とある魔族少女の追憶

秋月 紅葉

望まれぬ誕生

彼女は思い出していた・・・
昔、こんな自分に声をかけてくれたあの人を・・・
彼女は思い出していた・・・
昔、こんな自分に生きる希望を与えてくれたあの人を・・


 自分はなぜ生まれてきたのだろう?そう考えなかった事は
今までなかった。なぜ生まれてきてしまったのだろう?
自分はいつもそう思っていた。
  彼女がそう考えてしまっていたのも仕方がない、彼女は望まれて生まれてきたのではなかったからだ。


彼女の母と父は街で偶然出会い、互いに惹かれあい、その後、交際を始めやがて母は彼女を身ごもった。母と父も幸せだった。自分が生まれてしまうまでは・・・

生まれてきた子供は見るからに人ではなかった。
生まれながらに、すでに歯が生え揃い手には鋭い爪が生えていた。いわゆる魔族であった。
母は生まれてきた自分の子供を見ることはできなかった。子供を産んだあとそのまま力尽きたのだ。
当然だ。ただの人間の体がが魔族を生むことに耐えられるはずがなかった。その後父は村人達に捕らえられそのまま殺された。魔族と人間が子を為すという事は、それだけで罪だったのだ。ただ父は死ぬ間際に「生まれてきた子供に罪はない、せめて物心がつくまでは世話を見てやってくれ。」と、それだけを言い残しこの世を去った。
その子供は、母方の家に預けられそれから5年がたった…


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