なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第11話 冒険者ギルド

 ベナスの街。クローバーの街からさらに東に行ったところにある大きな街。
 冒険者ギルドはそこにある。



 ベナスの街に辿り着いた俺らは、その中心にある建物を見上げていた。

「おおー……」
「これが……」
「ギルド、という奴か」

 俺、マット、神官様、フェン、ルナル、あとモンチーの5人組は揃いも揃ってその巨大な建物をぽかんと見ていた。
 ギルドはとにかく大きな建物だった。横にも上にも大きく広く、高々と掲げられたギルドの看板の下、冒険者と思しき大勢の人間が行き交っている。俺らのいた村ではけして見られない光景だった。

「いよいよ冒険者だ! みんな準備はいいな?」

「ああ。といってもまだあんま実感ないけどな」

「ワシもよく知らんからのう、任せる」

「おれはセイがいいならいいぞ!」

「ふふん、この天才美少女魔術師がいればどうってことないわよ」

「ルナル足震えてるぞー」

 いまいちまとまりのない我がパーティだが、ここまで来てやめるわけがない。この冒険者ギルドこそが俺の夢、美少女ハーレムへの第一歩なんだ。

「行くぞ!」

 俺らは意気揚々とギルドへ踏み込んでいった。



 大勢の人間が行き交う冒険者ギルド。俺らはまず、受付に来ていた。

「はい! 初めまして、新米冒険者さん! まずはこちらで登録してくださいねー」

 受付にいたのは綺麗な女性だった。リボンのついた水色の制服を着て、受付に座りにこやかに笑っている。きれいにまとめられた髪や整ったメイクなど、しっかりした大人といった感じの女性だ。
 だが何より目を引くのは、受付の台の上に乗せられているそのたわわな胸であった。制服がぴっちりした感じなのもあって強調されており、俺は目を離せなかった。

「おい見ろよマット、お前のよりでかいんじゃないか?」

「いや、大きさは俺の方が……だがあの存在感は……」

「どれ」

「んんっ! ひ、人前で触るなこのバカ!」

 マットにどつかれる俺。受付の女性はくすくす笑っていた。

「仲がいいんですね。女の子パーティなんですか?」

「えー、まー、そうですね」

 正しくは男3女1狼1猿1だが、言ったところで信じてもらえるかは怪しいので黙っておく。

「遅れましたが、私はシオナって言います。このギルドで総合受付を担当しております、以後よろしくお願いしますね。皆さんはギルドに登録を希望される方でよろしいですか?」

「はい! よろしくお願いします」

「わかりました、では登録の手続きの前に、当ギルドについて説明しますね」

 受付の女性、シオナさんは説明を始めた。

「当ギルドでは登録された方を冒険者と呼び、ギルドを通じ様々なサポートをさせていただいてます。お仕事の紹介を基本として、様々な情報提供や、ベナスの街に住む場合は住居の提供なんかも行っているんですよ。ギルドでは冒険者さんをいくつかのランクに分けて、それに応じた仕事のご紹介や住居の提供をしています。Sランク冒険者になれば、たっくさんのサポートとお仕事が受けられますよ! がんばってくださいね」

 冒険者のランク分けは冒険者ギルドではメジャーなシステムだ。Sランク冒険者になれば地位も金も潤沢に手に入る、冒険者は皆そこを目指している。もちろん俺らもそうだ。

「では登録の手続きに移ります。皆さんはパーティでの登録でよろしいですか?」

「はい、たぶんこれから増えますし」

「うふふ、頼もしいですね。ではパーティの代表者さんのステータスを確認させていただきます。代表はあなたですか?」

「え、ああ、はい」

「では失礼して……よいしょ」

 シオナさんは壁に立てかけてあった杖を持ち出すと俺に対して振るった。すると杖から光が放たれ、空中に俺のステータスが表示される。
 そして案の定、シオナさんの目はスキルのところで止まった。

「【美少女化】……? スキル強度、SSS+++! ひええ」

 冒険者ギルドの受付として無数の冒険者のスキルを見てきたであろうシオナさんも、俺のスキルには驚きを隠せなかったらしい。たまたま近くにいた人間も同じように驚いていた。

「す、すごいですねえセイちゃん! こんな強度初めて見ましたよ! それになんですかこのスキル? びしょうじょか?」

「えーと、まあちょっと特殊なスキルなんですよ。とにかく強力な奴なんで、これで仕事をこなしていくつもりです」

「はあ、まあスキルは色々ですからね。とりあえず登録、と」

 シオナさんは取り出した特殊な紙に杖を向ける、すると表示されていたステータスがそのまま紙に焼き付いた。さすが冒険者ギルド、色々とすごい技術があるものだ。

「これで初期登録はOKです」

「え、もうですか?」

「はい。でも大事なのはここからです、よっ!」

 シオナはごそごそと机の下をいじった後、大量の書類の束をどさっと置いた。その量に俺らは思わず圧倒される。

「ここにあるのはお仕事の依頼書です。色んなとこから色んな依頼が来ていて、その内容も難易度も様々! 皆さんにはこの中からひとつ、依頼をクリアしていただきます! それで初めて冒険者として正式登録ができるんですよ」

