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青春ゲーム!

天海愛米

9章 それぞれの覚悟



「どうしたんですか?」
戸惑う様子のキララ。

それもそうだろう。
━━目の前でいきなり土下座されたら。

「お願いだ!キララだけじゃなく皆も、全部レミの為なんだ!」
「いや、それは分かってるよ?でも……」

「私達も色々考えているんだけど、中々思いつかなくてね……」
如月に続いて、宮原も言う。
「レミちゃんの事を思ってるのは伝わるんだけど、関係の無い私達が首を突っ込んで、例えいじめてる子でも手を出すなんてできないよ」

ごもっともな事を言う宮原。
確かに、俺達が簡単に首を突っ込んで良い話じゃ無い。
誰も傷つけず、レミを救う方法を見つけ出さなければ。

「難しいのね、中学生って」
唐突に使羅が口を開いた。

「ああ。俺らが思ってるより何倍もな」

「だったら、老若男女関係なく、誰にも通用する方法で解決しなきゃ」
「なるほど。それはナイスだね!莉奈ちゃん」
「じゃあ早速、その方法を考えなきゃ」

「……………」
俺は、話し合う皆を見て、少し頬が緩んでいるのが分かった。

ああ、そうか。
俺は、こんなのを求めていたんだな。

今になって初めて、ゲーム部という物のありがたみを感じた。

━━季節は6月下旬。
蝉の騒がしい声が聞こえる頃。
夏の暑さにも負けず、たった一人の為に皆が力を合わせている。

「なら、こんなのはどう?」
「おぉー、良いね!」
「なるほど。……ほうほう。中々良いですね」
「英治くん!来て来て!」

テメェの妹が危機的状況だってのに、どうして俺はこんなに笑えているんだ?

