異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

討伐

「……クオ。今日も依頼?」

椅子に深く腰掛けてぼーっとしていたクオの肩を軽く掴み、ルノが尋ねる。

初依頼から4日。

次々に依頼を受けていったクオたちは、既にDランクへと昇格しており、討伐系の依頼も解禁されていた。

「んー。そうだな。今日までやって、しばらくは休みにするか?」

「ん。それがいい。……そろそろ、ルッカのお姉さんも探してあげたい」

この数日、共に行動していたルッカは、街中に姉妹を見つけては寂しそうに眺めていた。

「……ま、ルッカの姉探しはそれこそ、依頼やってればばったり会うかもしれないからなあ」

実際、どこにいるかも分からない今、依頼の途中や、ギルドにいる冒険者から手掛かりを得るのが1番の有効策だった。

「よし、じゃあいくか」

「ん」

気合いを入れるように勢いよく立ち上がったクオと、流れるようにクオの隣にぴたりと寄り添うルノ。

2人は残る仲間たちに支度をするように言うと、全員を連れ立ってギルドに向かった。

「あ、クオさん」

ギルドにつくと、それに気付いた受付嬢(最初の依頼からずっと彼女がクオたちを担当しており、毎度お馴染みの受付嬢だった)が、ギルドに入ってきたのがクオたちだと分かり、若干表情をかたくする。

「……んと、今日はこれで」

Cランクの依頼をざっと見たクオは、討伐系の依頼を受け付けへ出す。

「はい。レッドボア6体の討伐ですね」

受付嬢が手慣れた手つきで受理したあと、クオたちは目的地へと向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……じゃあ、とりあえず5人で分担、やばくなったらこれに魔力を注げ。あと討伐したらレッドボアに触れながら起動な」

全員に魔力が送られるとクオの近くに転移する腕輪をつけさせる。

「えと、こうですか?」

「……っとと!お兄様が目の前に!なるほど、こうなるんですね」

試しに魔力を注いだフィリアが、急に目の前にクオが現れたことに驚いていた。

「……なるほど」

″……後ろだ″

それを見たルノとサタナは同時に使用した。

ただし、ルノは転移してクオに寄り添い、サタナはクオの背後をとって暗殺者のようなセリフを書いて楽しむという、何とも性格の現れる使い方ではあったが。

「あ、あの。依頼を早くやりませんか?」

『人数が増えて実に賑やかじゃな!』

『何というか……。これから討伐だとは到底思えない雰囲気ですね』

森のど真ん中でがやがやと騒がしくしているクオたちは、しばらくして落ち着くと、討伐を始めた。

結果だけいうならば、余裕だった。

1人で一頭を狩ることにした5人。

普通ならDランクには1人でレッドボアを狩るのは難しいが、

血を操り、相手を即死させるルノ。

切れ味からして抜群の性能を誇る魔剣を持つフィリア。

名実共にAランクのサタナ。

弓聖のLv10、スナイプなら百発百中のルッカ。

そしてあのクオである。

レッドボアごときに負ける要素など微塵もなく、移動に時間は多少かかったものの、戦闘自体は1分もかからずにけりがついた。

帰り道。

歩いているクオたちの周りに十数人の反応があった。

立ち止まったクオたちの行く手を阻むように現れる男たち。

「おいおい、こんな場所に彼女たち連れてピクニックか?」

「こういう場所は山賊なんかが現れて危険なんだぜ?……例えば、俺たちみたいななあ!」

何が面白いのか、ギャハギャハと汚い笑い声を上げる山賊たち。

「……あー。腹いてえ。お?よく見りゃエルフがいんじゃねえか、最近1人入ってきたやつは頭がヤらせてくんねえからなあ……。おいガキ、その女ども置いてきゃみのがしてやろうか?俺たちゃ優しいからな、授業料ってやつで勘弁してやるよ。……もっとも、女どもは別のお勉強が待ってるがなあ?ぎゃははは!」

その言葉に嫌悪感をあらわにしたルノたちが、臨戦態勢に移る。

しかし、ルノたちが動くよりも先に、先頭に立っていた山賊の口が削げ落ちた。

唇が無くなったことにより上手く喋れなくなった山賊は、口にたまった血をゴポリと吐き出す。

「うちの仲間たちをどうするって?……舐めやがって。……そんな相手を不快にしかしない口なんて要らないだろ?」

そう言ってくるりと引き返したクオは、八百万で自分の前に一本の線を引く。

「……ここから入った部分は切り落とす」

「さ、さっきのはあいつが油断したからだ!複数でやりゃ負けはしねえ!」

「そ、そうだ!」

「所詮は武器一本しか持ってねえ!一斉に襲いかかるぞ!」

そう言って飛びかかった山賊たち。

次の瞬間には、それぞれの一部分が取れていた。

ある者は指先が切り取られ。

ある者は足が膝下までなくなり。

ある者は体が2枚におろされていた。

全員に共通しているのは、その切り口が全て地面に入った線を超えたとこだということだ。

返り血で少し赤くなった八百万を振って血を払い、鞘に直すと告げる。

「で、次は?」

もう誰も抵抗する気など残っていなかった。

ただひたすらに悲鳴をあげながら逃走する山賊たち。

それを見送った後、クオはいった。

「多分ルッカの姉が拐われてるんじゃねえか?」

「多分、そうだと思います。……クオさん」

「分かってるよ、たまたま情報を見つけたからな、うちの仲間たちに下卑た視線を送った落とし前もつけてもらうためにも、いくか」

その言葉に嬉しそうにするルッカと、頷く3人。

「……ありがとうございます」

気にするなとばかりにひらひらと手を振るクオ。

クオたちは、逃した山賊を追い始めた。

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