なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第5話 ごろつき

 俺たちは森を進んでいた。ただし少しの変化があった。

「くぅーん、セイ、好きだ!」

 俺のそばにぴったりと張り付いて俺の頬を舐める褐色少女。俺らを食べようとしていた狼の魔物を【美少女化】したものだが、文字通り牙が抜けてしまっていた。
 俺が命の危機を感じてこの狼を【美少女化】した後、腹が減っているようだから持ってきた弁当を食べさせてやったら、あっさりと懐いてしまったのだ。

「すっかりセイに懐いてるなそいつ」
「ああ、まさかおにぎり3個でこんなにコロっと懐くとは……そんなにうまかったか?」
「うん! 食べことない味だった! おにぎり、好きだ!」
「そうかそうか」

 俺が頭を撫でてやると狼少女は嬉しそうに鳴く。挙動は狼というより犬のそれだ。しかも体は女の子なので密着されてることもあり少しドキドキする。

「ふうむ、どうやら味覚なんかも人間準拠になっておるようだな。魔物がいきなり人間用の食物を口にしたのだ、ショックは大きくて、その反動でデレデレなんじゃろな」

 神官様が冷静に分析する。なるほどな、と思いつつ、顔を舐めてくる狼少女をたしなめた。

「でもセイ、こいつどうするんだ? もう狼として狩りとかできないんだし、放っといたら死んじゃうぞ」
「それなんだよな……【美少女化】した責任もあるし連れてくしかないだろ。餌付けしちゃったのもあるし」
「うん、おれはセイについていくぞ! ご飯食べたい!」
「うーむ、思えばこうしてハーレムを作っていくと食費だけでもかなりかかるな。ハーレムにはまず金がいるか」
「なに、ハーレム?」
「なんでもないですよ神官様。ところでこいつに名前がないと色々不便ですよね、神官様つけてくださいませんか?」

 神官様は神様に繋がるものとして命名を頼まれることは多い。実は俺とマットの名前も神官様がつけたのだ。
 それにあやかって狼少女の名前を求めつつ話題を逸らした。温厚だが厳しいとこもある神官様にハーレムを企ててるなんて知れたら面倒なことになる……できれば神官様にもハーレムに加わってほしいけど。

「それもそうじゃな……ではフェンでどうじゃ。狼を意味する言葉じゃ」
「だそうだが、お前はフェンでいいか?」
「セイがいいならいいぞ! おれはフェン!」

 狼少女改めフェンはぶんぶんと尻尾を振って喜んだ。なんだかペットができたような気分だ。
 ともあれ、フェンを仲間に加えた俺らはクローバーの街へと向かうのだった。



 普段より少し時間はかかったが、やがて俺たちはクローバーの街へ辿り着いた。
 クローバーの街は田舎と都会の中間のような街で、たくさんの店がある繁華街だ。俺らもたまに遊びに来る。
 だが今回この町に来てもっとも心が躍っているのは、神官様だった。

「おおお……!」

 クローバーの街の中心部にある商店街を見て、神官様は目を輝かせていた。文字通り子供のようにうきうきとして。

「すごいな、これがクローバーの街か! いろんな店があるぞ、見知らぬものもたくさん売っておる! 人も大勢じゃ」
「神官様、クローバーの街来たことないんですか?」
「ああ、神官は神に全てを捧げるのが仕事じゃからのう、神殿から出たのすら何十年ぶりになるやら」
「俺らが生まれる前からずっと神殿暮らしだったのか……俺だったら耐えられないな」

 何十年も神殿にこもりっきりで外の世界を知らなかった神官様の目には全てが新鮮に映っているのだろう。無邪気な子供のように、というか子供そのものな見た目ではしゃいでいた。

「の、のう、魔術師を探すのも、そう急ぐ必要はないじゃろ? ちょっとここを見ていかんか?」

 俺の服を引っ張って懇願する神官様。すぐにでも駆け出しそうにうずうずしているようだ。
 しかしそんなかわいい姿を見ればつい意地悪したくなるのが男というもの。俺はわざと手でバツを作った。

「ダメですよ神官様、何のためにこの街に来たと思ってるんですか、遊ぶためじゃないんですよ」
「そ、そうかのう……」

 しゅんと落ち込む神官様。かわいい。かわいさに耐え切れず、俺はすぐに手の平を返す。

「冗談ですよ神官様、ゆっくり見ていきましょう。付き合いますよ」
「ほ、ほんとか! じゃあまずはあの店を見てみたいぞ!」

 許可が出るやぱあっと笑った神官様、俺たちを待たずに真っ先にとてとて駆けていってしまった。もはや仕草まで完璧に子供で、俺はひたすらほっこりしていたがマットは少し驚いていたようだ。

