なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第10話 男の娘

 ルナルと一旦分かれ、俺たちは元の村に戻ってきていた。
 冒険者ギルドに入る前にまずは両親と話をしておきたかったからだ。冒険者になればしばらく帰らなくなるだろうし、危険も伴う。

 15歳になりスキルを貰った若者が冒険者ギルドに入るのはそう珍しいことでもないが、危険だということで反対する親もいる。そこはやはり相談が必要だろう。

「じゃあまた後でな」
「ああ」

 マットも両親と相談するだろうから一旦分かれ、俺は神官様とフェンを連れて家に帰った。ルナルはクローバーの街でそのまま待っている。

「……ん?」

 家に近づいてくるにつれて、俺は妙な気配に気が付いた。俺の家は小さな道具屋で、店頭に訪れる客も日に数人程度といった具合のはずだ。
 だがなぜか俺の家の方で大勢の人の声がする。そして家が見えた時、店には大勢の客が集まっていた。

「おお、セイ、お主の家じゃが盛況しとるではないか」

「ええ、そうみたいですが……どうしたんだろう、珍しいな」

 俺の家がこんなに盛況することはあるのだろうか? 俺は首を傾げた。それになんだか集まっている客の様子も少しおかしい、大半がおばちゃんおじさんで、なんだか黄色い声が上がっているような……

「こっち向いてー!」

「かわいいねー」

「偉いねぇ」

 妙ににぎやかな客の間を縫って、俺はなんとか店の前へとやってくる。そしてそこにいた人を見て、思わず目を疑った。

「い、いらっしゃい、ませ……」

 そこにいたのはフリフリの可愛い服を着た小さな少女。顔を真っ赤にし、羞恥からかぷるぷる震えながら、看板娘として客寄せをする……【美少女化】した父さんの姿だった。

「と、父さん……?」

「あっ、セ、セイッ!?」

 父さんは俺に気付き素っ頓狂な声を上げる。そしてただでさえ赤かった顔がユデダコのように真っ赤に染まっていった。息子にこんな服を着ているところを見られたのだからそうもなるだろう。

「お、オホン。帰ってきていたのか。ま、まあ、とにかくは、入れ」

「父さん、その格好は……」

「言うな! 何も言わんでくれ……」

 逃げるように店の中に入っていく父さん。俺は色々と衝撃が残ったまま、とりあえず後を追って家に戻ったのだった。



 どうやら父さんは母さんの手で看板娘に仕立て上げられてしまい、流されるままあのような姿で客寄せをさせられていたそうだ。父さんはとにかく恥ずかしがっていたが、対象的に母さんはほくほく顔だった。

「おかえりーセイ! あれ、女の子のままなのね。戻る方法は見つかったの?」

「ただいま母さん。ううん、結局ダメだった」

 店番をしていた母さんにそう告げると、父さんが見るからに落胆した。

「うう、いつまでこんなことをすればいいんだ……」

「あらいいじゃないあなた、かわいいわよ? 皆さんからも評判で、お店の売り上げも上がってるし」

「そういう問題じゃあない!」

 若返った母さん、美少女になった父さんはなんだかんだうまくやっているらしい。こっちはしばらくこのままで大丈夫だろう、父さんには悪いけど。

「実はちょっと、大事な話があるんだ」

 俺が切り出すと、両親は顔を見合わせるのだった。



 その日の夕食の席(神官様とフェンもいっしょである)で、俺は冒険者になることについて切り出した。
 返答は予想以上にあっさりしていた。

「あらいいじゃない。がんばってきてねセイ」

 母さんはご飯をよそいながらしれっと言い切った。やはりというか父さんはそんな母さんに驚き異を唱える。

「お、おまえ、冒険者になるということがどんなことがわかってるのか? 冒険者になれば危険も伴うし……」

「セイなら大丈夫よ、スキルもあるしね。そっちのフェンちゃんだって、最初はセイを食べようとしてたんでしょ?」

 母さんが問うとご飯をがっついていたフェンが顔を上げる。フェンのことも簡単に受け入れる辺り母さんの適応力はおそろしい。

「んぐっ……うん! セイを食べようとしてたぞ! あとご飯おかわり!」

「あらあらよく食べるわね、どんどん食べなさい。どんな危ない相手でもフェンちゃんみたいに仲間にしちゃうからきっと大丈夫よ」

「しかしだな……」

 父さんは真面目に反論しているようだが、俺や妹サナが子供の頃使ってた子供用椅子に座って言うのでいまいち覇気がない。

「それに、マット君や神官様もいっしょに行ってくれるんでしょ? なら大丈夫よ」

「そうだ、神官様……この機会に、はっきりと決めてもらっていいですか? 俺といっしょに冒険者になるかどうか」

 俺は同じく子供用椅子に座っている神官様に問いかける。僧侶系最上位職でありスキルもそれに準じたものである神官様がパーティに加わってくれれば心強いが、強制はできない。
 神官様は考え込んでいる様子だったが、やがて答えた。

「色々考えてみたが……ワシはセイたちと共に行きたいと思う。神殿を出てクローバーの街を訪れ、ワシはワシが生きてきた世界がいかに狭いかを思い知ったし、もっと外のことを知りたいと思うようになった。セイたちと共に行けばより新鮮な体験もできるじゃろうしの、付き合ってやるとするよ」

