なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~
第13話 新たな拠点、新たな仲間
ベナスの街の冒険者ギルドにて。
「も、もうドラゴン討伐のお仕事を終えて帰って来たんですかー!?」
驚く受付のシオナさんに、俺らはしたり顔だった。
「はい。これが仕事完了サイン済みの依頼書、あと討伐の証としてドラゴンの鱗と……」
「つの!」
「ですっ、と」
依頼書の紙、巨大な赤い鱗、そしてフェンとマット、あともう1人が3人がかりで持ってきた大きな竜の角を置いた。シオナさんの見開いた目がますます丸くなり、ギルドにいる他の冒険者たちの視線も集まるのがわかる。ふふん、と鼻を鳴らし束の間の栄光を楽しんだ。
だが実はこの鱗と角は貰っただけなのだ、抜け落ちていたやつを……本人から。
「これはまさしく……レイス種ドラゴンの鱗と角! いやあお見事ですねセイさん、危険なドラゴン討伐任務をこんなにあっさりと済ませてしまうなんて! これは大物ルーキー登場ですよー」
「ははは……まあ、色々と運もよかったですからね」
実のところこんなに簡単に仕事が終わったのはただの幸運なのだが、ギルドでの評価が高まって悪いことはないので黙っておく。
だがシオナさんは意外と慧眼だった。意外と言うと失礼か。
「おや? パーティがお1人増えてますね?」
奥の方を覗き込んで言う。シオナさんの言う通り一番後ろには新たに加わったメンバーが1人いるのだ。しかもだいぶ特徴的な見た目の……角と翼と尻尾を生やした美少女が。
「ふうむ、その角と尻尾……セイさんのスキル……なるほど、そういうことですかー。うふふっ」
シオナさんはそれで察したらしく意味ありげに笑った。陽気なシオナさんの思わぬ鋭さに俺は驚いた。
「シ、シオナさん。やっぱりこういう方法だと、ギルドでは認めてもらえませんか?」
「いえいえ、スキルを活かして仕事をこなす分には文句言うわけないですよー! ちゃーんと依頼人の方が満足されてますしね。今後もそんな感じでお願いします」
さて、と言いながらシオナさんは何やら大量の書類を取り出した。
「何はともあれ、初仕事の達成おめでとうございます! これで皆さんのパーティは当ギルドへの正式登録が完了いたしました! 改めてこれからよろしくお願いします、皆様の冒険者としてのご活躍を応援しますよ!」
「はい、ありがとうございます!」
いよいよこれで冒険者になったわけだ。ここから俺の夢への挑戦が本格的に始まる……夢の美少女ハーレム目指して……
「一応正式登録の場合諸々の記入とかあるんですけど、お仕事終わったばかりですし後にしときましょう。それよりもお休みしたいですよね? 皆さんはこのベナスの街への定住を希望されますか?」
「あ、はい。しばらく冒険者として活動するつもりなので」
「ですよね! で、当ギルドでは冒険者さんへの福利厚生の一環として、ベナスの街への定住希望の方にお住まいを提供させていただいているんです」
住む家を用意してくれるのはありがたい話だ。俺らはそれなりに大所帯だし、俺のスキルの都合上パーティは増えていく可能性がある。
シオナさんは書類の束をめくっていく。どうやら空いている家のリストのようだ。
「提供するお住まいはパーティの人数、代表のステータス、そして初仕事の成果によって決めさせていただいてるんですが……ふむ」
シオナさんは考え込んだ後、にやっと笑った。
「スキル強度はSSS+++、初仕事でドラゴン討伐……その福産品の竜鱗と竜角の寄付、ついでに私個人の好みを少々加えて……うん、これにしましょう!」
そうしてシオナさんが決めてくれた家は、驚きのものだった。
俺らは教えられた住所へと向かい、ベナスの街を歩いていた。
