勇者育成学校でトップの自称パンピー【凍結】

決事

第十八話 俺は自前チート持ってます

「おうおうおう!あんたが俺の邪魔してくれたカクタスさんかい!?」

医務室(多分)に乗り込みました。
皇女さんが引き止めようとしていたが、俺の障壁になれることなく無事、ここのベッドで気絶している。

「なんだい、騒がしいね、ほんとに……。まずアンタは一体誰なんだい。皇女と何ら阿ることなく話していたようだったけれど」

「それもそうだ。自己紹介は大事だよな、パンピーにとって。俺はハンフリー。ミネル・ハンフリーだ。皇女さんと同じギルソタ勇者育成学校に通っている」

ふーんとか、へーとか、ほほうとか、呟きながら俺をジロジロ観察しているグラマラスなお姉さんーー年齢不詳の女はお姉さんと言っておけば大丈夫だと前世、今世で学んだーーがカクタス医師らしい。
何でも、この国の医学界の権威だとか。
俺には関係ねえが。
しかし、この部屋に入る前はヨボヨボの爺さんが出て来ると思っていた。
作者は、これ以上女出すと俺○イルみたいにルートが分岐してとんでもないことになる、って考えてるみたいだったし。
何にしても、このお姉さんが攻略対象になることはないから放置だ放置。
それよりさっさと済ませねばならないことがある。

「で、皇女さんに何の用があって俺の至福の時を邪魔してくれたんだ、ああ''?」

「ああ……行為の途中だったか済まないことをしt」

「ちょっと待てちょっと待てちょっと待て!この小説はR15にもR18にもしないって作者が意気込んでたぞ!?それを、おま……よりにもよって、俺とあのストーカーとって、勘弁してくれ!」

「違ったのかい。アンタが何をシようとしてたのかは知らないが、皇女に相談があったから呼んだだけさ」

この女がそういう話題に誘うような口調なのはさて置き、いくら変態とはいえ仮にも一国の皇女を呼びつける一介の医師。
どうにも納得がいかない。
だが、俺は今直ぐにでもあの夢の図書館へ帰りたい。
何の相談かは分からないが取り敢えず聞くだけ聞き、答えられるようだったら皇女さんが意識を取り戻すまでにーー注:こいつが眠らしましたーー解決しておこう。
そうすれば彼女の案内の元、直ちに戻れる筈だ。
よしこれでいこう。

「皇女さんが、名医だと言われるあんたの相談に乗れるほど頭がいいとは思わないんで、俺でよければその話聞くぜ。なるべくちゃちゃっと素早く手短に」

「あんたに分かるとはこれっぽちも思っちゃいないけれど……まあ、暇潰しにいいかもね」


最近、田舎で感染症が広がってるみたいでねぇ、遅れた技術じゃ治せそうにないってんで、町まで医者を頼って来るわけさ。
なんだけれど、町の奴らにも原因、その病の病原菌に対抗できる薬草が分からない。
それでどんどんそういうのに詳しい奴、もっと詳しい奴って渡ってってーー負けず嫌いが多い業界だからねえ。分かんないのがあると解明したくなるんだろうーーここまで辿り着いた、けれど、ねぇ。


「あんたにも分からなかったってことか」

「そうなのよ。でも手をこまねいて見てるってのもやだからねぇ」

評価するのは癪だが、この医師は本当に患者のことを思っているから、こんな悔しそうな顔をするのだろう。
……スルーしよっかなー、とか考えたのは取り消し。
仕方ない、力を貸すか。

「で、症状は?どんな特徴があった?」

いきなり深く聞いてきた俺に驚いたようだが、机に置いてあったメモを手渡してくれた。
なになに……

「痙笑、下顎の障害に始まり、暫らくすると呼吸困難、身体が反り返る等、全身に症状が広がっていく……。はあ?これ破傷風じゃねえか!おい、あんた。これが前に有名になったことってあるか?」

「いいや、一応今回が初めてだって記録されてるねぇ」

おいおいおい……。
周りで重病を患う奴がいなかったから意識が向かなかったが、ここの世界は科学どころか医学も遅れてるのか。
いや科学と医学は連動している部分が多いから当たり前っちゃあ当たり前なんだが。
破傷風、なあ……。

「ススリ草だ」

「は?」

「この世界だったらススリ草を早期に傷口に塗っとくことで感染を事前に防げるんだ」

「え、いや何でアンタがこんなことを……」

「怪我が本当に酷い奴はそこを切っちまえ。特に土いじりをするおっさん達はな」

破傷風。
それは前世でも恐ろしい感染病とされていたが、ワクチン・治療薬を投与することによって感染を防ぐ、治すことが可能になった。
そのワクチンの代わりになるもの。
それがこの世界では湿った薄暗い森に生えているススリ草なのだ。

「あと詳しい治療法はこの紙の隅に書いておくからあとは何とかしてくれ」

「あ、ああ……」

カクタスは未だ目を丸くしている。
それ程驚くことか?
いや放置だ放置。
というわけで、はいカイケーツ!

「ほら皇女さん!早く戻ろうぜ!」

「くっ、気づかれていたか!」

分からいでか。
聞き耳を立てていたのにも勿論気づいていた。

「それよりミネル・ハンフリー。その知識はどこで身につけたのだ?」

「知識って?ススリ草のことなら知り合いの変な奴が教えてくれたんだよ」

奴は皇女さんなんか目じゃないレベルの変態だった……。

「違う、そっちではない。その変な奴というのも気にはなるが、症状から直ぐに病名ーーハシーフ、だったか?ーーが出て来ただろう。このカクタスですら知らなかったことを知っていたのは何故だ?それも教えてもらったのか?」

ええっと、言ってなかったか?
そう視線を送ると首を横に振られた。
あっれれー、おっかしいなー。
言った気がしたんだけど。
前世、を幼い頃、と言い換えて説明する。

「幼い頃から本が好きで好きで堪んなくて、寺子屋みたいのに通ってた時も授業聞かずにずっと本読んでたんだ。最初は物語ばっか読んでたがだんだん別のジャンル読むのも楽しくなって来て」

「答えになっておらんぞ!」

「なんか、気付いたら丸々内容覚えてたんだよね」


電子書籍とか10年と3ヶ月前の朝食とかは思い出せないからイン○ックスさんみたいな完全記憶能力じゃないけどな。


〜*〜*〜*〜*〜
授業……あれは読書タイムだと思ってます。
作者、まんまです、はい。
ジャンルはラノベに限られてますけれどw
やっと、ミネルのヤロウの自前チートご登場です!
長かった……長い道のりだった……。
というわけで今後もよろしくお願いします(*^^*)

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