異世界奮闘、チート兄
腕相撲
「おいおい、やめとけ嬢ちゃん」
「あいつ100人抜きやりやがったからな、非力そうな嬢ちゃんに勝ち目はねぇぞ」
「金の無駄遣いはやめときな」
心配しているのか、楽しんでいるのか、色々な野次がとんできていた。
「野次馬の言う通りだぜ嬢ちゃん?流石に女が挑戦してくるとは思わなかったからなあ。手加減できないかもしれねぇぜ?」
へらへらと笑いながら、腕をぷらぷらさせるルノの目の前にいる男。
それに対しルノは、無言で銅貨二枚を置く。
「おいおい、聞いてたのか?」
それを見て、さらに下卑た笑みを強める男。
「……いちいちうるさい。御託は勝負の後にして」
吐き捨てるようにルノは答えた。
「へえ。さっきも言ったが、手加減はできそうにねぇなあ」
先ほどは馬鹿にしたように言っていたが、今はその額に青筋を浮かべている。
互いに手を掴み、腕相撲が始まった。
案の定、ルノは少しずつ押されている。
元の位置に戻すことが少しずつ出来ているが、やはり劣勢のままだった。
「……イカサマして楽しい?」
小さく呟いたルノの言葉に明らかに動揺した様子を見せる。
「……でも、……するなら相手を選んだほうがいい」
そうルノが言った途端、形勢が逆転した。
じわじわと追い詰められていく男。
立て直そうとして気づく。
自分の腕に殆ど力が入らないことに。
それは、男がよく知っている症状だった。
「……どう?自分の罠にはまる気分」
ルノは一気に腕に力を込める。
今の男にそれに対抗する術はなく、その手は台についた。
「か、勝ちやがった……」
「な、何もんだよあの嬢ちゃん」
「じゃあ、これは貰っていく」
200枚はある銅貨の入った袋を取ると、ルノは踵を返した。
それを男は、憎悪に濁った目で見ていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ルノお姉様、お帰りなさい!凄かったです!でも、どうやって勝ったんですか?」
「そうそう!毒が回ってなかったの?」
ルノを迎えたフィリアとルッカが不思議そうに尋ねてくる。
「……ん。毒は打たれた。効かないと思われたのか何回も」
「えっ!?じゃあ」
「大丈夫、打たれただけ。効果が出るまでに隔離すればいい」
「あ、なるほど!」
「どういうことですか?」
フィリアはルノの能力を知っているがルッカは知らない、なので結論にたどり着けなかったようだ。
「私は血を操れる。だから、打たれて血管に入った毒を、効果が出る前に耐性をつけた血で取り囲んだ。ついでに、その毒と混ぜた血を、針にして相手に打っただけ」
「ああ、なるほど。そうだったんだ」
能力の説明を受けて、ルッカは納得したようだ。
だいぶ端折った説明だったが、何も言わないあたり、ルッカも良くも悪くも慣れてきたのだろう。
「みんなー!」
と、そこにセナが帰ってきた。
「……どう?」
「うん!助けられたよ!ありがとうね!」
「……ん。よかった」
「でも、犯人は逃しちゃったんだ……。精霊を操るなんて普通はできないはずだから色々聞き出そうと思ったのに……」
「……気にしても仕方ない」
「そうだね、……うん!じゃあ次行こっか!」
ばっと顔を上げたセナは、そのまま歩き出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日1日存分に楽しんだルノたちは、宿屋に帰って休んでいた。
1人依頼に出ていたサタナは少ししょげていたが。
既に日が暮れてからかなりの時間がたっており、寝静まった後だった。
そこに、ギィッと扉が開き軋む音と、ドサッと言う何か重いものが落ちた音が響く。
それに気付いたルノたちはすぐさま飛び起きる。
その視線の先、部屋の中央に佇む男、クオは、足元に転がる数人の縛られた人間を足でつつくと、にやりと笑って告げた。
「お客さんみたいだぞ?」
「……クオ。それ誰?」
もっともである。
起きたらいきなり縛られた人間が足元に転がっているのだ。
心当たりがないのなら尋ねるのが当然である。
「ん?ルノたち、昼になんかやらかしただろ。どうやら始末しに来たみたいだぞ?」
やはり精霊を操るなど機密中の機密だったのだろう。
だとしたら手がかりをわずかでもつかんだのなら始末をするのが当然だ。
「で、どうする?本拠地も聴き出したし、潰すか?」
「……ん。もちろん。でも、それは私たちだけでやる」
「へえ、なんでだ?」
「これは私たちが起こした問題。それにーー」
「いいきっかけになりそう」
クオの質問に、ルノは妖しく笑って答えるのだった。