ベナスの街は冒険者ギルドがあるために様々な人が行き交っており、区画された街並みを歩けば様々な人間とすれ違う。
竜少女ジークンはそれを楽しそうに眺めていた。
「すごいすごい! こんなにたくさんの人間がいるなんて!」
尻尾をふりふり翼をぴくぴくさせて、人混みにはしゃぐジークン。ミスリル山で恐れられていたドラゴンの正体だった。
「ジークンは本当に人間が好きなんだな」
「うん! 僕ね、ずっと人間と友達になりたかったんだ! だって人間はすっごく頭がよくて、知らないものたーくさん持ってるんだもん! でも僕が近づくとみんな逃げちゃって寂しかったんだー。だから、僕を怖くない体にしてくれたセイには感謝してる!」
ジークンは純粋そのものの表情でぱあっと笑った。見ているこっちも思わず顔がほころぶような笑顔だ。
このジークン、人間と仲良くなるのを夢見て大勢の人間が訪れるミスリル山にやって来たはいいが、仲良くなろうとするあまり出会う人間全員に向かっていったらしい。当然人間からすれば巨大なドラゴンが向かってくるのは恐怖でしかなく、いつしか討伐依頼が出されてしまったというわけだ。本人はこの通り至って無害かつ人懐っこい性格をしている。
俺は彼女を(元々は雄だったらしいが)【美少女化】した後にその事情を聞き、俺に懐いてしまったのもあって放っておけず、そのまま連れてきたのだった。
「あ、ねえねえセイ、僕みたいに角を生やした人がいる! あっちには尻尾の人! あははっ、おもしろーい」
興味津々ではしゃぎ回るジークン。もちろんのことハーレム要員としてもジークンはいい。俺をよく慕ってくれてるし、妹系というかなんとなく可愛がり甲斐のある元気さが眩しい。それでいて中々のボディをしているのだから素晴らしいの一言。
「しっかしセイ、俺らがこの仕事を受けてよかったよな。他の奴だったらジークンはそのまま殺されてたかもしれないからな」
マットの言葉にそうだな、と頷いた。なんだかんだ俺のスキルは物事の平和的解決にはうってつけのスキルなのかもしれない。後は元に戻す方法が見つかれば言うことがないのだが……
「あっ、あれじゃないかしら?」
そうこうしている内にルナルが目指す家を見つけたようだ。彼女が指さした先にあるシルエットを見て、俺とマットは揃ってごくりと唾をのんだ。
俺らはその家を前に、思わずしばし立ち止まりしげしげと眺めてしまった。
でかい。とにかく、でかい。
家屋の多いベナスの街でもひときわ目を引く大きさだ、普通の民家2,3個分の敷地に立つ2階建ての木造の家は作りこそシンプルながらも新しくしっかりとしていて、何よりでかい。俺らは今7人組だが、その倍は住めそうなくらいに大きな家だった。
「すっご……」
「わーい! おっきーい!」
「こ、これ、私たちが住んでいいの?」
「そ、そのはず、だな」
俺は進み出てその家のドアの前に立った。ドアにはギルド所有を意味するマークが刻まれていて、それが魔法により鍵の役割も果たしているらしい。そして今、俺の手の平にも同じマークが浮かび上がっている。ギルドでシオナさんから手渡された魔法印だ。
俺はおそるおそる手を伸ばし、手の平と家のドアを合わせる。するとその瞬間にドアのマークが光を放ち、やがて消えた。ガチャリ、と鍵の開く音がした。
「本当に、これが俺らのものなんだ! ははは、すごいぞ! こんなでかい家ポンとくれるなんて!」
「一応諸々の費用は必要のようじゃがそれも格安。ギルドの仕事で賄えるらしいしの」
「シオナさんに感謝だな、あとジークンにも」
「わーい! 人間のおうちー!」
「あっ、ちょっとジークン!」
はしゃぐジークンはまっさきに家の中に駆け込んでいってしまった。元気なのも困りものだな、と俺らは苦笑する。