「な、なあ、神官様心まで子供になってないか? お前のスキルって心までは変えないんだろ?」
「そのはずだけど……やっぱり体が子供だとはしゃぎたくなっちゃうんじゃないか? ほら、服装次第で気持ちが変わったりするだろ?」
「そんなもんかな……ま、楽しそうだしいいか」

 とその時、また俺は服を引かれる。
 相変わらず俺にべったりのフェンがなぜか不安そうな顔をしていた。

「セイ、本当におれ街に入っていいのか? 矢でうたれたりしないか?」

 魔物だった頃に街に入ろうとして追い払われたことがあったらしくそれを気にしているようだ。凶暴に見えたがかわいいところもある。

「大丈夫だよ、今は俺たちと同じ人間だからな。誰もお前を攻撃したりしないって」
「うー、でもセイ、なんか周りの人間がジロジロおれを見てるぞ」
「え?」

 言われてみれば確かに道行く人が俺らに視線を向けているようだった。そのどこか気まずそうな視線を追った俺は理由に気付く、フェンの格好だ。
 フェンは野生児っぽく胸と股の辺りだけを隠した毛皮のような服を着ていて、それ以外は褐色の肌が露出している。靴もはいていない。たしかに街中で美少女がこんな格好をしていては目を引くだろう。

「よしフェン、お前の服を買うことにしよう。そうすればもう変な目で見られないぞ」
「服? 新しい毛皮か?」
「そんな感じだな。人間の常識はある程度スキルの効果で身についてるみたいだな」
「うん、知らないことがいっぱい頭の中にあるぞ! おれやっぱり人間なんだな!」
「そうだな、しかしとんでもないスキルだな改めて……」

 フェンと話していると、遠くから神官様が手を振って呼んでいた。珍しいものを見つけてはしゃいでいるらしい。ほとんど子守だなと苦笑しつつ、俺らは神官様の方へと向かった。



 その後は神官様に連れられていろんな店を見て回った。店を訪れる度に神官様は目を輝かせていた。

「セイ、これはなんだ! 不思議な形をしておるぞ」
「それは『竜回し』ですね、子供のおもちゃです。こんな感じで飾りの竜が回るんです」
「お、こっちはなんだ? きれいな色じゃな」
「遠い地方の織物ですね、たくさんの糸を複雑に織って作るんだとか」
「あっちにもおかしなものがあるぞ! 知らぬものばかりじゃ」

 テンションが上がっているのもあるだろうが、神官様ははしゃぐ子供そのものだった。俺としてははしゃぐ美少女に振り回されるのは悪い気分なわけはなく、神官様に付き合って色々見て回る。お店の人も天真爛漫な子供に微笑ましい目を向けていた、彼らは神官様のことを間違いなくただの女児と見ていたに違いない。フェンも同じく人間の品物には興味津々だった。
 そうして見て回っていると服屋を見つけたので、フェンの服を買ってやることにする。

「神官様、俺らフェンの服を買おうと思うんですが……」

 そう声を掛けたが、神官様は雑貨屋の呪いの品に夢中で聞いていないようだった。

「仕方がないな、すぐそこだし俺らだけで行くか。マットはどうする?」
「俺もちょっと服見たいな……姉貴のなんだけどいまいちサイズがあってないみたいでさ」
「ああ、その胸じゃあな……姉貴さんが聞いたら怒るだろな。まあいいや、行こうフェン」
「うん!」

 俺らは神官様を置いて服屋の方に向かった。
 神官様に怪しげな男たちが近づくことに気付かずに。



 セイたちが服屋に入ってしばらくして。

「やあお嬢さん、お店は楽しいかい?」

 雑貨店を見ていた神官は始めそれが自分に掛けられた声だとは気付かなかった。ふと顔を上げ、3人の男が自分を見ていることに気付くと、ようやく話しかけられているのだとわかる。

「そうか、今のワシはお嬢さんか……うむ、物珍しくてな、楽しく見ておるよ」
「そうかいそうかい。実は俺らも商売やっててさ、ものすごく珍しいもの売ってるんだ。ちょっと見ていかないかい?」
「おお、それはありがたいの。ぜひ見せてくれ」
「わかった、じゃあこっちだ」

