なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第9話 魔術師ルナル

 魔術師少女ルナルの家は街の南にあった。ゴズと違いごく普通の一軒家である。中も広めのごくありふれた木造で、わりとすっきりとした感じだった。

「話はだいたいわかったわ」

 ルナルは俺らと対面して座り紅茶を飲みながらため息をついた。その横では元猿の美少女、モンチーが嬉しそうにバナナを食べている。

「でも私の相棒のモンチーまで【美少女化】するなんて!」
「ご、ごめん、てっきり野生かと思ってさ……こいつみたいに面倒みればいいかなと思ってたし」
「ぐるる……サルはきらいだ、変な臭いがする」
「うきゃ? オレは別に犬もきらいじゃないぞ?」
「オオカミだおれは! うがー!」
「落ち着けフェン」

 モンチーと喧嘩しそうになるフェンをなんとかなだめる。ちなみに席が足りないのでフェンは床に座り(というか椅子に座るのが苦手らしい)、神官様はマットの膝に乗っていた。マットの胸がいい背もたれになっていて目に毒。

「でもあんたもあんただろ、相棒っていうならちゃんと見張っとけよ!」
「そ、それはごめんなさい。この子ったらすばしっこくて、いつも家を脱走しちゃうのよ。ダメよモンチー」
「だって遊びたくてさ! 家ん中は飽きたよルナルー」
「そういう理由だったのね……モンチーと話してるなんて変な感じ。動物もこんな簡単に人間にしちゃうなんて、本当にとんでもないスキルね」

 ルナルの言う通り、恐ろしいスキルだと思う。今この家にいるのは一見全員少女だが、実際は俺とマットは冴えない男、神官様はお爺さん、フェンは狼でモンチーは猿、少女はルナルだけだ。
 そういえばルナルの家にはルナル以外の姿が見えない。どうしたのだろうか、と思っていると同じ事が気になったのかマットが尋ねた。

「ル、ルナルさん、この家には……あなたしか住んでないのか?」

 すっかり忘れていたが相変わらず女子と面と向かって話すのは苦手らしい。元男とわかっていれば違うようだがルナルは純正美少女だしな。

「ええ、私の他はこのモンチーだけよ。私の両親は冒険者でね、滅多に帰ってこないもんだから、15歳になった時に一人暮らしを始めたの。私1人でも十分に暮らせるしね」
「収入とかはどうしてるんだ?」
「もちろん私が稼いでるのよ、私のスキルは【魔力の極意】のA+! それ以前から魔法の勉強もしてたからね、若くても立派な魔術師よ」

 ルナルはどや顔でフフンと鼻を鳴らした。たしかに魔術師系の中でもオールマイティに使える【魔力の極意】の上位強度なら魔術師としては十分すぎる能力だ。

「それで解呪魔法ディスペルだったわね。そのスキルを解除したい、と」
「できるのか?」
「もちろんよ、この天才美少女魔術師に任せなさい! ちょっとそこ立って」

 自信満々なルナルは俺を適当なところに立たせると、壁に置いてあった本棚から一冊の本を取り出すと開いて小脇に抱え、俺に手をかざした。

「フ・ルコ・ディ・ク・ティ……解呪魔法ディスペル!」

 魔術書を読み上げて魔法を放つ。するとルナルの手から水色の光が溢れ出し、俺の体を包み込んだ。おお、とマットや神官様も声を上げ俺の体に注目する。
 ようやくこれで男の体に戻れる。俺はほっと一息つきつつ待った。
 ――が、いつまで待っても俺の体に変化が起きる気配はなかった。

「……あれ?」

 ルナルが首を傾げる。

「お、おいルナル、どうなってるんだ?」
「ちょっと待って! そんなはずは……フルコディクティ! 解呪魔法ディスペル! 解呪魔法ディスペルっ!」

 ルナルは何度も魔術書を確認し魔法を使い、その度に俺の体を光が包む。だが相変わらず俺の体には変化がない。
 しばらくルナルはそうしていたが、やがて息を切らしながらへたってしまった。やはりダメだったようだ。

「そ、そんな、この私の魔法が通じないなんて……」
「やっぱりただの解呪魔法ディスペルじゃダメか」
「ええ……自分で言うのもなんだけど私は魔術師としては優秀な方よ、天才美少女魔術師の肩書は伊達じゃないわ! 解呪魔法ディスペルだってちゃんと使ったもの。それでもダメとなると……いえ!」

 ルナルはぶんぶんと首を振り、急に立ち上がった。

「これしきで諦めちゃ天才美少女魔術師としてのプライドが許さないわ! きっと何か方法はあるはずよ! セイって言ったわね、あんたしばらくここに住みなさい! 近くで色んなことを試すの! 私の手で元に戻すまで許さないわ!」
「そ、そう言われてもな」