「ねえねえセイ! このおうち、もう誰か住んでるよー!」
家の中からジークンの声が聞こえた。え? と俺らは顔を見合わせる。これは俺らがギルドからもらった家のはず、誰かが住んでいるのはおかしい。
疑問に思いつつ、とりあえず俺らも家の中に入っていった。
家の中の一画にある、個人用の個室と思われる部屋。簡単な机と椅子、あと寝具が整えられている。
その男はそこにいた。
「ひ、ひぃぃぃぃ……」
ぞろぞろと現れた俺らを見て慄き後ずさる。チグハグでボロボロな服を着て、体を洗っていないのか肌は汚れ異臭が漂う。伸びっぱなしの髪とヒゲ、くたびれたような瞳。
それはいわゆる、浮浪者だった。
「ゆ、許してくださいいぃぃぃ……雨風をしのぐだけのつもりだったんですぅぅぅぅ……許してくださいぃぃぃぃぃ……」
浮浪者の男は縋るように震えながら謝った。俺らはとりあえず唖然とするばかりだった。まさかこんな場所でこんな男に遭遇するとは。どう言葉をかけてやればいいかもよくわからない。
見かねた神官様が進み出る。
「お主、ここに住んでおったのか? その様子だと正式な住人ではなさそうじゃが」
「は、はいぃぃぃぃ……し、忍び込んで使ってました、ごめんなさいぃぃぃ……」
「まあまあ落ち着け、事情を聞こうではないか。まずどうやって忍び込んだのだ? 鍵はかかっておったはずじゃが」
「は、はいぃぃぃぃ……こ、この家はちょっと前まで、他の冒険者パーティが使っていたんです。そ、その人たちが出ていく時に、窓をひとつ閉め忘れてるのを、偶然見つけて……忍び込んじゃったんです、ごめんなさいぃぃぃぃぃ……」
怯えるばかりの浮浪者の男を神官様がなんとか宥める。浮浪者はとりあえず暴力で罰せられたり叩きだされたりされないとわかって落ち着いたようだった。
改めて浮浪者の男は正座して語り始める。
「私は、ベルガ・バトラーと申します。数年前までは冒険者をやっていたのですが、腰を痛めて廃業せざるをえなくなりまして……ギルドから与えられた家もなくなって、収入もなくなり、そのままずるずると……」
「なんと、家をとりあげられてしまったのか? 冒険者をやめた途端に」
「い、いえ! ぼ、冒険者をやめた後も、は次の家が見つかるまではギルドは家を貸してくれるんです。でも私は冒険者を廃業した悔しさから酒に溺れてしまい、そのままずるずると過ごして……自業自得です。今覚えば自分がどれだけ愚かだったか……」
「して、そのまま家なしとして過ごしていたということか」
「はい……でもやっぱり、家がないのは辛くて……この家の窓が偶然空いてるのを見て、思わず……ご、ごめんなさい、ベッドを汚してしまって……」
この浮浪者、ベルガさんの言う通り、もう長く水浴びもしてないであろうベルガが寝たベッドはかなり汚れてしまっていた。
「ごめんなさい、すぐに出ていきます。本当にごめんなさい」
「いや待て。出ていったところで行くところもなかろう」
神官様は謝りながら出ていこうとするベルガを引き留めて、俺に振り返った。
「のうセイ、なんとかこ奴もこのままここに住まわせてはやれぬだろうか。ワシは職業柄、このような救われぬ者を放っておけなくてのう……」
「うーん、俺は別にいいですけど……」
その時、俺はピンと閃いた。
「そうだ、じゃあベルガさん、あなたはこのままここに住んでいいですよ。俺らと仲良く暮らしましょう」
「え、ほ、本当ですか?」
「ただし条件があります。ただ住まわせるんじゃなくて、これはれっきとした雇用です。ベルガさんには住み込みで働いてもらうことになります」
「働く……わ、わかりました。私にできることならば……」
「ただし、この姿で!」
「え?」
