アラフォー女性獣医師は、チートな元獣に囲まれて混乱している

穴の空いた靴下

第二十五話 私達、飛んでいますね……

「高い……」

 今私たちはトーンツリーのダンジョンからメーリアの背に乗り一気に脱出した。
 聖獣だけが通れる通路を抜けると街からだいぶ離れた巨大渓谷の横穴から飛び出す形となり、そのまま空から街へと帰還した。
 サポートしてくれた冒険者の方々にはダンジョン最深部にあった宝をたっぷりと提供しておいた。
 アキちゃんはブツブツ言っていたけど、まだまだ稼ぐ場所はあると説得した。

 そしてそのままトーンツリー共和国からイースシティ帝国へと空を飛んで移動している。

「は、早すぎる……それなのに風も何も感じないし……」

『私のとって風はお友達。皆が落ちないようにするのも向かい風を無くすのも意識しなくてもできるわ』

「……時々いきなり向かい風をぶち当ててきて遊んでるくせに……」

『いつ何時も油断しないという教訓よ~嫌だわな~』

「さっきだってナツが吹っ飛んでったの大笑いしてたような……」

『あれは最高だったわwww真っ青な顔で空をくるくる回ってwwww
 おっとまた風が……』

「ぐぬぬぬ、そう! 何度も! 飛ばされるかよ!! ちくしょー!!」

 全員必死に背中にしがみついて風に耐えている。
 この状態で錐揉み飛行をしたりムーンサルト決めたりするドS聖鳥メーリアさん。
 強力な移動手段と、気の抜けない鍛錬が続くことによって精神的にも鍛えられていくことになります。

 空の旅は凄まじい速度で次の目的地イースシティ帝国へと到着してくれました。
 まずは次の目的地であるハオジ火山攻略のために首都シジクにて物資を補給することになりました。

「いやー、ナギちゃんは大人気だねぇ~」

「や、止めてくださいマキさん……恥ずかしい……」

 帝国に戻ればナギちゃんは天才魔術師、トウジ君もその天才を補佐するクールな参謀として絶大な人気を誇っていた。
 行く先々で黄色い悲鳴が木霊している。
 一部、野太いかわい~~って声にはナギちゃんも震えていた。

 移動手段がレベルアップしたおかげで旅の効率は格段に向上していた。
 帝都にて物資の補給と僅かな休憩を取ったら次の目的地へとひとっ飛びする。

「ハオジ火山か……」

「帝国生まれであそこに行こうって人間はいませんね」

「そんなにすごいとこなの?」

「ああ、常に活動しているし噴火はしょっちゅうだし、溶岩の中には大量の魔物が泳いでいるし、致死性のガスはそこらじゅうから湧き出ているし、火山のくせに可燃性のガスだまりもそこらじゅうにあってたまに爆発してる」

「とんでもねーな!」

「豊富な地下資源があることははっきりと分かっていても、帝国の魔法技術を持ってしても開発を断念する。そんな場所です」

『ほらほら、準備できたらさっさと行くわよー』

 みんなでメーリアかーさんの背に乗って飛び立つ。
 メーリアかーさんは迷わずハオジ火山の直上にまで飛行する。

『さーて行くわよー』

「ん? 行くってどこにーってわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 火口の直上からグツグツと煮えたぎるマグマの海にメーリアは突っ込んでいく。

「ちょちょちょーーー!!!」

 ドプン……

 さようなら皆さん。私の冒険はここで終わってしまいました。



 完。











「あれ?」

「し、死んでない……マキ、オレ死んでない!」

『プププ、なにその情けない顔。私がマグマ程度でどうにかなるわけ無いでしょ。
 ほら、着くわよ』

 まるでマグマから避けていくように私達の周囲に押し寄せられている。
 そして横道にそれると大きな神殿の入り口が目の前に現れた。

「ほ~う、さすがにここまでは教会でも知らなかったなぁ……素晴らしい造形!
 これは芸術作品のような神殿だ!」 

 妙にリッカが興奮している。
 確かに火山の中に作られた神殿は周囲の赤銅色の岩の中に浮かび上がる純白の柱、輝いているようにさえ視える。事実周囲を流れるマグマの流れを映し出して赤く輝いている。

