勇者でわなく魔王で呼ばれたから頑張って生きる

柚子華

14話(慢心と力)

初めて使うゲイボルグの衝撃飛ばしは、だいたい3メートルぐらいの距離しか飛ばせなかった。

それにただ相手がのけぞっただけにしかみえなかった為あまり威力がないのだと判断した。次に神力法護をもう一度試してみることにした。



・・・が、直前にやめてしまった。
実は、移動中に一度試してみたがかなり効率が悪かった。1分あたり700近いMPを消費するためお世辞にも効率がいいとは言えなかった。


(時間変速の練習としよう)
こんなことを考えずに殲滅だけを考えればあんなことにはならなかったのかもしれない。

数匹のゴブリンの群れを見つけて突っ込み、
時間変速を行う。

すると、周りのゴブリンたちの動きが極端に遅くなった。

「10メートルって案外…いや、かなり広いな…」
とかいいながら駒のように回ってほぼ全てのゴブリンの首だけを切り落としていった。

槍でやることではないのだが本人は全く気づいていないのであった。


「よっと」
「グギャ・・・?」

最後の一体を一切気づかれることなく狩りきり、ひと段落ついた今日の狩り。

対象であるワーウルフを全然見なかったのだが仕方がないことだと割り切り、とりあえず帰ろうとしていた。

「スゥ、剥ぎ取りありがとう。」
「そんな恐れ多いですー。」
(もう魔物もいないみたいですね。)
「仕方ない、今日はもう帰ろうか。」
「(はーい)」

その時だった。

「・・・・・・カサッ」



音と同時に陸斗の左腕・・が宙を舞った。

「があぁぁぁぁあぁぁあ!!」

周囲を警戒してくれていたゲイボルグですら気付けなかった完全な不意打ち。

「はぁぁ!!」
「ガッ!?」
「あぁぁ、痛っ!」

モンスターはスゥが始末してくれたが陸斗の血が止まらず、痛みだけが増していった。


(これ・・・は・・・ヤバ・・・)
陸斗はまたしても意識を手放した。


残された二人はスゥは周囲の警戒を、ゲイボルグが上級治癒ハイヒールを使おうとしていた時、陸斗に異変が起こった。

陸斗の左半身が氷に覆われていったのだ。

氷の神力法護は、纏わせた部分の攻撃・防御を大幅に強化することができるが、ごく一部の部分しか纏えないはずだった。

ゲイボルグは初めて見た効果範囲全体の神力法護に戸惑いを隠しきれなかった。

異変に気付きよって来たスゥは陸斗の状態に戸惑っていた。

ーーそんな二人の間で陸斗は目を覚ましたーー



「ううっ・・・痛てて・・・」
陸斗の目には戸惑いと涙を浮かべた二人の顔があった・・・。

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