勇者育成学校でトップの自称パンピー【凍結】

決事

第二十一話 俺は親バカと話したくありません

カチャ

最後まで食べていた皇帝がフォークを置いた。
それを見て皇女さんが口を開く。

「父様。話をしてもいいだろうか?」

俺を一瞥してから彼女の言葉に答える。

「……婚約したという報告以外なら聞こう」

え、さっき俺見たよね?
え、なに。
俺と皇女さんが結婚しそうに見えるわけかアンタの目には。
ああん?
メンチ切ってやろうかと立ち上がりたがる足をなんとか抑える。
ストーカーの加害者と被害者が結婚するとかありえねえだろ。
今にも沸騰しそうな脳を冷やすため話にとやらに耳を傾ける。

「明日、毎年恒例のあの狩りに行って来る」

「その男と、か。強いのか、本当に」

弱いです、弱いですから帰っていいですか。
皇帝に話が通ってしまっている以上反対意見を出すのは無駄。
挙手しようとする手を懸命に押しとどめる。
くそ、さっきから俺の忍耐力を試している!

「簡単な試合とはいえこの私を瞬殺だ」

どうだ、すごいだろう、と身を乗り出して言う。
ちょい待て、何故にアンタがそんな自慢げに……。

「ふむ、では即戦力だな。怪我をしないよう、気をつけるのだぞ。そしてミネル・ハンフリーとやら。この娘に傷一つでも付いたら……コロスゾ?」

こわっ!
典型的な親バカ!
あれか、俺はボッチのヒッキーか!
マイエンジェルコ○チエルって響きいいよな。
アホ毛がきゅーと。
ではなく。

「俺が何もしなくても勝手に突進し」

て勝手に怪我を負うのでは。
その台詞は飛んできた食事用ナイフによって遮られた。
口を封じられた、ともいう。
中学時代の教師の顔を持つ男から放たれた凶器は俺の目の前、机の端に突き刺さった。
前世ではナイフではなくチョークだった。
懐かしいな……。
そんな現実逃避をするレベルで彼の顔は悪人面になっている。

「傷が。一つでも。付いたら?」

これは復唱しろということか。

「傷が一つでも付いたら。俺はブッコロの餌食」

「まあせいぜい頑張りたまえ。娘の身代わりとなり死んでくればもう文句はない」

物騒なこというおっさんだ。
こんなところにまで前との共通点を探している俺自身に嫌気が差す。
皇女さんは平然とした顔だ。
以前にもこうしたことがあったのだろうか、皇帝が悪い虫に殺虫剤を撒き散らすということが。

「で、本題はここからなのだが」

狩りの話してはいおしまいじゃなかったのか。
まだ話すのー、この親バカと。

「この男を司書として雇わないか?」

「「ふぁ?」」


あ、ハモった。

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