異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

壊滅

一方で、フィリア、セナグループもまた、目的に向けて探索を進めていた。

「えっと……こっちかな」

ふらふらと、当てもなくさまよっているように見えるセナだったが、その足取りに迷いはなく、着々と進んでいく。

「セナさん、道、分かるんですか?」

「ほら、私精霊の声が聞こえるって言ったでしょ?だから、目的の場所は分かるんだよね」

「そういうことなんですね」

「と……。ここだね」

そこにあったのは、この大きな屋敷に反して、かなり小さなサイズの扉。

それを開けると、今までの雰囲気とは打って変わり、周りが石で出来た、無骨な地下への通路が現れる。

「うわぁ、いかにもって感じだね」

「気味が悪いです……」

さらに進み、石の階段を降りると、また扉が見える。

今度の扉は、両開きで、中心に水晶のようなものがはめられていた。

「うーん。開かないなあ。これに何か仕掛けがあるのかな?」

そう言いながら水晶を突くセナ。

「鍵ですか?」

「うん、多分ね。でも、無理やり壊したりするのは怖いしなあ」

「あ、それなら任せて下さい!」

そう言って、フィリアはデナイアルを構えると、水晶を横に真っ二つにする。

直後、元々存在していなかったかのように水晶が消えた。

「お、大丈夫そうかな?ありがとねフィリアちゃん!」

「どういたしまして!」

今度こそ扉を開くセナ。

ギギギと、扉が軋む音を上げ、少しずつ部屋の様子があらわになっていく。

そこは、毒々しい色の液体の入ったフラスコや、用途不明の培養器のようなもの。

他にも、様々な草や動物の一部など、化学室のような場所だった。

その部屋の最奥に、またしても水晶のようなものがある。

大きさは4メートルほど。

先ほどの扉についていた水晶は淡い緑色だったが、こちらは黒が水晶の中で渦巻いている。

「フィリアちゃん、あれみたい」

セナがその水晶を指して言う。

処理しようとした時、

「おや?お客さんかな?」

と、後ろから声がかかる。

瞬時に跳びのくと、視線の先には1人の男。

そういう性格なのだろうか、口元がにたりと気色の悪い笑みをしたまま変化しない。

骨が見えてしまいそうなほど細い体に、かなりの猫背。

見るからに不健康そうな見た目。

それだけならまだ気色の悪い男と言った印象で済んだだろう。

しかし、男を見たほとんどの人間が、まず彼が人間がどうかを疑うだろう。

なぜなら、彼の肌が黒いからだ。

黒いと言っても、日に焼けた健康的なものではない。

まるで闇と自らを同化させたような、そんな不気味な色で体が出来ている。

そんな男は、にやにやとフィリアたちを見つめたまま動かない。

「あなたが、黒幕?」

「ん?この組織のことかな?それとも何か別のことかな?」

「ここに来てるんだから、分かるでしょ?」

「……クフフ、確かにそうですね、わざわざここまで来てるんです、迷ったなんて訳ないですよねぇ。御察しの通りですよ」

「やっぱり。じゃあ、あの装置止めてくれないかな?」

「それは無理な相談ですよ。あの装置は私と一心同体。あなたは私に死ねと?」

「だよねー。でも、流石にここで引き下がるわけにはいかないし、頑張ってみるよ」

「はい、せいぜい頑張って私を倒してみてください」

過信か本当に実力があるのか、余裕そうな笑みを崩さない男。

セナは、懐に隠してあった短剣で、男の首を切ろうと振るう。

警戒などしていないかのように立っていた男の首に吸い込まれるように振るわれた短剣は、

ガキィン!

そんな金属同士のぶつかり合うような音と共に、空中で静止した。

「ほらほら、どうしました?この程度では、到底死んであげることなど出来ませんねえ」

短剣がぶつかった時、何か壁のようなものが見えたセナは、自らの推測を口にする。

「障壁……?」

それを聞いた男は、まさに狂気とも呼べる笑みを浮かべ、冗舌に語り出した。

「ええ!よく分かりましたねえ!そうです、これこそ私の作り上げた技術!多くの精霊の力を私と深く結びつけることで完成した、絶対の障壁!あなたの貧相な短剣などでは傷1つつくわけがないんですよぉ!あの水晶が壊れれば消えますが、力を使う私がいる限り、この絶対の障壁は水晶にも付与される!……ああ、この完璧で隙のない能力!我ながら惚れ惚れしますねえ」

