俺は記憶喪失になってしまったらしい

俺は記憶喪失になってしまったらしい

目覚めるとそこは真夏のクーラーの効いた病室だった。
目に飛び込んできたのは母親。涙を流しながらナースコールを押した。

すぐに医者が駆けつける。どうやら俺は頭から血を流して倒れていたようだ。ニ週間ほど昏睡状態だったらしい。いろいろ質問されて、問題ないと思われたその時、病室に駆け込んできた一人の女性。長髪ストレートでかなり綺麗だ。20代前半だろうか。
「康平・・・。よかった~!」
と言って、泣きながら抱きついてきた。一瞬何が起こったか判らなかった。
「ちょっ!まっ!いきなりなんですか!」
「え?」
抱きついていたところから、顔を見あわせる。
「もしかして、覚えてないの?」
「ごめん・・・。」
うれし泣きから、悲しい泣きに変わりそうだ。
「どうやら、記憶喪失のようですね。」
医者がすかさずいらないフォローをした。
彼女の表情は見事に悲しみに満ちあふれた。

医者め。女性を泣かせやがって。さてはSっ気があるんじゃないか?
康平は、この医者を泣かせてやりたいと思うのだった。

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