アラフォー女性獣医師は、チートな元獣に囲まれて混乱している
第十五話 みんなの力が私の力に……
ベンモスが倒されると彼の軍勢も塵へと変わっていった。
「マキ君、何ださっきのでたらめな強化は?」
「アーツなんですよね? しかし、あんな変化を聞いたことは……」
「うーん、なんか皆がやってるのを真似して、ヘイロンとウインにも助けてもらったらああなった。
スーパーモードと名付けよう」
「……マキちゃんネーミングセンスは皆無やねぇ……」
「まぁ、わかりやすくていいじゃん。スーパーな力出せるわけだし」
「ナツは単純だなぁ。それでも、あの力のお陰で助かったよ。ありがとうマキ」
「うむ、マキ殿の力が流れ込んで溢れんばかりだった!」
「さぁさぁ皆、ゆっくりしてられないよー。ここにあんな幹部が来たってことは、他の聖地にも同じように刺客が送られている可能性が高いんだからー」
「そうか! それでリッカ、次の目的地はどこだ?」
「はーい。次はトーンツリー共和国、すり鉢の最奥でーす」
「やはりそこか……」
「フユは知ってるの?」
「冒険者なら誰でも知っているさ、トーンツリー最大のダンジョン。
古代から存在する巨大なすり鉢状の地形の中央から侵入するダンジョンで、その大きさは巨大、広大。
未だにどれほどの規模かはわかっていない。
冒険者がとめどなく訪れるためにすり鉢の底にはダンジョンのための街が出来ている。
ダンジョン都市アント。
……自分の故郷だ」
こうして次の目的地は決まった。
まずはBB商会の人達が待つ拠点まで下山する。
下山は、自重なく強化をかけて一気に駆け下りる。
下山、というよりも落下といったほうが近いかもしれない。
「たのしーーーーーーー!!」
周囲の景色が飛んで行くように過ぎ去っていく。
それでも私を含めて皆が正確に周囲の状態を把握してほぼ崖の岩肌を走っている。
まるで遊園地のアトラクションかなにかのような、現実離れしたショーみたいだ。
怖さよりも楽しさが上回る。むしろ怖さはない。楽しい! 楽しい!
「たのしーーーーーー!!!」
「マキ、少しスピード落とせ。ナギが大変そうだ」
後ろを見ると確かに小柄なナギちゃんは大変そうだ。
少しスピードを落としてナギの横につける。
「ご、ごめんなさいマキさん……」
「ふっふっふー。いっくぞー!!」
ナギの手をつかむと魔力を足に込めて……跳ぶ。
「ひゃっほーい!」
「わわわ、ま、マキさ~ん!」
ほぼ崖な場所から跳べば、空中を飛ぶことになる。
戻る時も魔法で少し操作すれば問題ない。
スカイダイビングをやったことないけど、きっとこんな感じで爽快なんだろう。
皆もやれやれと言った感じで一緒に飛んでくれる。
ぐんぐんと森が近づいてくる。
「風の妖精よ、我らを優しく受け止め給え」
トウジが歌うように精霊に話しかけると優しい風が私達を受け止めてくれる。
そのままそっと地上に着地する。
「もう一回やりたい……」
「ハハハ、それなら精霊に頼んでぽーんと空中に上げてもらえばいいんじゃないかい」
「なるほど」「冗談だ」
トウジが真面目モードになったから止めておこう。
森の中をアトラクションのような速度でかっ飛んでいくとすぐに拠点へと戻ってこれた。
「さて、これからも有るにしても、今日くらいは祝ってもええやろ!」
アキちゃんの提案で最初の勇者の神具を手に入れたお祝いをすることになった。
商会の人も手伝ってくれてささやかな祝宴の準備が進められる。
無事に帰ってこれただけでも祝わないとね!
取り敢えず久しぶりの湯船を堪能して、旅のホコリを落とす事にする。
「ふえええええ~~~」
たっぷりと湯を張った湯船に肩までしっかりと入る瞬間……
変な声が出る。
身体の汚れを落として湯船に浸かるという魅惑の行為は、やはり日本人として魂に刻まれた逃げられない快感!