「あいつ100人抜きやりやがったからな、非力そうな嬢ちゃんに勝ち目はねぇぞ」
「金の無駄遣いはやめときな」
心配しているのか、楽しんでいるのか、色々な野次がとんできていた。
「野次馬の言う通りだぜ嬢ちゃん?流石に女が挑戦してくるとは思わなかったからなあ。手加減できないかもしれねぇぜ?」
へらへらと笑いながら、腕をぷらぷらさせるルノの目の前にいる男。
それに対しルノは、無言で銅貨二枚を置く。
「おいおい、聞いてたのか?」
それを見て、さらに下卑た笑みを強める男。
「……いちいちうるさい。御託は勝負の後にして」
吐き捨てるようにルノは答えた。
「へえ。さっきも言ったが、手加減はできそうにねぇなあ」
先ほどは馬鹿にしたように言っていたが、今はその額に青筋を浮かべている。
互いに手を掴み、腕相撲が始まった。
案の定、ルノは少しずつ押されている。
元の位置に戻すことが少しずつ出来ているが、やはり劣勢のままだった。
「……イカサマして楽しい?」
小さく呟いたルノの言葉に明らかに動揺した様子を見せる。
「……でも、……するなら相手を選んだほうがいい」
そうルノが言った途端、形勢が逆転した。
じわじわと追い詰められていく男。
立て直そうとして気づく。
自分の腕に殆ど力が入らないことに。
それは、男がよく知っている症状だった。
「……どう?自分の罠にはまる気分」
ルノは一気に腕に力を込める。
今の男にそれに対抗する術はなく、その手は台についた。
「か、勝ちやがった……」
「な、何もんだよあの嬢ちゃん」
「じゃあ、これは貰っていく」
200枚はある銅貨の入った袋を取ると、ルノは踵を返した。
それを男は、憎悪に濁った目で見ていた。
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「ルノお姉様、お帰りなさい!凄かったです!でも、どうやって勝ったんですか?」
「そうそう!毒が回ってなかったの?」
ルノを迎えたフィリアとルッカが不思議そうに尋ねてくる。
「……ん。毒は打たれた。効かないと思われたのか何回も」
「えっ!?じゃあ」
「大丈夫、打たれただけ。効果が出るまでに隔離すればいい」
「あ、なるほど!」
「どういうことですか?」
フィリアはルノの能力を知っているがルッカは知らない、なので結論にたどり着けなかったようだ。
「私は血を操れる。だから、打たれて血管に入った毒を、効果が出る前に耐性をつけた血で取り囲んだ。ついでに、その毒と混ぜた血を、針にして相手に打っただけ」
「ああ、なるほど。そうだったんだ」
能力の説明を受けて、ルッカは納得したようだ。
だいぶ端折った説明だったが、何も言わないあたり、ルッカも良くも悪くも慣れてきたのだろう。
「みんなー!」
と、そこにセナが帰ってきた。
「……どう?」
「うん!助けられたよ!ありがとうね!」
「……ん。よかった」
「でも、犯人は逃しちゃったんだ……。精霊を操るなんて普通はできないはずだから色々聞き出そうと思ったのに……」
「……気にしても仕方ない」
「そうだね、……うん!じゃあ次行こっか!」
ばっと顔を上げたセナは、そのまま歩き出した。
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その日1日存分に楽しんだルノたちは、宿屋に帰って休んでいた。
1人依頼に出ていたサタナは少ししょげていたが。
既に日が暮れてからかなりの時間がたっており、寝静まった後だった。
そこに、ギィッと扉が開き軋む音と、ドサッと言う何か重いものが落ちた音が響く。
それに気付いたルノたちはすぐさま飛び起きる。
その視線の先、部屋の中央に佇む男、クオは、足元に転がる数人の縛られた人間を足でつつくと、にやりと笑って告げた。
「お客さんみたいだぞ?」
「……クオ。それ誰?」
もっともである。
起きたらいきなり縛られた人間が足元に転がっているのだ。
心当たりがないのなら尋ねるのが当然である。
「ん?ルノたち、昼になんかやらかしただろ。どうやら始末しに来たみたいだぞ?」
やはり精霊を操るなど機密中の機密だったのだろう。
だとしたら手がかりをわずかでもつかんだのなら始末をするのが当然だ。
「で、どうする?本拠地も聴き出したし、潰すか?」
「……ん。もちろん。でも、それは私たちだけでやる」
「へえ、なんでだ?」
「これは私たちが起こした問題。それにーー」
「いいきっかけになりそう」
クオの質問に、ルノは妖しく笑って答えるのだった。
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