異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

本拠地

それから30分ほど。

洞窟の近くまで来た山賊たちは、膝に手をついて立ち止まった。

本拠地の近くで緊張が和らいだのだろう、中には今にも地面に倒れこみそうなものまでいた。

そんな彼らは、一切気付くことのないまま、自らの胴体と別れを告げた。

頭を失った6、7個の首から、周りを赤く染める血の雨が降り注ぐ。

そうして崩れ落ちた死体を、クオは興味も無さそうに眺めていた。

「立ち止らずに本拠地に駆け込めば、仲間も警戒とかができたかもしれねぇのにな。……まあ、俺たちには好都合だし、どうせたどり着く前に切ってただろうから変わんねぇか」

茂みがガサガサと揺れ、そこからルノたちが出て来た。

血の雨の範囲内にいたにも関わらず、4人の体のどこにも血は付いていない。

「……ルノか」

「……ん。血の扱いならお手の物。……待ってて、今、クオも綺麗にする」

そう言ってクオの手を取るルノ。

すると、べったりとこびりついていた血が、みるみる流れていき、クオの足元に血溜まりを作った。

血が流れていくにつれ、手を取るルノの距離が、じりじりと近づいていたが。

「サンキューな」

完全に血が取れ、綺麗になったクオ。(もっとも、元々真っ黒な装備に身を包んでいたので、血は目立っていなかったが)

「……ん」

クオの礼にこたえるルノは、少し誇らしげであった。

「よし、じゃあそろそろ山賊の本拠地壊滅させに行くか」

こうして、本拠地を見つけたクオたちの、殲滅作戦が開始されようとしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あー。どうするか……」

山賊の本拠地である洞窟の入り口で、クオは考え込んでいた。

見張りに付いていた山賊は既に始末しており、外に何人かいる山賊も、洞窟の中にいる山賊も常にマップで把握している。

なので、クオたちが今敵に会うことはなく、こんな敵地の前で考え事が出来るのだ。

「……拐われた人がいるからなぁ。……それがなきゃ、洞窟内爆破して燃やせば一発なんだが」

しばらく悩んでから、クオは指示をだす。

「サタナは外にいる残党狩り、ルッカとフィリアはここで討ち漏らしがいたときの始末。ルノは俺と来てくれ」

「分かりました」

「ん」

「が、頑張ります!」

″ふっ、朝飯前″

「よし、さっさと潰すぞ」

それぞれが指示のとおりに行動を開始した。

目の前に映った敵をすぐさま切る。

もはや作業となりつつある動作で次々に敵を処理していく。

ここにきて始末した山賊の数は軽く数十に及び、洞窟のフロアは血で満ちていた。

「……こんなもんか。ルノ」

もう1人追加で切ったクオは振り返りルノに合図する。

「……ん」

呼びかけられたルノが血に触れると、今いるフロアからどんどん血が広範囲に広がっていった。

そしてもう一度触れると、血が少し揺らめいた後、幾つもの絶叫が洞窟内に響き渡った。

それを聞き届けた後、クオが山賊だけ赤い点で表示するようにしたマップには、赤い点が1つ。

先ほどまではまだ10を軽く超える数の点があったことから、ルノの行動で、少なくとも二桁の敵が死んだのだ。

「……ルノ、相変わらず無茶苦茶だな」

クオが苦笑交じりに言う。

「……ん。クオと2年も一緒にいる。こうなるのは当然」

「いや、俺のせいじゃないだろ」

なぜか得意げに言うルノに、突っ込むクオ。

「ま、1人残して全員片付いたし、最後の1人もさっさと片付けるか」

言いながら、ちらりと向ける視線の先には、赤い槍のようなもので貫かれている男の死体。

これが、ルノの使った範囲攻撃の正体であった。

「あーあ。急に入り込んできやがって、おかげで俺の住処が汚くなっちまったよお!」

奥から聞こえてきた声。

そこから出てきたのは、体長2メートルほどの、大きな戦斧を担いだ巨漢だった。

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