すっかり体の芯まで温まり、心も満足して外に出ると、既に宴会の準備はかなり進んでいた。
私達のサポートをしてくれていた人々を含めて、皆で楽しめる素敵な宴になるように皆が頑張っている。
「よーし! 私も何か料理とかで手伝うぞー!」
「「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」」
設営を手伝っていた皆がバッ!! と一斉にこっちを向いた。
「い、いや。マキは待っていてくれ」
「そ、そうだぜ。マキは聖女なんだからいてくれればいい」
「そうやでー、料理はウチラがやるから楽しみにまっとっといてー!」
「マキ殿、まぁ、こちらにかけて」
「マキっちはいてくれるだけで華やかになるからねー」
「そうだ。そこにいるだけでいいんだ」
「うんうn」
なんだか、妙に息がピッタリだなぁ。
「でもー、ほら、こっちの食材にも慣れていかないと……」
「はい、マキ! 取り敢えず飲んで待っててよ!」
「あー、マキちゃんそれうちの商会の自信作!
日本のビールに近い味わい出すの苦労したわー!!」
「えー、でも皆働いているのに悪いよー……ゴクリ」
目の前に置かれたビールの魅力は……強い。
「皆聖女のために働けることが喜びなんだ!」
「……そっかぁ、そこまで言われたら断るのも悪いかぁ……
ところで、この身体、お酒飲んでいいの?」
「う……だ、大丈夫じゃない?」
「試すしか無いな、うん。これは、仕方ないんだ」
よく冷やされたビールはこの世界では貴重品らしい。
BB商会製の冷蔵庫は冷却力、冷却持続時間、どれをとっても他の追随を許さない人気商品だそうだ。
ガラスのグラスも高級品。
注がれた黄金色のビールが輝いて見える。
口をつけるとまろやかな泡に続いてよく冷えたビールが喉に流れ込む。
苦味は抑え気味で麦の風味と味わい、そしてシュワシュワとした炭酸の刺激、何よりもお風呂で火照った体に冷たい液体が入り込むこの快感たるや……
「……っくっはー! この一杯のために働いてるんだよなぁ!!」
(あれだから彼氏できねーんだよな)
「あん!? 誰かなんか言ったか!」
ブンブンと皆が顔を振っている。
「うん。平気みたい。美味しい! すごく美味しいよアキちゃん!」
「そやろそやろー! お代わりもあるでー」
「簡単なおつまみもどうぞマキ殿」
「なんか悪いなー、いっただきま~す」
(絶対にマキに飯は作らせるな)(ああ、わかっている)(商会の人間にも徹底してあるでー)
(動物の餌はあんなに見事に作るのに、なんで人間の食事は……)
(仕方ないよ、人間には得手不得手があるもんさ~)
この身体。飲んでも酔わない!