そんな事、どうでも良いんだ。

「待ってろ、今行く!」


心から笑い合える仲間達に出会えて、良かった。



私は今、家に居る。
あの日以来、学校にも行かなくなった。

お兄ちゃん達が何か考えてくれてるみたいだけど、それじゃあ私は何もしていない事になる。

「こんなんだから、ダメなんだよな……」

そう。
本来なら、自分の事は自分自身で解決するべきなのだ。
「いつも頼ってばっかりじゃダメ。私自身、何かできることを探さなきゃ」

このままじゃ、何も成長しない。
あの頃の私は、もうやめよう。

そう心に決めたのだった。



「……なあ朱里」
「何?」

同時刻、学校にて。
前浪を初めとする女子グループでは、何やら話していた。

「アイツ最近学校来てないよ。これじゃ折角の作戦が台無しに……」
「大丈夫だよ。あいつはきっと来る」

━━来て貰わなくちゃ。

長年の、いや、自分の友達を失うなんて、レミが一番嫌いな事だ。

確かにレミは変わった。けど、自分の気持ちは絶対に曲げない。そんな奴だ。

「あいつが来たら、お互いに全力で潰し合わないとね」

前浪の笑顔からは、今までに無い狂気が込められていた。

「うおっ!笑顔怖っ!……写メ撮るね」
「何でだよ!」



「えーと、紹介する。……コイツらが、ゲーム部の皆だ」
「ど、どうも……」

翌日、塩浦家にゲーム部の奴等がやってきた。

「よろしくね」
「なるほどなるほど。結構可愛いですね。……頂いても宜しいですか?」
「良いわけねえだろ!人ん家の妹を何だと思ってんだ!」

コイツ、どこでもこんな感じなのか。

「そ、そうだ。……改めて作戦の内容を」
「そうだね。レミちゃん」
「はい。……え?」

俺達の作戦に驚くレミ。

「そんな事、できるかな……」
「大丈夫!自分を信じて!」


「……分かりました」



そして、当日。
「朱里」
「ん?……分かった」

「なあ。俺ら、なにしてんだ?」
「見ての通りです」
「いや何を見てか分からんな」

久しぶりに来た私の事を、周りの女子達が見つめる。

私はお兄ちゃんと目を合わせら頷く。

『良いか?もし何かあって、堪えられなくなったら、わざと荷物を置いて走り去れ』

そう。
数日前、私はお兄ちゃんに言われていた。

「アイツらならレミの私物を奪って脅しに来ると踏んだ」
「で、でも、そんな事して良いの?」
「ああ。全然良い」

「ほら、早く。レミ来たよ」
「わ、分かってるって」
そう言う朱里の手は、震えていた。

私は深く息を吸い、朱里に近づく。

「おぉー、効いてる効いてる!」
「効いてるって何をしたんだ?」
「実はねー」

時は遡る。
昨日、朱里が帰ってくる時間帯を狙って、使羅さんと片峯さんと一緒に、待ち伏せしていた。

『ねぇレミ~』
『なに?』
『………?』
よし、怪しんでいる。

私達の姿は死角によって見えなくなっている。

『レミはさ~、いじめられてんのに、何でやり返さないの~?』
『それはね……』

『全部、私が悪いから』
『……………』

『中一の頃、私実はこれでも少しモテてたんだよ?それもあって、有頂天になって、私が一番だと思ってた』
『でも、確かにそうじゃん』
『そんな事無いよ』

『そのせいでこんなに変わって、友達も失って……』
『……………』

『だから、今こうなっているのは、私が悪いの。皆、悪くない。』
『……だったらやり返せば良いじゃん』
『いいよ、それに……』

『朱里とは、いつまでも友達でいていたいし』
『…………!』
朱里は、家に駆け込んで行った。


『いやいや、ナイス演技だね、レミちゃん!』
『ふ、素人にしては良くやった方ね』
『あ、ありがとうございます……』


「それは芝居じゃねえか!」
「まあね。でも、予めこう言って置いた方が、相手の気持ちを揺さぶれるでしょ?」

やっぱ片峯は謎だわ。

そして、いよいよ朱里が口を開く。
「よぉ、レミ」
「……今さら何?」
朱里は震えながらも私のバッグを取り出す。
「私達は今まで何回もお前が変わるチャンスをあげたのに」
「それでも変わらないと言うなら、もう━━」

「あんたの周りから、全部メチャクチャにしてやる」

「何を言ってんの?」
「このバッグにはあんたの大事な物が沢山入ってる。それを例えば━━燃やされでもしたらどうかな?」
「………!」
「まあ別に、土下座して謝るってんなら良いけど」

挑発をしてくる朱里。
私はそんな朱里の顔を見ながら。

━━地面に頬を着けた。

「なっ………」
驚く朱里。まさか本当にやるとは思わないだろう。

「……ごめん。今まで私がやってきた事は、確かに間違ってた。そのせいで大事な友達を傷つけてしまった。全部、私のせいだ」
「……え?え?」

「……でも、それで同じ事を相手にしたら、何も変わらない。……ほら私、自分勝手だからさ。自分が傷つくの嫌なんだよね」
「……何だよそれ…!」

「だから、もう誰も傷つけない。争いたく無いし……何より、朱里達ともっと仲良くしていたい」
「……………」
「これが、私の、いや。……私達の覚悟」

「今まで、すみませんでしたっ…!」

周りの女子達が顔を見合わせる。
「……レミ」

目上の朱里から放たれた言葉は━━
「……ごめんっ!」
「え……?」 

「ごめんレミ!少し嫉妬して、大事な友達をいじめるなんて最低な奴だよ。私は……」
「そんな事無いよ。朱里は……」
「もし、今からでも許してくれるんならさ……」

僅かに顔を赤らめて、言った。


「私とまた、友達になってください!」



その日の帰り道。
俺らゲーム部は、不思議と笑顔だった。

「やるね~、レミちゃん!」
「素晴らしい演技ですね」

……え?

「おい、あれ、演技だったのか?」
「そうだけど?……もしかして英治くん」
「……うわ。マジですか」

いや、じゃああれ、ただの茶番だったって事?

まじかー……。本当だと思ってうっすら涙を浮かべた自分がバカみたいじゃねぇか!

「まーでも」
「「「…………」」」
皆一様に目線を向ける。

「あれは、レミの本心だろ?……なら良いんじゃないのか」
「そうだね!」
「そうですね」
「……そうね」
いつの間にか俺達の距離は、こんなに近づいていた。

家に帰ると、レミが出迎えてくれた。
「おかえり、お兄ちゃん!」
「ああ、ただいま」
「はい」
いきなり手を差し出すレミ。

「……なんだこれ?」
「お土産のキプフェル!買って来てくれたんでしょ?」
「……またこんかんかよぉおお!!」

そんな俺達の間には、笑顔が生まれていた。

━━人は、争う生き物だ。
群がって、争って━━時に助け合う。

そして、どんな時にも笑顔が絶えない。

「あー分かったよ!買って来てやる!」
「ありがとー!」

━━コイツらと合えて、本当に良かった!

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コメント

  • とろろ

    うぽつです。
    レミ回はこれでおわりなんですかね?
    次に期待です

    0
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