 どこか人相の悪い男たちは神官を連れて雑貨店を出て歩いていく。道中密かに3人で神官を囲うようにして逃げられなくしていた。
 そうして男たちが神官を連れて行ったのは、ひと気のない路地裏の袋小路だった。

「む? 何もないようじゃが……」

 不思議に思った神官が振り返った時には、にたにた笑う男たちによって道は塞がれていた。

「店なんてねえよ。へへっ、まんまと騙されやがった」
「兄貴、子供を狙うのは正解でしたね!」
「もう逃げられねえぞぉお嬢ちゃん?」
「お、お主ら、まさかワシをたばかったのか!?」

 騙されたことに気付いた神官だったが時既に遅く、少女の体では逃げようがなかった。

「やっぱりその服、神職以上が着る上等な奴だぜ。その妙な喋り方も位が高いからなのかもしれねえしな」
「兄貴流石っす! そんな子供が1人でうろついてたのもラッキーだったっすね!」
「安心しろよぉちょっと服貰うだけだからなぁ」

 男たちがじわじわと神官に迫る。

「や、やめろ、よせ、近寄るでない……」

 神官は後ずさったがすぐに袋小路に背がついてしまい、涙目で震えるだけだった。はしゃぎすぎて自分の体も忘れ、こんな盗人たちにのこのこついて行ってしまった己を恥じた。

「待てーッ!」

 しかしその時、男たちの後ろから声が響いた。



 神官様が襲われそうになって間一髪、俺らは間に合った。ある程度元の体の能力は残っていたらしく、フェンが匂いを辿ってくれたのだ。

「なんだてめぇ?」
「兄貴に逆らおうってのか?」
「容赦しねぇぞぉ」

 3人組がガンを飛ばす。目付きの悪い男、小太りの男、筋肉質な巨漢。その奥で神官様が涙目になっていた。
 容赦しないのはこちらの方だ。いたいけな美少女(ほんとは老爺だけど)を騙して服を盗ろうなんて輩には反省してもらわなくちゃならない。

「これでも喰らえッ!」

 俺はスキルを発動した。強度SSS+++のスキルから逃れるすべはない。

「うわっ!?」
「あ、兄貴ぃ!?」
「なんだぁ!?」

 あっという間に3人組は光に包まれ、やがて光が消える。

「やってくれたな……なんのスキルか知らねえが、女なんかに俺が負けるわけ……!?」

 ガンをつけようとしてきた『兄貴』が硬直する。自分の体に気付いたのだろう。
 ガラの悪い男は、オーバーオールを着た幼女になっていた。

「あ、兄貴ぃ!? 兄貴なんですかい?」
「なんじゃぁこりゃぁ!?」

 残りの2人もそれぞれ【美少女化】だ。あえて兄貴よりも年上で、かたやツインテールかたや三つ編みといういかにも女の子らしいものにしてみた。

「な、なんだこれ、俺の体が……!? てめえ何しやがった!」

 元兄貴が掴みかかってきたが、力も見た目相応なので俺はあっさりと振り払った。

「うーっ、がうッ!」
「ぎゃー!? ひ、ひいっ」

 さらにフェンに噛みつかれて、元兄貴の幼女は大慌てで逃げていった。

「ああっ、兄貴!」
「待ってくれよぉ!」

 その舎弟の2人も兄貴を追って去っていく。傍目には仲良し3人姉妹といった具合だった。

「神官様、大丈夫ですか? お怪我ないですか?」
「ああ、なんとかな。ありがとうセイ、よくここがわかったな」
「フェンが教えてくれたんですよ。フェンもありがとうな」
「ああ、お礼のご飯くれ!」
「わかってるって」

 俺らはほっと息をついて談笑する。幸い何かされる前で神官様にも傷ひとつなく一安心だ。

「なあセイ、あいつらどうするんだ? あのままでいいのか?」
「ん、いいだろ別に、生きていけないわけじゃないだろうし、因果応報だよ。美少女にしてやったんだから感謝してほしいくらいだ」
「やれやれ……少し同情するよ」

 3人組のこれからの苦労は相当だろうが、美少女に手を出そうとしたのだから自分が美少女にされるくらいは仕方ないのだ。
 ともあれ俺らは神官様を無事に救い出して、街中に戻っていった。

「なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く