なんでも【美少女化】するスキルでハーレム作ります ~人も魔物も無機物も俺も!?~

八木山蒼

第1話 与えられたスキル 

 俺はその日、神殿を訪れていた。
 その日は大事な大事な『スキル賜与の儀』の日、15歳になった若者が、神様からスキルをひとつ貰える日だ。

 どんなスキルをもらえるのかは実際にもらうまでわからない。もらえるスキル次第で人生が変わるのだから、神殿に集まった15歳の若者たちは皆どきどきしながら自分の番を待っていた。
 すでに儀式はかなり進んでおり、次々と神殿の奥からスキルを受け取った若者たちが帰ってくる。

「どんなスキル貰えた?」
「【戦士の魂】のB。なかなかだな」
「へへ、俺は【剣聖】のA+!」
「マジかよ、大当たりじゃんか。俺なんて【盗賊の極意】だからなー」

 スキルをもらった連中が話している、スキルとは神様が人間がこの世界で生き抜くために与えたものなので、基本的には戦闘系だ。

 俺も自分の番を今か今かと待っていた。1人、また1人と呼ばれていき、待っている若者が減っていく。なかなか呼ばれないので俺の緊張は最高に達していた。
 そしてなんと、俺が呼ばれたのは最後だった。

「セイ・ブルーム。入りなさい」

 神殿の奥から神官様の声が聞こえ、俺ははいと応じどきどきしながら奥に向かった。

 神殿の最奥にはいつもは入れない特別な部屋があり、『神託の間』と呼ばれている。俺らはそこでスキルを受け取るのだ。

 最奥の階段を下ると、不思議な光で満ちた部屋で神官様が待っていた。神官様はでっかいひげを生やした温厚なじいさんで、怒るとおっかないがいつもは優しい。

「ふむ、お主で最後のようじゃな。今回はなかなか豊作だったぞ、【剣聖】【魔術師の秘術】【光の祝福】【暗夜への誘い】【剛拳】……今後が楽しみじゃわい。さ、お主もこちらに立ち、女神様の祝福を受けるのじゃ」
「はい!」

 神官様に導かれて俺は部屋の中心に立った。すると神官様が祈り始め、不思議な光が俺を包む。

「女神イスリエラ様、この者に世を生き抜く力をお与えください……この者の魂に相応しき力をお分けください。ティル・ラ・イスリエラ……」

 神官様が女神様に祈りをささげ、ついに俺にスキルが与えられる。俺はわくわくしながらその瞬間を待った。
 俺は実はスキルに特に拘りはない、とにかくいいスキルが欲しい。容姿も能力もパッとしない俺だが、スキルさえあれば人生を変えられるんだ。そしたらもっと強くかっこよくなって、多少は女子にモテるようになるかもしれない。そうしたら俺の夢が……

 そんなことを考えているとやがて光が晴れ、俺と神官様の頭に直接、そのスキルの名前が伝えられた。
 俺のスキル、その名は。




――【美少女化】。




「は?」
「む?」

 俺と神官様の声が重なった。すでに光は消えていて、スキル賜与は終わっていた。

「び……びしょうじょか? って、聞こえましたけど」
「ワシにも聞こえた。ううむ、神官としてウン十年、様々なスキルを見てきたがこれは初めてじゃ。ちと待て、女神様に聞いてみる。この部屋は与えられたスキルの詳細を見ることもできるからの。イスリエラ様、この者に与えられし力、その仔細をお教えください。ティル・ラ・イスリエラ……」

 神官様が女神さまに祈りを捧げると、信託の間の壁面に文字が浮かび上がった。



スキル名:【美少女化】

タイプ:特殊

スキル強度:SSS+++

・この世にあるありとあらゆるものを少女にすることができる

・人間はもちろん、魔物、物質、条件次第では概念をも対象とする

・このスキルはわずかな服属の性質も持ち、美少女化された対象はスキル所持者に味方するようになる

・変化の際に対象がつけていた衣服等も巻き込む。ただし特殊なマジックアイテムなどはこの限りでない

・変化後の容姿、体格などはスキル所持者によってある程度調整できる

・スキル能力に美少女化の解除は含まれず、またスキル所持者の許可なしで解除はできない

・美少女化は一定条件で永久に固定される。その条件とは




 そこまで文字が浮かび上がった、その時。
 突然、俺の体が光り始めた。

「え、え? し、神官様、なにこれ?」
「こ、これはたぶん……スキルが暴走しておる! 強度SSS+++は強すぎて制御できてないんじゃ! なんとか抑え込め!」
「そ、そんなこと言われても……うわあっ!?」