俺はベルガさん目掛けてスキルを発動した。驚いた顔のベルガさんが光に包まれる。
やがて光が晴れた時、浮浪者の姿はそこにはなく。
代わっていたのは、可愛らしくアレンジされたメイド服に身を包んだ、金髪のメイドさんの姿だった。
「我ながらなかなか……年齢は17歳ってところかな。なんとなくメイドは金髪のイメージ」
「え、え? 私、どうなって……?」
自分の体の変化に驚くベルガさんに、俺は改めて条件を提示した。事後承諾だがまあいいだろう。
「ベルガさんにはメイドとして働いてもらいます! ちょうど、1人は家に留まって留守番をしてくれる人が欲しいなと思っていたんですよ。炊事とかできますか?」
「あ……で、できます! できなくても、勉強しますから!」
金髪メイドになったベルガさんがぐっと手を握って懇願する。やはりメイドとはいいものだ。ハーレムにも欠かせない。
ただ神官様は呆れ顔だった。
「セイ、お主のう……こんなことをする必要はあったのか?」
「まあまあ神官様、俺ら一応女の子パーティですし、男のままだとベルガさんも居心地悪いでしょうから。それに、ギブ&テイクを成立させた方が互いに変に気遣う必要もないでしょう?」
「むう、一理あるようなないような……まあよい。ともあれよかったのうベルガ、これで晴れてここはお前の家じゃ」
「は、はい! ありがとうございます!」
「とりあえず最初の仕事は掃除かな……あと換気。ま、お仕事は無理しない程度でいいですから。よろしくねベルガさん」
「はい! 本当に、ありがとうございます!」
ベルガさんは立ち上がって頭を下げた。メイドさんが頭を下げるさまを生で見るのは初めてだが、やはりなんというかいいシチュエーションだ。俺はマットと目を合わせて頷き合った。なぜかルナルも妙ににやけた笑みを浮かべていた。
こうして立派な家と美少女メイドを手に入れて、俺の冒険者としての道は始まるのだった。
「も、もうドラゴン討伐のお仕事を終えて帰って来たんですかー!?」
驚く受付のシオナさんに、俺らはしたり顔だった。
「はい。これが仕事完了サイン済みの依頼書、あと討伐の証としてドラゴンの鱗と……」
「つの!」
「ですっ、と」
依頼書の紙、巨大な赤い鱗、そしてフェンとマット、あともう1人が3人がかりで持ってきた大きな竜の角を置いた。シオナさんの見開いた目がますます丸くなり、ギルドにいる他の冒険者たちの視線も集まるのがわかる。ふふん、と鼻を鳴らし束の間の栄光を楽しんだ。
だが実はこの鱗と角は貰っただけなのだ、抜け落ちていたやつを……本人から。
「これはまさしく……レイス種ドラゴンの鱗と角! いやあお見事ですねセイさん、危険なドラゴン討伐任務をこんなにあっさりと済ませてしまうなんて! これは大物ルーキー登場ですよー」
「ははは……まあ、色々と運もよかったですからね」
実のところこんなに簡単に仕事が終わったのはただの幸運なのだが、ギルドでの評価が高まって悪いことはないので黙っておく。
だがシオナさんは意外と慧眼だった。意外と言うと失礼か。
「おや? パーティがお1人増えてますね?」
奥の方を覗き込んで言う。シオナさんの言う通り一番後ろには新たに加わったメンバーが1人いるのだ。しかもだいぶ特徴的な見た目の……角と翼と尻尾を生やした美少女が。
「ふうむ、その角と尻尾……セイさんのスキル……なるほど、そういうことですかー。うふふっ」
シオナさんはそれで察したらしく意味ありげに笑った。陽気なシオナさんの思わぬ鋭さに俺は驚いた。
「シ、シオナさん。やっぱりこういう方法だと、ギルドでは認めてもらえませんか?」
「いえいえ、スキルを活かして仕事をこなす分には文句言うわけないですよー! ちゃーんと依頼人の方が満足されてますしね。今後もそんな感じでお願いします」