 元に戻すことに熱意を持ってくれるのはありがたいが、俺らにも色々と予定、そして夢があるのだ。まずはハーレムを築く地盤固めのために冒険者ギルドに所属して……待てよ。

「そうだルナル、俺らはこれから冒険者ギルドに登録して冒険者になるつもりなんだが、いっそお前も仲間にならないか?」
「え? 冒険者ギルド……?」
「ああ。そうすればしばらくいっしょに行動できるし、俺が元に戻るまでつきっきりで研究できるぞ。俺らとしてもパーティにお前みたいな優秀な魔術師がいてくれると心強い」
「私が、冒険者……」

 ルナルは考え込んでいるようだった。さっきちらりと両親が冒険者と言っていたし、興味がなかったわけじゃあないのだろう。どの道ルナルによる解呪魔法ディスペルがダメなら他に手がかりはないので、まずは冒険者になって情報を集めるつもりだったし。
 ただ少しルナルは妙な反応を見せた。

「……冒険者パーティといっても色々種類があるわ。あんたらどんなパーティを作るつもりなの?」
「え? どんな、と言われても……」
「たとえば、そう、構成メンバーよ。この先メンバーを増やすとして、どんな感じで増やしていくの?」
「そ、そうだな……たとえばだが、このフェンみたいに魔物を【美少女化】しちゃったら、それを加えて……」
「つまり美少女パーティってことね?」
「ま、まあ、そうなるな」

 ルナルの方から言われると思っていなかったが、俺の最終目標は夢の美少女ハーレムなので、冒険者パーティも美少女だらけにするつもりだった。
 すると。

「美少女パーティ……美少女だらけの、冒険者生活……ふひひ……」

 ふひひ? 俺たちが怪訝な顔をしていることに気付くとルナルはハッとなる。

「な、なんでもないわ! ま、まあ、私の魔術師としての沽券にかかわることだし? パーティに加わってあげるわ! 天才美少女魔術師が仲間になるんだから感謝しなさい!」

 何か妙な気配はあったが、ともあれルナルは仲間になってくれそうだ。やった、と俺とマットは手を叩いて喜んだ。

「のうセイ、冒険者ギルドとはなんじゃ? ワシ、聞いておらんのだが」
「ああ神官様には言い忘れてましたね、無理に参加しなくてもいいですけど、ギルドっていうのは……」

 とその時、ふいにルナルの家の戸が乱暴に開かれた。

「オイ! ルナルはいるか、このインチキ魔術師が!」

 現れたのは見るからにガラの悪い男だ。屈強な体格で、聞きもせずにルナルの家の小さな戸をくぐり押し入ってくる。それを見てルナルは慌てて男の前に立ち塞がった。

「なによあんた、昨日の客じゃない。インチキってどういうことよ」
「てめェ、俺にモテモテになる魔法をかけてくれたんじゃなかったのか? あれから何人もの女に俺のモノになれって誘ってんのにことごとく断られたぞ! インチキ魔法使いやがって!」
「私がかけてあげたのは印象がよくなる魔法で、無条件にモテるようになるわけないでしょ? 乱暴な迫り方したら魔法の効果よりもあんたへの嫌悪感が勝るわよ!」
「知らねえよそんなの! いいから金返せ! 全部だ!」
「嫌よ! 自業自得でしょ!」

 どうやらトラブルがあったらしく男とルナルは口論を始める。突然のことに俺らはただ見守るしかない。

「うるせェ!」
「きゃっ」

 男はルナルを突き飛ばした。かなり強い力で突き飛ばしたのかルナルはそのまま壁にぶつかりうずくまってしまう。さすがに見過ごせず俺も立ち上がる。

「おいあんた、そこまでにしとけよ」
「ああ!? 黙ってろクソガキ!」

 完全に頭に血が上った男は俺にも手を上げようとしてきたので、仕方なく俺も正当防衛をすることにする。
 男が光に包まれ、晴れた。

「このぉ! あ、あれ?」

 俺を突き飛ばそうとした手があっさりと受け止められる。男は15歳くらいの女子になっていた。見た目はイケメンっぽい中性的な感じだ。

「大サービスでイケメン女子にしてやったぞ、きっとその方がモテるだろ。わかったら出てけ!」
「く、くそっ」

 俺が強く命令すると元男の女子は強く出られず、逃げるように去っていった。【美少女化】した相手はある程度俺に従うようになるのだ。
 その頃、背中を打ち付けたルナルがなんとか立ち上がる。

「大丈夫かルナル?」
「ええ、なんとかね。それにしてもすごいわねそのスキル、本当になんでも、一瞬で女の子にしちゃうのね」
「ああ、戻せないのが難点だがな」

 改めて俺を見たルナルは、小声で何かを呟いた。

「そのスキルがあれば、私の夢の美少女ハーレムも……」
「え?」
「な、なんでもないわ!」

 ルナルは慌てて首を振る。どうもおかしなところがある奴だ。
 何はともあれ俺らは魔術師ルナルを仲間に加え、夢に一歩前進したのだった。

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