事に気がついたのは、結構な数のグラスを空けた後だった。
宴会はアキちゃんの挨拶で盛大に開始された。
見たこともない異国、というか異世界の料理から、アキちゃんが再現した日本の料理まで、様々な料理に皆で舌鼓を打った。
「これすんごいおいし~! なんか豚みたいな、でも牛に負けないくらい力強いっていうか!」
「さすが舌だけは一流のマキちゃんやねー。ボルボックって動物なんやけど、見た目は豚みたいな牛っちゅう冗談みたいな話なんや」
「舌だけはって、あんまり褒められている気が……」
「いやいや、美味しいものを美味しいとわかるのは大事だよマキっち!」
「そうそう、マキがたまに作ってくれた手作りフードは本当に美味しかった……」
「え! ほんと? うれしーなー! じゃぁこんどハルに御飯作ってあげるね!」
「えっ……」
「いいなぁハル! 良かったなー! それじゃ!」
「えー、皆に作ってあげるよー! 任せといて!」
「なん……だと……」
「みんなそんなに感動してくれて……お母さんは嬉しいよ……」
(ハル……後でわかってるな……)
(はい……)
こうして、穏やかに祝宴は過ぎていきました。
「マキ君、何ださっきのでたらめな強化は?」
「アーツなんですよね? しかし、あんな変化を聞いたことは……」
「うーん、なんか皆がやってるのを真似して、ヘイロンとウインにも助けてもらったらああなった。
スーパーモードと名付けよう」
「……マキちゃんネーミングセンスは皆無やねぇ……」
「まぁ、わかりやすくていいじゃん。スーパーな力出せるわけだし」
「ナツは単純だなぁ。それでも、あの力のお陰で助かったよ。ありがとうマキ」
「うむ、マキ殿の力が流れ込んで溢れんばかりだった!」
「さぁさぁ皆、ゆっくりしてられないよー。ここにあんな幹部が来たってことは、他の聖地にも同じように刺客が送られている可能性が高いんだからー」
「そうか! それでリッカ、次の目的地はどこだ?」
「はーい。次はトーンツリー共和国、すり鉢の最奥でーす」
「やはりそこか……」
「フユは知ってるの?」
「冒険者なら誰でも知っているさ、トーンツリー最大のダンジョン。
古代から存在する巨大なすり鉢状の地形の中央から侵入するダンジョンで、その大きさは巨大、広大。
未だにどれほどの規模かはわかっていない。
冒険者がとめどなく訪れるためにすり鉢の底にはダンジョンのための街が出来ている。
ダンジョン都市アント。
……自分の故郷だ」
こうして次の目的地は決まった。
まずはBB商会の人達が待つ拠点まで下山する。
下山は、自重なく強化をかけて一気に駆け下りる。
下山、というよりも落下といったほうが近いかもしれない。
「たのしーーーーーーー!!」
周囲の景色が飛んで行くように過ぎ去っていく。
それでも私を含めて皆が正確に周囲の状態を把握してほぼ崖の岩肌を走っている。
まるで遊園地のアトラクションかなにかのような、現実離れしたショーみたいだ。
怖さよりも楽しさが上回る。むしろ怖さはない。楽しい! 楽しい!
「たのしーーーーーー!!!」
「マキ、少しスピード落とせ。ナギが大変そうだ」
後ろを見ると確かに小柄なナギちゃんは大変そうだ。
少しスピードを落としてナギの横につける。
「ご、ごめんなさいマキさん……」
「ふっふっふー。いっくぞー!!」
ナギの手をつかむと魔力を足に込めて……跳ぶ。
「ひゃっほーい!」
「わわわ、ま、マキさ~ん!」
ほぼ崖な場所から跳べば、空中を飛ぶことになる。
戻る時も魔法で少し操作すれば問題ない。
スカイダイビングをやったことないけど、きっとこんな感じで爽快なんだろう。
皆もやれやれと言った感じで一緒に飛んでくれる。
ぐんぐんと森が近づいてくる。
「風の妖精よ、我らを優しく受け止め給え」
トウジが歌うように精霊に話しかけると優しい風が私達を受け止めてくれる。
そのままそっと地上に着地する。
「もう一回やりたい……」
「ハハハ、それなら精霊に頼んでぽーんと空中に上げてもらえばいいんじゃないかい」
「なるほど」「冗談だ」
トウジが真面目モードになったから止めておこう。
森の中をアトラクションのような速度でかっ飛んでいくとすぐに拠点へと戻ってこれた。
「さて、これからも有るにしても、今日くらいは祝ってもええやろ!」
アキちゃんの提案で最初の勇者の神具を手に入れたお祝いをすることになった。
商会の人も手伝ってくれてささやかな祝宴の準備が進められる。
無事に帰ってこれただけでも祝わないとね!
取り敢えず久しぶりの湯船を堪能して、旅のホコリを落とす事にする。
「ふえええええ~~~」
たっぷりと湯を張った湯船に肩までしっかりと入る瞬間……
変な声が出る。
身体の汚れを落として湯船に浸かるという魅惑の行為は、やはり日本人として魂に刻まれた逃げられない快感!