さて、と言いながらシオナさんは何やら大量の書類を取り出した。
「何はともあれ、初仕事の達成おめでとうございます! これで皆さんのパーティは当ギルドへの正式登録が完了いたしました! 改めてこれからよろしくお願いします、皆様の冒険者としてのご活躍を応援しますよ!」
「はい、ありがとうございます!」
いよいよこれで冒険者になったわけだ。ここから俺の夢への挑戦が本格的に始まる……夢の美少女ハーレム目指して……
「一応正式登録の場合諸々の記入とかあるんですけど、お仕事終わったばかりですし後にしときましょう。それよりもお休みしたいですよね? 皆さんはこのベナスの街への定住を希望されますか?」
「あ、はい。しばらく冒険者として活動するつもりなので」
「ですよね! で、当ギルドでは冒険者さんへの福利厚生の一環として、ベナスの街への定住希望の方にお住まいを提供させていただいているんです」
住む家を用意してくれるのはありがたい話だ。俺らはそれなりに大所帯だし、俺のスキルの都合上パーティは増えていく可能性がある。
シオナさんは書類の束をめくっていく。どうやら空いている家のリストのようだ。
「提供するお住まいはパーティの人数、代表のステータス、そして初仕事の成果によって決めさせていただいてるんですが……ふむ」
シオナさんは考え込んだ後、にやっと笑った。
「スキル強度はSSS+++、初仕事でドラゴン討伐……その福産品の竜鱗と竜角の寄付、ついでに私個人の好みを少々加えて……うん、これにしましょう!」
そうしてシオナさんが決めてくれた家は、驚きのものだった。
俺らは教えられた住所へと向かい、ベナスの街を歩いていた。
ベナスの街は冒険者ギルドがあるために様々な人が行き交っており、区画された街並みを歩けば様々な人間とすれ違う。
竜少女ジークンはそれを楽しそうに眺めていた。
「すごいすごい! こんなにたくさんの人間がいるなんて!」
尻尾をふりふり翼をぴくぴくさせて、人混みにはしゃぐジークン。ミスリル山で恐れられていたドラゴンの正体だった。
「ジークンは本当に人間が好きなんだな」
「うん! 僕ね、ずっと人間と友達になりたかったんだ! だって人間はすっごく頭がよくて、知らないものたーくさん持ってるんだもん! でも僕が近づくとみんな逃げちゃって寂しかったんだー。だから、僕を怖くない体にしてくれたセイには感謝してる!」
ジークンは純粋そのものの表情でぱあっと笑った。見ているこっちも思わず顔がほころぶような笑顔だ。
このジークン、人間と仲良くなるのを夢見て大勢の人間が訪れるミスリル山にやって来たはいいが、仲良くなろうとするあまり出会う人間全員に向かっていったらしい。当然人間からすれば巨大なドラゴンが向かってくるのは恐怖でしかなく、いつしか討伐依頼が出されてしまったというわけだ。本人はこの通り至って無害かつ人懐っこい性格をしている。
俺は彼女を(元々は雄だったらしいが)【美少女化】した後にその事情を聞き、俺に懐いてしまったのもあって放っておけず、そのまま連れてきたのだった。
「あ、ねえねえセイ、僕みたいに角を生やした人がいる! あっちには尻尾の人! あははっ、おもしろーい」
興味津々ではしゃぎ回るジークン。もちろんのことハーレム要員としてもジークンはいい。俺をよく慕ってくれてるし、妹系というかなんとなく可愛がり甲斐のある元気さが眩しい。それでいて中々のボディをしているのだから素晴らしいの一言。
「しっかしセイ、俺らがこの仕事を受けてよかったよな。他の奴だったらジークンはそのまま殺されてたかもしれないからな」