「じゃあ、あなたとあの水晶は一蓮托生というわけですか?」

「まあ、そうなりますねえ。それが分かったところで、あなたたちに何ができるとも思いませんが」

それを聞き、コツコツと水晶に近づくフィリア。

「おじさん。力を得ても、驕りは禁物ですよ?」

「は?何を言って」

「じゃないと、足元を掬われちゃいますから」

フィリアはそう言うと、剣を一振り。

水晶が砕け散った。

呆然とする男。

「……え?あ、あ、ああ。……あぁあああ!?」

しばらく立ち尽くしていた男は、自らの体が崩れ始めてようやく、どういう状況に陥ったのか気づく。

こぼれ落ちていく体のカケラを、必死に集めようと手を動かす。

しかし、集めようとした手までもがボロボロと崩れていく。

「あ、わ、わた、私の、体ぁ……」

最早座る事も出来なくなった男は、そのまま塵となった。

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目的を達成したフィリアとセナは、屋敷から出た。

門を出ると、そこには既にルノ達が待っている。

「……ん。2人ともおかえり」

「たっだいまー!お互い目的は達成したみたいだね」

「お互いってことは、お姉ちゃん精霊を助けられたんだね!」

「うん。フィリアちゃんが頑張ってくれたんだ!」

「セナさんのアシストもあったおかげで、私も少しはお役に立てました!」

「うんうん!ありがとねフィリアちゃん」

「こっちもルノちゃんとサタナさんが凄かったんだよ?」

「ルッカも弓矢、ナイスアシストだった。……サタナも、魔法助かった」

″ルノのお陰で、新たな魔法の可能性に気づけた。帰ったら、脳筋で実験する。″

雑談にふける5人。

その距離は明らかに近くなっており、この1日は、ルノの狙い通り、仲良くなるいいきっかけになったと言えるだろう。

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「お、帰ったか。お疲れ」

「……ん。いい感じに仲良くなれた。いい1日だった。」

「そりゃ良かったな」

「ふわぁ……。お兄様、眠いです……」

うつらうつらと船をこぐフィリア。

「そうだねー。今日はいっぱい動いたし、ちょっと疲れたかな」

「あの、クオさん。ベッド、もう1つ繋げてくれませんか?……今日は、みんな一緒に寝たいので」

「分かった」

無限収納アイテムボックスからベッドを取り出し、宿屋のベッドと繋げるクオ。

″師匠、これ、真ん中寝づらい″

隙間に足をはめて言うサタナ。

「注文が多いな……」

ため息をつきながらも、クオは持っていた材料で、隙間を埋めるものを作成した。

「ほら、これでいいだろ?」

″さすが師匠″

といいながら、サタナは既にベッドに寝転んでいる。

後を追うように、ルノたちもベッドに寝転び、一箇所に固まった後すぐにすうすうと寝息を立て始めた。

「そうとう疲れたんだな」

それを、微笑みながらクオは眺めるのだった。

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ある酒場で、数人の男たちが騒ぎながら酒を飲んでいた。

「最近どうだ?調子は?」

「仕事がうまく行ってりゃ、こんな安酒飲んでねえよ」

「ガハハ!ちげえねえや、ま、高い酒飲んだってお前に味は分かんねえだろうけどな!」

「うっせえよ」

そんな、どうでもいい話に花を咲かせながら、エールをあおる。

しばらくして、満足した男たちは、支払いをさっさと済ませると、その場で解散をした。

覚束ない足取りで暗い路地を歩く男。

しかし、次の瞬間、酔いが一気に吹き飛ぶ事になる。

「よ」

軽い声とは裏腹に、男に叩きつけられる強烈な殺気。

「誰だ」

「まあ、初対面だし分かるわけないよな。……今は冒険者のおっさんって呼んだ方がいいのか?黒幕さん?」

「なんのことだ?」

「とぼけるなよ。……それともなにか?お前の舌についてるタトゥー、確認した方がいいのか?」

それを聞いた男は、警戒をさらに強くする。

「バレているようですねえ。……参考までに、どうして、と尋ねましょうか」

「こっちには優秀な目があるんでね」

「……なるほど、魔眼か何かですかね?……それで、私に何の用で?」

「ん?いや、さっきうちの仲間がお世話になったはずだからな、後始末に」

「ああ。なるほど、さっきのお嬢さんたちのお仲間ですか。……しかし、私の正体に気づいたということは、私の能力も分かっているのですよね?」

「ああ。ウロボロスのタトゥーを入れた人間に憑依して、体を自分のものにできるんだろ?……ほんと、無茶苦茶な能力だよな」

「そこまで分かっているのなら、どうするんです?私は死にませんよ?……それとも、後始末とは懐柔か何かですか?」

「いや、最初の想像通り殺すに決まってるだろ。……龍、あれ」

『最近儂喋らせて貰えんし、扱いが雑じゃないかの!?』

「早くしろ」

『よ、容赦ないの……。はいはい分かったのじゃ!』

やけくそ気味に叫ぶ龍が出したのは一本の鎖。

「じゃあな」

クオが鎖を男に投げ、捕縛する。

そのとたん、男は一切の反応をしなくなった。

この鎖、呪縛の鎖は、縛られた相手のあらゆるものを縛り、封印する呪いの鎖である。

縛られたのが生き物なら、その相手は魂ごと封じられ、仮死状態のようになったままになるのだ。

これならば、いくら憑依が出来ようが関係などない。

「よし、終わりっと。眠いし帰るか」

男を無限収納アイテムボックスにしまうと、クオは踵を返す。

こうして、人知れず闇の組織の黒幕はその人生を終えた。

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