すっかり体の芯まで温まり、心も満足して外に出ると、既に宴会の準備はかなり進んでいた。
私達のサポートをしてくれていた人々を含めて、皆で楽しめる素敵な宴になるように皆が頑張っている。
「よーし! 私も何か料理とかで手伝うぞー!」
「「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」」
設営を手伝っていた皆がバッ!! と一斉にこっちを向いた。
「い、いや。マキは待っていてくれ」
「そ、そうだぜ。マキは聖女なんだからいてくれればいい」
「そうやでー、料理はウチラがやるから楽しみにまっとっといてー!」
「マキ殿、まぁ、こちらにかけて」
「マキっちはいてくれるだけで華やかになるからねー」
「そうだ。そこにいるだけでいいんだ」
「うんうn」
なんだか、妙に息がピッタリだなぁ。
「でもー、ほら、こっちの食材にも慣れていかないと……」
「はい、マキ! 取り敢えず飲んで待っててよ!」
「あー、マキちゃんそれうちの商会の自信作!
日本のビールに近い味わい出すの苦労したわー!!」
「えー、でも皆働いているのに悪いよー……ゴクリ」
目の前に置かれたビールの魅力は……強い。
「皆聖女のために働けることが喜びなんだ!」
「……そっかぁ、そこまで言われたら断るのも悪いかぁ……
ところで、この身体、お酒飲んでいいの?」
「う……だ、大丈夫じゃない?」
「試すしか無いな、うん。これは、仕方ないんだ」
よく冷やされたビールはこの世界では貴重品らしい。
BB商会製の冷蔵庫は冷却力、冷却持続時間、どれをとっても他の追随を許さない人気商品だそうだ。
ガラスのグラスも高級品。
注がれた黄金色のビールが輝いて見える。
口をつけるとまろやかな泡に続いてよく冷えたビールが喉に流れ込む。
苦味は抑え気味で麦の風味と味わい、そしてシュワシュワとした炭酸の刺激、何よりもお風呂で火照った体に冷たい液体が入り込むこの快感たるや……
「……っくっはー! この一杯のために働いてるんだよなぁ!!」
(あれだから彼氏できねーんだよな)
「あん!? 誰かなんか言ったか!」
ブンブンと皆が顔を振っている。
「うん。平気みたい。美味しい! すごく美味しいよアキちゃん!」
「そやろそやろー! お代わりもあるでー」
「簡単なおつまみもどうぞマキ殿」
「なんか悪いなー、いっただきま~す」
(絶対にマキに飯は作らせるな)(ああ、わかっている)(商会の人間にも徹底してあるでー)
(動物の餌はあんなに見事に作るのに、なんで人間の食事は……)
(仕方ないよ、人間には得手不得手があるもんさ~)
この身体。飲んでも酔わない!
事に気がついたのは、結構な数のグラスを空けた後だった。
宴会はアキちゃんの挨拶で盛大に開始された。
見たこともない異国、というか異世界の料理から、アキちゃんが再現した日本の料理まで、様々な料理に皆で舌鼓を打った。
「これすんごいおいし~! なんか豚みたいな、でも牛に負けないくらい力強いっていうか!」
「さすが舌だけは一流のマキちゃんやねー。ボルボックって動物なんやけど、見た目は豚みたいな牛っちゅう冗談みたいな話なんや」
「舌だけはって、あんまり褒められている気が……」
「いやいや、美味しいものを美味しいとわかるのは大事だよマキっち!」
「そうそう、マキがたまに作ってくれた手作りフードは本当に美味しかった……」
「え! ほんと? うれしーなー! じゃぁこんどハルに御飯作ってあげるね!」
「えっ……」
「いいなぁハル! 良かったなー! それじゃ!」
「えー、皆に作ってあげるよー! 任せといて!」
「なん……だと……」
「みんなそんなに感動してくれて……お母さんは嬉しいよ……」
(ハル……後でわかってるな……)
(はい……)
こうして、穏やかに祝宴は過ぎていきました。
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