底辺冒険者

あちこち

第四話 その男、やっかいに尽き


イルム王国 マタリア 冒険者ギルド受付ーー

「それでは、こちらの用紙に名前、年齢、スキルの記入をお願いします。スキルのみに置いては、虚偽のないようにお願いします。後ほど、鑑定結晶にてスキルを鑑定させて頂きますので、その点だけよろしくお願いします」

了承の意を頷く事で示し、記入をしていく。名前と年齢に関しては身分を明かせない者や犯罪者、元奴隷などを汲みして偽っても余り差し支えないらしい。まぁ、偽ったところで本名を調べる事など無理に均しい。
記入を続けていき、アルドはある事を思い出した。スキル鑑定をした事がなかったのだ。

「すみません、スキル鑑定を受けた事が無くて、スキルがわからないんです」
「それでしたら、今からスキル鑑定を、行いますので、鑑定結晶に血を一滴垂らして下さい」

互いに、苦笑いを浮かべつつ、アルドは指に針を刺し、結晶に血を垂らすと、結晶に文字が浮かび上がった。すると、受付嬢が驚いた様子で、受付にて待つ様に言われ、奥の方へと行ってしまった。マズい事でもあったのかと、心配していると受付嬢が戻ってきた。ギルドマスターが呼んでいると言われた。不安が現実味を帯びてきて胃が痛くなってきた。そんな事は知らぬとばかりに、受付嬢に部屋まで案内された。部屋に入ると、無精髭を生やした四十代くらいで中肉中背の男がソファーにもたれかかっていた。

「案内ご苦労さま。君は受付に戻っていいよ。アルド君は座ってくれ」

彼がそう言うと、受付嬢が部屋から出て行き、アルドは男の反対側のソファーに座った。

「やぁ、初めまして、僕の名前はルーファス。ここのギルドのマスターをしている。今回、君をここに呼んだのは、スキルに関しての事なんだ」

アルドは不安で胃が更に痛くなるのを我慢しつつ、黙っていた。続けて、ルーファスが

「スキルは合計3つの分類に分けられてるのを知っているかい?一つは、努力や生活で身に付けれるノーマルスキル、剣術や槍術、身体強化、初級魔法なんかがそれだね。二つ目はEXスキルでこれは、ノーマルスキルが進化したり、生れながらに持っていたりするね。謂わば、ノーマルスキルの上位互換だね。剣術から剣聖に進化したり、ね。それで最後に、三つ目のスキルが。DSスキルデストラクション。伝説や神話の登場人物が扱うような、破壊の力。それがDSスキルなんだ」

「DSスキル…?」

「そう。DSスキルだ。世界中でDSスキルを持つ者は六人確認されている。そしてここで問題なんだ。七人目のDSスキルの持ち主が現れた。君がそうだ。君の持っているスキルは合計3つ。ノーマルスキルの身体強化、EXスキルの死地生還、DSスキルの無属性魔法だ。だが、伝説や神話によると無属性魔法は膨大な量の魔力を消費する代わりに国一つを消滅させる程の威力があると云うが、君には魔力を微々たるものしか感じられない。スキルはあるが、それに見合うだけの器が足りない状態なんだ。だから、このDSスキルを隠す様に勧めるよ。ギルド側としては貴重なスキル持ちを懐に収めていたいんだよ。お互いの為にもね。それに、国の兵器にはなりたくないだろう?」

アルドは突如、頭痛に襲われた。アルドの脳では話について行けなかったのだ。だが、国の道具になりたくはなかった。無言でいるのを肯定と捉えたのか、ルーファスは続けた。

「そして、君の持っているEXスキル死地生還なんだが、そのスキル内容は、死の恐怖を体感する事によって肉体と精神を底上げするものなんだ。魔力がいくら低くても死を体感する事によって、いくらでも底上げする事ができる。魔力と精神は結びついているからね。だから君には冒険者になって死地を渡り歩き、無属性魔法を扱ってもらえるようになりたい。いや、ならなければいけない。それがDSスキルの持ち主の義務だ。まぁ、力を扱えるようになれば、国も無闇に手出しは出来ないし、ギルドとしても強力な力を誇示できるしね。その代わりと言ってはなんだが、ギルドは君への支援をさせてもらうよ」

アルドは何も応えなかった。いや、応えられなかった。頭がショート寸前であり、先程から全く話についていけてなかった。数分が経ちアルドがやっと話を噛み砕いて理解すると、ルーファスの話に首を縦に応じた。
自分が貴重スキルの持ち主である事と、そのスキルを今の自分では扱えない事、御膳立てされたように、スキルを扱えるようになるスキルまで持っている事、そして、ギルドから支援をして貰える事を。

アルドは今日、出鼻を挫かれ、これから先を不安に思いつつも冒険者となった。

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