マットの言葉にそうだな、と頷いた。なんだかんだ俺のスキルは物事の平和的解決にはうってつけのスキルなのかもしれない。後は元に戻す方法が見つかれば言うことがないのだが……
「あっ、あれじゃないかしら?」
そうこうしている内にルナルが目指す家を見つけたようだ。彼女が指さした先にあるシルエットを見て、俺とマットは揃ってごくりと唾をのんだ。
俺らはその家を前に、思わずしばし立ち止まりしげしげと眺めてしまった。
でかい。とにかく、でかい。
家屋の多いベナスの街でもひときわ目を引く大きさだ、普通の民家2,3個分の敷地に立つ2階建ての木造の家は作りこそシンプルながらも新しくしっかりとしていて、何よりでかい。俺らは今7人組だが、その倍は住めそうなくらいに大きな家だった。
「すっご……」
「わーい! おっきーい!」
「こ、これ、私たちが住んでいいの?」
「そ、そのはず、だな」
俺は進み出てその家のドアの前に立った。ドアにはギルド所有を意味するマークが刻まれていて、それが魔法により鍵の役割も果たしているらしい。そして今、俺の手の平にも同じマークが浮かび上がっている。ギルドでシオナさんから手渡された魔法印だ。
俺はおそるおそる手を伸ばし、手の平と家のドアを合わせる。するとその瞬間にドアのマークが光を放ち、やがて消えた。ガチャリ、と鍵の開く音がした。
「本当に、これが俺らのものなんだ! ははは、すごいぞ! こんなでかい家ポンとくれるなんて!」
「一応諸々の費用は必要のようじゃがそれも格安。ギルドの仕事で賄えるらしいしの」
「シオナさんに感謝だな、あとジークンにも」
「わーい! 人間のおうちー!」
「あっ、ちょっとジークン!」
はしゃぐジークンはまっさきに家の中に駆け込んでいってしまった。元気なのも困りものだな、と俺らは苦笑する。
「ねえねえセイ! このおうち、もう誰か住んでるよー!」
家の中からジークンの声が聞こえた。え? と俺らは顔を見合わせる。これは俺らがギルドからもらった家のはず、誰かが住んでいるのはおかしい。
疑問に思いつつ、とりあえず俺らも家の中に入っていった。
家の中の一画にある、個人用の個室と思われる部屋。簡単な机と椅子、あと寝具が整えられている。
その男はそこにいた。
「ひ、ひぃぃぃぃ……」
ぞろぞろと現れた俺らを見て慄き後ずさる。チグハグでボロボロな服を着て、体を洗っていないのか肌は汚れ異臭が漂う。伸びっぱなしの髪とヒゲ、くたびれたような瞳。
それはいわゆる、浮浪者だった。
「ゆ、許してくださいいぃぃぃ……雨風をしのぐだけのつもりだったんですぅぅぅぅ……許してくださいぃぃぃぃぃ……」
浮浪者の男は縋るように震えながら謝った。俺らはとりあえず唖然とするばかりだった。まさかこんな場所でこんな男に遭遇するとは。どう言葉をかけてやればいいかもよくわからない。
見かねた神官様が進み出る。
「お主、ここに住んでおったのか? その様子だと正式な住人ではなさそうじゃが」
「は、はいぃぃぃぃ……し、忍び込んで使ってました、ごめんなさいぃぃぃ……」
「まあまあ落ち着け、事情を聞こうではないか。まずどうやって忍び込んだのだ? 鍵はかかっておったはずじゃが」
「は、はいぃぃぃぃ……こ、この家はちょっと前まで、他の冒険者パーティが使っていたんです。そ、その人たちが出ていく時に、窓をひとつ閉め忘れてるのを、偶然見つけて……忍び込んじゃったんです、ごめんなさいぃぃぃぃぃ……」
怯えるばかりの浮浪者の男を神官様がなんとか宥める。浮浪者はとりあえず暴力で罰せられたり叩きだされたりされないとわかって落ち着いたようだった。
改めて浮浪者の男は正座して語り始める。
「私は、ベルガ・バトラーと申します。数年前までは冒険者をやっていたのですが、腰を痛めて廃業せざるをえなくなりまして……ギルドから与えられた家もなくなって、収入もなくなり、そのままずるずると……」