「なるほど……試験ってわけですか」

「そんな感じです、といってもクリアする依頼はどれでもいいので、形式的な感じですね。たとえば迷子の猫ちゃん探しとか、ちょっとしたおつかいとかでもいいんです」

「うーん……どれにしようかな」

 俺はまとめられた書類の束を適当にぺらぺらとめくる。たしかに内容は千差万別、簡単なものから明らかに危険なものまで様々だ。
 だがそんな中で、俺はある依頼に目を留めた。

「ミスリル山……ドラゴン討伐?」

 それは魔物の討伐任務だった。あっ、とシオナさんが声を上げる。

「ダメですよ、ドラゴン討伐はかなり危険な任務です! 新米冒険者の方にはおすすめできません」

 シオナさんは俺らを心配して声を掛けてくれているようだったが、たいして俺の心は傾いていた。ミスリル山といえばここからそう遠くない、危険な分報酬もなかなかなのでおいしい。そして何より、魔物1体を討伐するだけの任務ならば……俺のスキルがあれば一瞬で終わる。
 俺はちらりとフェンを見た。人間の数倍の巨躯を誇った魔物狼は今、元猿の少女ときゃっきゃと戯れていた。

「よし、これにします! ミスリル山のドラゴン討伐!」

 俺は決断した。シオナさんが目を丸くする。

「ほ、本当にいいんですか? 本当に危険ですよ? 初めは無理せず、こっちの卵集めとか……」

「いいんです、俺のスキルがありますから!」

「な、なるほど、スキル強度SSS+++……でも、うーん。しかし、冒険者様の意向が第一の我がギルド、無理に引き留めはいたしません! でも危なかったらすぐ帰ってきてくださいね、何度でも受け直しはできますから。それと行く前には十分に準備して……」

 シオナさんが心配してあれこれ注意してくれていたときだった。

「オイオイオイ! 待て待て待て」

 突然、後ろから声と共に妙な気配がする。振り向くと、身長2m以上は確実にある大男がマットたちをどかしながら俺に迫ってきた。

「その仕事は俺が受けようとしていたんだぜ! 新入りの小娘はすっこんでな、どうせ竜のエサになるのがオチだろうしよ! ガハハ! ガハハ! ガハハ!」

 髭を生やした大男は酒瓶を煽りながら豪快に笑った。その言いぐさに俺がむっとすると、男は目ざとくそこを指摘する。

「なんだなんだなんだ? なんか言いたいのか? いいか、冒険者ってのは女の子のママゴトじゃねえんだぜ! 仲良し女の子グループは来る場所間違ってる! まっ、夜の任務なら客をとれるかもなぁ! ガハハ! ガハハ! ガハハ!」

 大男は顔を近づけると俺を小突いて倒した。どさくさで胸にまで触るセクハラっぷりに、さすがの俺も頭にきた。

「おいオッサン! そんなに言うからには、あんた俺より強いんだろうな」

「ああ? オイオイオイなんだその喋り方? 男のつもりかあ?」

「いいから答えろよ、まさか俺より弱いのに、それを隠したくて言いたい放題してるってこたないよな?」

 後ろでシオナさんがなだめようとしているが無視する。大男の方も穏便に済ませる気はなさそうだ。

「おうおうおう! 言ってくれるじゃねえかメスガキ! 常識でものを考えろ、あんたより俺が弱いってことがありえるのか? ないないない!」

「じゃあ、今ここで俺と戦っても勝てるよな? ルールは簡単だ、先に尻餅をついたら負け! もし俺が負けたらなんでもしてやるよ」

「おうおうおう! 言ったな? 今更撤回が聞くと思うなよ? オラオラオラッ!」

 大男は有無を言わさずにいきなり襲い掛かってきた。不意打ちでもって力ずくで押し倒そうというのだろう、どこまでも品のない男だ。
 俺も遠慮をせずスキルを使った。

「おらおらおら! 倒れな生意気女……あれ?」

 巨大な体格で俺に襲い掛かってきたはずの大男は忽然と消え、そこにいたのは俺の腰辺りを必死に押して倒そうとする幼女。

「えいっ」
「わっ」

 俺はその幼女をちょっと強めに押し、あっさりと幼女は尻餅をついた。

「俺の勝ちだな。俺はなんでもするって言ったんだ、あんたにはしばらくそのままで過ごしてもらうぜ?」

「な、な、な、なんだなんだなんだこれぇ!? ひ、ひいいっ」

 元大男の幼女は突然のことに慌てふためき、逃げるように去っていった。フフンと俺は勝ち誇って鼻を鳴らしたが、周囲が呆然とした目で俺を見つめていることに気付く。

「あれがセイちゃんのスキルなんですね……ゴレムさんが、あっという間に……」

 シオナさんもぽかんとしている。しまった、少し派手にやり過ぎた。

「と、とにかくシオナさん、この仕事は俺らが受けるんで! いいですよね?」

「は、はい。よろしく、お願いします?」

「この紙もってけばいいんですよね! では!」

 俺はひったくるようにしてシオナさんの手から依頼書を受け取り、仲間と共にその場を後にするのだった。

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