 突然のことに俺らが慌てふためいていると、光は一気に強くなって神託の間を覆い、俺は思わず目を閉じた。

 やがて目を開いた時。

 そこに神官様はおらず。

 変わって、見慣れない少女が尻餅をついて倒れていた。

 白い髪、白い肌。年齢は10歳くらい。神官様のローブによく似たものをすっぽりと着ているが、尻餅をついているので白いパンツがまる見えになっていた。

「む……ワシは、いったい……? はっ!?」

 少女は慌てた様子で起き上がるとなぜか驚いた目で俺を見つめた。

「お、お主! その姿は! い、いやワシの声もじゃ!」

 いきなり現れて慌てふためく少女……いや、俺もそう頭が悪いわけじゃあない、薄々わかっている。
 スキル【美少女化】が暴走し、俺の内部から溢れだした。その結果どうなるかは想像がつくというものだ。

 実はさっきからずっと重みを感じていたのだ、本来感じるはずのない場所に。
 俺はおそるおそる視線を下に向けて、そこにあった大きな膨らみに手を添えてみた。

「柔らかい……」

 思わずこぼれた声は俺のとはまったく違う、女の子の声だった。

「じゃない! お、俺の体……! そ、そうだ」

 信託の間の周囲には水が流れている、俺は慌ててそっちに行くと水面を覗き込んだ。
 そこに映ったのはごく普通の顔の男、ではなく、黒髪の美少女だった。髪は肩に触れる程度に伸びていて、顔立ちに若干俺の面影があるものの、ほとんど別人の美少女になっていた。

「し、神官様! これって……!」
「ど、どうやらこれがお主のスキルのようじゃな。暴走したためにスキルを持つお主自身とそばにいたワシが【美少女化】されてしまったらしい」

 白髪の少女になった神官様、長いことスキル賜与に携わってきたこの人もさすがに困惑していた。髭の老人が一瞬でこんな美少女になってしまったのだからそりゃ困惑する。もちろん俺もだ。

「や、やっぱり! め、女神様、これどうすればいいんですか!?」

 俺は壁面に向かって問いかけたが、さっきまで浮かんでたはずのスキル説明すらなくなっており、壁はうんともすんとも言わなかった。

「うーむ、最後となるお主がスキルを受け取り終え『賜与の儀』は終了したということじゃな。もう女神様が応えることは来年の儀までない」
「そ、そんな! だってまだ説明途中だったじゃないですか!」
「女神様のことはわからんからのう……ワシらにはどうしようもない」
「無責任だぁ……」

 俺と神官様は頭を抱える。傍から見れば2人の美少女が悩んでいる姿に見えたことだろう、中身はただの男と老人なのだが。
 だがその時、俺はハッと気が付いた。

「待てよ、このスキルを使えば……」

 実は俺には夢がある、それはズバリ美少女ハーレム。たくさんの美少女たちに囲まれた生活は男の憧れだ。もっともそれは夢といっても本当に夢のまた夢のそのまた夢のようなものであり、実現は不可能と思っていた……が。

 【美少女化】をうまく使えば、俺の夢、美少女ハーレムが作れるんじゃないか?

「そうだ、そうだよ。強度もSSS+++だし、うまく頭を使って立ち回ればきっと……ふ、ふふふふっ!」
「ど、どうしたセイ、急に笑い出して。気でも触れたか」
「いえ、神官様! 俺わかったんです、このスキルこそ俺に相応しいスキルだったって! 女神様ありがとうございます、このスキル、大切に使いますね!」

 俺はこのスキルが与えられたのも女神様の託宣だと思うことにした。神様が許しているのだ、ならやるしかないだろう。

「お、おお……なんでかはわからんが、前向きなのはよいことじゃ。与えられたスキルは向き合っていくしかないからのう」
「ええ、もう吹っ切れました。俺はこの力で夢を叶えるんです」

 俺は夢に心を膨らませた。夢があり、神様が許し、そのための力があるんだ。もはや俺を止める理由はない。
 美少女ハーレム、男として誰もが夢見るものを作る!
 男として!
 男と、して……
 男、と……
 …………

「……まずは、元に戻る方法を探さないとなあ……」

 ハーレム以前に俺が女のままでは始まらない。結局俺は頭を抱えるのだった。



 こうして謎のスキル【美少女化】を手にし、同時に自分も美少女になってしまった俺は、夢に向かって動き出した。目標はもちろんこのスキルを活かしたハーレムを作ることだ。
 色々と問題はあるが、色んな意味で美少女で溢れた俺の人生は幕を開けたのだった。


 ――このスキルの本当の意味を理解するのは、ずっと後のことだった。

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