「なんと、家をとりあげられてしまったのか? 冒険者をやめた途端に」
「い、いえ! ぼ、冒険者をやめた後も、は次の家が見つかるまではギルドは家を貸してくれるんです。でも私は冒険者を廃業した悔しさから酒に溺れてしまい、そのままずるずると過ごして……自業自得です。今覚えば自分がどれだけ愚かだったか……」
「して、そのまま家なしとして過ごしていたということか」
「はい……でもやっぱり、家がないのは辛くて……この家の窓が偶然空いてるのを見て、思わず……ご、ごめんなさい、ベッドを汚してしまって……」
この浮浪者、ベルガさんの言う通り、もう長く水浴びもしてないであろうベルガが寝たベッドはかなり汚れてしまっていた。
「ごめんなさい、すぐに出ていきます。本当にごめんなさい」
「いや待て。出ていったところで行くところもなかろう」
神官様は謝りながら出ていこうとするベルガを引き留めて、俺に振り返った。
「のうセイ、なんとかこ奴もこのままここに住まわせてはやれぬだろうか。ワシは職業柄、このような救われぬ者を放っておけなくてのう……」
「うーん、俺は別にいいですけど……」
その時、俺はピンと閃いた。
「そうだ、じゃあベルガさん、あなたはこのままここに住んでいいですよ。俺らと仲良く暮らしましょう」
「え、ほ、本当ですか?」
「ただし条件があります。ただ住まわせるんじゃなくて、これはれっきとした雇用です。ベルガさんには住み込みで働いてもらうことになります」
「働く……わ、わかりました。私にできることならば……」
「ただし、この姿で!」
「え?」
俺はベルガさん目掛けてスキルを発動した。驚いた顔のベルガさんが光に包まれる。
やがて光が晴れた時、浮浪者の姿はそこにはなく。
代わっていたのは、可愛らしくアレンジされたメイド服に身を包んだ、金髪のメイドさんの姿だった。
「我ながらなかなか……年齢は17歳ってところかな。なんとなくメイドは金髪のイメージ」
「え、え? 私、どうなって……?」
自分の体の変化に驚くベルガさんに、俺は改めて条件を提示した。事後承諾だがまあいいだろう。
「ベルガさんにはメイドとして働いてもらいます! ちょうど、1人は家に留まって留守番をしてくれる人が欲しいなと思っていたんですよ。炊事とかできますか?」
「あ……で、できます! できなくても、勉強しますから!」
金髪メイドになったベルガさんがぐっと手を握って懇願する。やはりメイドとはいいものだ。ハーレムにも欠かせない。
ただ神官様は呆れ顔だった。
「セイ、お主のう……こんなことをする必要はあったのか?」
「まあまあ神官様、俺ら一応女の子パーティですし、男のままだとベルガさんも居心地悪いでしょうから。それに、ギブ&テイクを成立させた方が互いに変に気遣う必要もないでしょう?」
「むう、一理あるようなないような……まあよい。ともあれよかったのうベルガ、これで晴れてここはお前の家じゃ」
「は、はい! ありがとうございます!」
「とりあえず最初の仕事は掃除かな……あと換気。ま、お仕事は無理しない程度でいいですから。よろしくねベルガさん」
「はい! 本当に、ありがとうございます!」
ベルガさんは立ち上がって頭を下げた。メイドさんが頭を下げるさまを生で見るのは初めてだが、やはりなんというかいいシチュエーションだ。俺はマットと目を合わせて頷き合った。なぜかルナルも妙ににやけた笑みを浮かべていた。
こうして立派な家と美少女メイドを手に入れて、俺の冒険者としての道は始まるのだった。
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