『さて、マキよ。いつも通りそなたの中で休ませてもらう。
 お主たちならどんな場所でも苦もなく超えられるじゃろ、せいぜい励むのじゃぞ』

 メーリアが光の粒子となって私の中に収まっていく。
 温かい力が身体に満たされていくのがわかる。

「それじゃぁ、行きましょう!」

 巨大な神殿へとみんなと一緒に挑み始める。


「内部も凄いね~、この建築様式は教会の記録でもかなり古代の物と推測されるよ~」

 リッカは神殿の中に入ってからもテンションが高い。
 手に持つメモにサラサラと記録を残しながら歩いている。
 ちょっと覗いたら、どこの画家様だろうと思ってしまうほど精巧なスケッチを描いていた。

「すごい! リッカ絵上手なんだね!!」

「放蕩息子ですからねー、芸術の名の着くものは色々と手を出しております!」

「そういえば飲むとすぐに歌い出すもんなリッカは」

「あっちでも朝元気良かったもんね!」

「今でも早朝に精霊と話しているよなリッカは」

「はっはー、ハル殿にはよくお会いしますからなー、早朝からの鍛錬はご立派ですよ」

「皆頑張ってるんだな……私ももっと頑張らないと……」

「おーい、お前ら置いてくぞー」

 先に進んでいるナツが急かしてくる。
 神殿の中は神聖な気で溢れているような気がする。
 魔物の気配を感じない。

「……なるほど、魔物はいないけど、こういうのはいるのね……」

 しばらく進み、大きな扉の前ではじめての敵と出会う。
 扉を守るように立っていた石像が動き出して襲い掛かってきた。

「ガーディアンがいるのですね。物理攻撃も魔法攻撃も効きにくい厄介な敵です」

 久しぶりにトウジがメガネをくいっとやりながら解説する。
 石像が魔法によって動き出しているために当然外郭は石。
 固い。熱にも冷却にも強いし、物理的な攻撃にも強い。
 そのくせ重量を利用した攻撃は強力という厄介な敵だ。

「トウジ、リッカ、ナギ皆でアイツを熱して、合図したら一気に冷却するよ!」

 4人の魔法で動く石像達をメラメラと温め続ける。
 時間をかければ石の融点まで持っていけるだろうけど、そんなにゆうちょなことはしてられない。
 それにもっと簡単に倒せるんだからそんなことをしなくてもいい。

「そろそろ冷やすよー」

 豪炎が急に吹雪へと変化する。
 動く石像たちははじめじゅうじゅうと音を立ていたがピキピキと音を立てて目に見えて動きが鈍くなる。

「トドメどうぞー」

 アキの弓、フユの槍、みんなが石像を叩きつけると粉々に砕け散った。
 温度差を利用して脆くしたのです。ふふん。

 それからはガーゴイルと呼ばれる悪魔を模した石像の敵や絵画に描かれた空想の生物が出てきたりと、
かなりスリリングな神殿探索になっていく。

「あの美しい絵画が実態となって動くとは、世の中にはいろいろな魔法があるのですね~」

「しかもかなり強くて厄介なのが、マキが絶対火に弱いとか嘘つくから……」

「ああいう敵は火に弱いってのがセオリーなの!」

「炎纏って突進された時はコノヤローって思ったなぁ……」

「……ごめんなさい……」

「あ、いや、その……ごめん」

「まぁまぁ、なんとか倒せたのですからいいじゃないですか。
 それよりも、この扉、少し様子が変わりましたね」

 フユの言う通り目の前の扉は今まで美しい装飾を施された物とは異なり、無骨な巨大な鉄の扉という感じだ。

「いくぞ……」

 ギギギギギと鈍い音をたてながら扉を開けると、扉の向こうは火山だった。









 

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