なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第6話 横柄な魔術師

 クローバーの街の服屋で、俺らはフェンの服を買った。

「むー、変な毛皮だ。服だっけ? どっちにしろ変だぞ」

 フェンが着ているのはシンプルなワンピースだった。見た目は美少女でも中身は男所帯の俺らにファッションに詳しい奴はおらず、結局とりあえず体を隠せる奴ということでこれにした。フェンが楽な服を求めたというのもある。

 だが思いの外似合っていた。犬耳を生やし八重歯の出た野生児が、深窓の令嬢のようなおしとやかなワンピースを着ている、そのギャップがぐっと来る。慣れない服にとまどって臭いをかいだり引っ張ったりする仕草も幼さが出てかわいい。

「いいじゃんかフェン、似合ってるぞ」
「そうか! ならいい」

 フェンは犬っぽく素直に頷いた。ちなみに元着てた服はこのワンピースの下にそのまま着ており、尻尾もそこに隠してある。

「まーお似合い! かわいいわねえお嬢ちゃん」

 店のおばちゃんも大喜びだった。というかこのワンピースはこの人が選んだのだ。

「女の子が街中であんなかっこじゃダメよぉ、ほんとはもっとオシャレしてもらいたいんだけどねえ」
「むー、おれは別にどうでもいいぞ。セイが言うから着ただけだ」
「あらあら仲がいいのね、姉妹なの?」
「まあ、そんなとこです。ところで俺たちこの街にいる魔術師さんを探してるんですけど知りませんか? なるべく高名な人がいいんですけど」
「高名な魔術師? うーん、それだとゴズさんかしらね。街の北の方に住んでるわ、変な家だからすぐわかるわよ」
「ありがとうございます! それじゃ俺らはこれで……」

 魔術師の居場所も聞きだしたので俺は店を出ようとしたが、マットと神官様の姿が見えないことに気付く。店を見渡してみると。

「お客様のプロポーションですとこちらとかどうですか? それにこうやってコルセットをつけるとバストがより……」
「え、いや、その、あの、えと……」

 マットは若い女性店員に掴まっていた。女性に話しかけられるだけで緊張する奴は完全に振り回されている。

「おお、こんなものもあるのか。衣服も発達するもんじゃのう」
「うふふ、珍しい? こんなものもあるわよ」

 一方で神官様は服屋の品物に興味津々らしい。結局俺らがこの店を出られたのはそれから30分も後の事だった。



 30分後、俺らは街の北に向かった。

「うう、ひどい目にあった……」
「まあまあマット」

 すっかりくたびれた様子のマットを連れて北へ進む。目指すは魔術師の家だ。

「魔術師の解呪魔法ディスペルで、スキルが解除できれば、いいんだが……そうも、いかんだろう、な……ふう……」
「神官様お疲れですか?」
「うむ……街ではしゃぎすぎたし、歩き通しだからの……」
「俺がおんぶしますよ、一番大きいの俺だし」
「すまんのうマット、お言葉に甘えるとしよう」
「おっ、あれじゃないか?」

 民家もまばらになってきた街の北、見るからにおかしな家が見えてきた。
 一言で言うと丸い。巨大な鉄球を地面に半分埋めたような見た目だ。そして大きい、普通の民家が2,3個すっぽり収まるくらいのボールが地面に埋まっている。見た目はツルンとしているが一応窓や煙突もついている。

「ほんとに変な家だな……大丈夫なのか?」
「魔術師ってそんなもんだろ」
「うー、変な臭いするぞ、セイ」
「まあ何かしらの思惑があるんじゃろ、とりあえず行ってみよう」

 訝しみながらも俺らはそのボール家に向かい、その曲面ドアをノックした。すると、中でどたどたと何かが動いたり崩れたりする音が響く。
 一通り音が響いた後、ドアが開かれた。

「なんだ貴様らは!? 私は忙しいんだぞ!」

 ボール家から首を突き出したのは大部分がハゲた中年の男だった。だぼだぼで小汚いローブを着ており、伸びっぱなしの髭や顔もなんだか小汚い。ついでに家の中からは妙な臭いがして、フェンなどは鼻を抑えて俺の後ろに隠れてしまった。

「あ、あの、魔術師のゴズさんですか? 俺たち、解呪魔法ディスペルを使える人を探してて……」
「知らん知らん! 帰れ小娘どもっ!」

 俺らの話もろくに聞かず、ゴズは乱暴にドアを閉めてしまった。だが。

「だーッ!?」

 あまりに突然にドアを閉めたので、俺は指を挟んでしまった。あっ、とゴズも一瞬申し訳なさそうな顔をする。

「フ、フン! いいから帰れ帰れっ!」

 結局ゴズはドアを閉ざした。俺はその態度にさすがにイラッと来ていた。思いっきり挟まれた指も痛い、美少女の細い指だぞ。

「大丈夫かセイ。おっかないおっさんだな」
「おれが舐めてやるぞ!」
「ううむ、突然の訪問とはいえのう……セイ? どうした?」

 俺は密かにキレていた。神官様の声を無視してもう一度ドアをノックする。今度はすぐにドアが開きゴズのハゲ頭が出てきた。

「何度も言わせるな! 私は……!?」

 すぐにその体が光に包まれた。驚いたゴズが自分の体を見るのと同時に光は強まりその全身を覆った後晴れた。そしてゴズの代わりに現れたのは。
 だぼだぼのローブに身を包んだ、美少女魔術師。ハゲ頭は赤いセミロングヘアに変わり、髭面は色白の童顔に。それでいて体はあえてグラマラスなトランジスタグラマー。童顔とのギャップがすばらしい。

「な、ななな……な!?」

 自分の体の異変に気付きゴズが慌てふためく。俺はしてやったりといった気分でそれを見ていた。

「フフン、これであんたも俺らの仲間だ。嫌だったら元に戻る方法探してくれよ?」

 横柄な態度と指を挟まれた仕返しができて俺は笑っていた。
 が、ゴズは少し様子がおかしかった。

「じょ、女子の……臭い……私が……うーん」

 何やら呟いた後、ゴズはいきなり気を失ってしまった。俺らは慌てて失神した彼女を介抱するのだった。

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