「ありがとうございます、神官様」

 これでマットが剣士、ルナルが魔術師、神官様が僧侶と一通りの冒険者パーティが出そろった。俺の【美少女化】だけ色々特殊だがまあなんとかなるだろう。

「お兄ちゃん冒険者になるんだ、いーなー。私もパーティに入りたいなあ」

「サナはスキル貰ってからだな。どんなスキルがいい?」

「そうねー、お兄ちゃんが【美少女化】だから、私は美少年化とか?」

「まさか、そんなスキルが……ないとは言い切れない、か」

「ひょっとしたら元に戻るにはそのスキルが必要なのやもしれんしの」

「冒険者になるからには早く戻る手段を見つけるんだぞ、セイ……」

「セイのママ、ごはんおかわり!」

「あらあらよく食べるわね、はいどーぞ」

 冒険者への道もあっさりと決まり、ブルーム家の食卓はにぎやかに続くのだった。



 その夜。
 俺が自分の部屋で寝ていると、コンコンと窓を叩く音が聞こえた。

「んにゃ……?」

 寝ぼけ眼をこすり窓のそばに行く。するとそこには見慣れない少女が立っていた。長い水色の髪をしていて顔はかわいらしく、背は高いが服装は昼間の父さんに負けないくらいのフリフリだ。

「あ、あの、セイさん……ですよね?」

 少女はおずおずと確かめる。

「ああ、俺がセイだけど……どうしたんだこんな時間に、何か用?」

「その、お願いがあって……」

「お願い……まあ、入んなよ」

 俺は窓を開けて少女を室内に迎え入れた。お願いがあると訴える少女の瞳に、ただならぬ真剣な気配を感じ取ったからだった。
 少女は俺の部屋に入ると、いきなり頭を下げた。

「その、僕、トオイって言います。お願いしますセイさん、僕を、女の子にしてください!」

 少女からのお願いに俺は面食らう。そしてはっと気が付いた。

「ひょっとして君……男の子なの?」

「はい……」

 トオイはどう見ても見た目は女の子だったが、実は男らしい。いわゆる男の娘という奴だ。顔もかわいかったからまったく気が付かなかった。

「昼、ここのお店の看板娘をやっている人を見かけて、中にいた店員さんに、それがスキルの力で変化した元男だって聞いたんです。それで、そのスキルの持ち主だっていうあなたが帰ってきたって聞いたから、居てもたってもいられなくて……」

「なるほどな……待てよ、君、女の子になりたいのか?」

「はいっ!」

 トオイは強い視線で頷いた。なるほど、そういう人もいるのか。

「スキルを使うくらいは俺にすればお安い御用だけど……言っておくけど、一度スキルを使うと今のところ戻す方法はないぞ。それでもいいのか?」

「もちろんです! 僕、女の子になりたいんです。ずっと女の子に憧れてて、服も髪型も、ずっと女の子っぽくしてきました。でもやっぱり違うんです、本物の女の子とは……お願いです、女の子になれるなら僕なんでもします!」

 強くせがまれて俺は少し面食らった。俺の周囲の人間といえば俺や父さん、マットをはじめ【美少女化】を嫌がる人間ばかりでなんとかして戻ろう戻ろうとしている。トオイのような自分から【美少女化】しようという人間は初めてだった。

 だが考えていればそういった願望を持つ人間にとって俺のスキルは夢のような存在なのだろう。普通は一生叶わない願いを、一瞬の内に成就させてしまうのだから。

「わかった、引き受けよう」

「ほんとですか! ありがとうございます」

 特に断る理由もないので俺はトオイの願いを聞くことにした。一種の人助けである。

「それでその、できれば顔はもうちょっと小顔で目は大きめ、背は一回り小さくして、胸は小ぶりだけどたしかな存在感があって、全体的には今と同じ感じでお願いします! 体つきは女の子っぽく!」

「お、おう……じゃあ行くぞ」

 まくし立てるトオイに少し驚きつつ、俺は手をかざしスキルを使った。これまで何度も使ってきたのである程度加減はわかっている。
 トオイの体が光に包まれ、その光が消えると、女の子に生まれ変わったトオイが立っていた。といっても少し小さくなって顔がやや変わった程度で、俺からすればほとんど変化がない。もちろん、大事な部分は大きく変化しているはずだが。

 トオイ本人にもそれは感覚でわかったのか、【美少女化】した途端トオイの顔はパアっと明るくなった。

「やった! 僕、ついに本物の女の子になったんだ……! ありがとうございますセイさん、なんとお礼を言ったらいいか!」

「いいっていいって。もう夜遅いんだし、気を付けて帰りなよ」

「はい! 本当に、ありがとうございました!」

 トオイはその後何度も頭を下げてから、嬉しそうに去っていった。
 その後姿を窓から見つつ俺は考える。

「ああいう人間もいるんだな……」

 考えたこともなかったが、俺の【美少女化】を望む人間も世界に入るのだろう。トオイのような趣味の持ち主もそうだろうが、母さんのように若返りを望む女性、あるいは成長を望む女子、ひょっとしたら顔かたちを変えたいお尋ね者とか……そういったものにとって俺のスキルは唯一無二の価値になる。

「これ……金になるんじゃないか?」

 俺はいやらしい笑みをしていたことだろう。だが実際上手く使えばスキルだけで巨万の富を築くことも不可能ではないかもしれない。俺の夢であるハーレムを作るにはまず金がいる、それは画期的な発想だった。

 とはいえまずは冒険者になって基盤を固めることに変わりはない。夜遅いのもあり、俺はひとまず寝床に戻るのだった。

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