異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

「お姉ちゃん、なんで捕まったの?」

「いやー、森をぶらぶらしてたら、ついついうたた寝を……」

「もー、しょうがないんだから。今度からは1人でぶらぶらしちゃダメだからね?」

「気をつけるよー」

ルッカの説教は案外早く終わったようだ。

「……この姉にしてこの妹ありか……。……ルッカが思った以上にシスコンっぽいな」

「姉妹の仲がいいのは良いこと」

「ですね!私たちも見習いましょう!」

そう言いながら、クオの腕をとる2人。

「ほら、お姉ちゃん。クオさんたちに自己紹介しなきゃ」

「そうだね。……えーと。初めまして?ルッカの姉のセナだよ!」

にへーと言った、なんとも気が抜けそうな表情で、ルッカの姉、セナは自己紹介をした。

「……クオだ」

「ルノ」

「フィリアです!」

余りのマイペースなセナの態度に、なんとなくついていけなかったクオは自分の名前だけを告げる。

「……いやぁ。うちの可愛い妹がお世話になりました!」

ビシッと敬礼するセナ。

「さあ!みんな、脱出だー!おねえさんにつっづけー!」

『おー!』

勢いよく拳を上げて進むセナに、同じく囚われていた人たちのうち、子供は全員それに続いた。

恐らく、閉じ込められた時にセナの明るさに希望を持ったのだろう。

色々な悲劇があったはずなので底抜けのとまではいかないが、表情が少し明るい子多い。

何割かいる、うつむいている子供にも他の子が励まして並んで歩いている。

「ありがとうごさいます。……この子達がこうして笑っていられるのが救いです」

保護者なのか、1人の女性がセナにお礼を言っていた。

「えーと?大した事はしてないですよ?私も捕まってましたし、怖かったですからね!」

照れ臭そうにしながら、怖かったの部分で胸を張るセナ。

「セナねーちゃん怖がりなんだー!」

『こーわがりー!』

「なんだとー!人を馬鹿にする子は、このセナがこらしめてやる!とうっ!」

芝居くさいセリフで、決めポーズまでとったセナが、子供たちに飛びかかる。

そのまま鬼ごっこが始まった。

「……すみません、クオさん。お姉ちゃん、さっきは少し緊張していたみたいで。……しばらくすると直るかもしれないです」

コソッとルッカがクオに声をかける。

「……あのテンションで緊張してたのか……」

愕然とした様子でクオが呟き、ルッカはそれを見て苦笑していた。

そのまま、クオは囚われていた人たちの、大人組に声をかける。

「怪我人とかはいないか?」

「はい。多少の擦り傷はありますが、これくらいならなんともないかと」

「ま、化膿でもしたら面倒だし」

そう言って全体に回復魔法を一気にかける。

「……助けていただいただけでなく、傷まで治していただいて……。本当に、なんとお礼を言ったら良いか……」

「あー。別に感謝はいい。助けたっていってもこっちにも事情があってのことだしな。……俺たちに向ける感謝の気持ちがあったら、全部あいつに回してくれ。……たぶん今回の立役者はあいつだろうからな」

そう言ってセナを見るクオ。

「……確かに、彼女は私たちの心を保つ希望となってくれました。……こんなことになってしまいましたが、あの子たちを見るに、まだ村の未来はありそうです。……本当に、感謝しても仕切れませんよ」

そこまで言うと、一度言葉を区切る。

「……しかし、それは貴方さまがたに感謝をしない理由にはなりません。……それに、理由無しで行動する人などいませんよ。……私たちは、貴方の行動だけでなく、その優しさにも感謝と尊敬の念持っているのです。……これくらいは、受け取ってください」

「……別に優しくは無いと思うんだが……」

そう言う女性の真摯な表情に、困ったように頭を掻くクオ。

「……貴方さまには、きっと分かりませんよ」

そう微笑んで女性が言う。

「これもお兄様のいいところの1つですから!」

「……クオは、こういう人」

ルノとフィリアの2人は、まるで自分が褒められたかのように嬉しそうだった。

「ルッカー!みんなー!こないのー?」

叫ぶ声の方向を見ると、セナが手を振っていた。

いつの間にか移動していたサタナも、子供たちと仲良くなっており、ドヤ顔で魔法を見せては子供が騒いでいた。

「うーん!今いくよー!」

こちらも負けじと大声を出したルッカ。

「皆さん、行きましょうか」

「ああ。……なんつうか」

そこまで言ったクオは迷うそぶりを見せると、

「……いい姉だな」

そう言った。

それを聞いたルッカは、

「はい。私の頼りになるお姉ちゃんです」

満面の笑みで、そう言うのだった。

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