉まれ損じゃん……はあ……」

「見てる分には最高だったがな」

「うらむぞこの野郎」

 なにはともあれインチキ呼ばわりはなくなったようだ。マットも多少は剣の練習ができてよかっただろう。いいもの見れたし。



 ただ、このフランとの出会いが俺らの運命を大きく変えることになるとは、この時はまったく思っていなかった。

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