異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

初依頼

アスタと相談をしたクオは、ルッカとサタナには自分のスキルの大まかな解説を、それをしたうえで5人に新たに追加されたスキルについて説明をした。

「またお兄様は強くなるんですね!」

「……またクオが強くなると離される。私も頑張る」

「そこまで滅茶苦茶なスキルたちではないんですね?私、神が使うスキルを持ってるなんて言われるだろうって考えてましたから。予想のギリギリ範囲内です」

″流石師匠。で、これだけ?″

『主人がとんでもなく強いのなんて今に始まった事にではないしの……』

と、5人の誰1人としてスキルに驚いた者は居なかった。

完全に想定外に説明が早く終わったクオは、全員でギルドにクエストを受けに来ていた。

「……って訳で、初クエストだ」

そう言いながらボードを眺め始めるクオは、今の自分たちの受けられる依頼、Eランクのクエストの一覧から受ける依頼を選んでいた。

とはいえ、Eと言えば最低ランク。

受けられる依頼は、ほとんどお使いのようなもので、冒険といっても精々が薬草の採取程度。

それすらも、成功報酬は大体10本で銅貨1枚と、日本円にして百円程度しかなかった。

「……これは、なるべく早くランクを上げるしかないか……」

あまりの内容にがっくりと肩を落としていたクオは、ある依頼で目が止まる。

精霊草の採取。

それは一本につき銅貨三枚という、他とは一線を画した報酬であった。

(アスタ)

『はい。精霊草についてですね?』

(ああ)

『精霊草は、ただの薬草が普通より多い魔力を蓄えたことによって効果が増大した草のことですね』

(報酬が高い理由は?)

『突然変異のようなものなので、数が少ないということ。薬草はもちろん、毒草とも似ているため、区別がしずらいことで、1つあたりの単価が高いのだと思います』

(へえ。……どうするか)

レアだと聞いて、受けるか迷うクオ。

『クオさん。この依頼。受けましょう』

しかし、アスタは乗り気だった。

(……どうしてだ?)

『私、アスタこと叡智のスキルなら、確実に精霊草を採取できます』

どことなく自信を感じるアスタの言葉に、クオは依頼を受けることにした。

「精霊草の採取を受ける」

「はい。かしこまりました。……同時に薬草採取の依頼を受けることをお勧めしますが、どうしますか?」

(だとよ?)

『いえ。必要ありません。薬草を採取している時間で精霊草を採取したいので』

(そうか)

「いや、いい」

「……はい。かしこまりました。では、気を付けて行ってらっしゃいませ」

受付嬢の目が、バカを見るような蔑んだ感情を少し含んだ視線に変わる。

実際、傍目から見ると粋がっているルーキーにしか見えないため、クオは何も言わずにギルドを出た。

(……で、どうするんだ?)

森についたクオは、アスタに尋ねる。

『まずは、鑑定で精霊草を見つけて下さい』

言われたとおりに、精霊草を探し始めるクオたち。

見た目が同じ植物にはルノの血霧ブラッドミストも正確に判断が出来ないため、虱潰しに探し回ることになった。

そして30分。

やっとクオたちは、精霊草を見つけることが出来た。

「……30分で1本か……。これはあの報酬も納得だな」

屈みっ放しで固まった腰をバキバキと鳴らしながらクオが呟く。

このままでは、2桁集めるのに5時間はかかってしまう。

(で、どうするんだ?)

これでは明らかに金欠になるため、アスタに尋ねる。

『ええと。クオさん、魔術を使わせてもらいますね?』

(ん?ああ)

返事をした後、クオの頭の中にマップのようなものが表示される。

(これはなんだ?)

『空間魔術などの応用の空間把握でここら一帯を私が把握して、マップという形でクオさんに見せています。……ちなみに、サタナさんの魔力操作の方法で、仲間の皆さんにこのマップを見せることも可能です』

マップはギリギリ街が映っている。

ここから街までは10キロ。

つまり、このマップは一辺が10キロの正方形だった。

しかし、これでは移動などは楽になっても精霊草の採取量は変わらない。

(……まだなにかあるのか?)

『もちろんですよ。……これでどうです?』

アスタがそう言うと、マップに赤い点が表示される。

(この赤い点は?)

『もちろん、精霊草です』

広範囲のマップには、赤い点がざっと数えて100はある。

それが全て精霊草。

そしてこの情報はここにいる5人で共有可能。

すぐさま4人に説明をしたクオは、ばらばらに動き出した。

乱獲の開始である。

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採取を終え、ギルドに帰ってきたクオたち。

「あ、おかえりなさい。どうでしたか?」

依頼を受けた時と同じ受付嬢に迎えられたクオは、カウンターの上に、大きな袋を5つ置き、封を解いた。

そこから溢れ出す草。

「ええと、精霊草以外は受け付けませんので、御自分で仕分けていただけると……」

そう注意する受付嬢に、しばらくしてなにを言われたのかを理解したクオは、

「ん?全部精霊草だぞ?」

平然とそう口にする。

「……はあ。私たちの方で確認しますが、精霊草以外が入っていたら、その植物は全て買い取ってもらいますね」

大きくため息を吐いた受付嬢は、そう言って袋を抱えてカウンターの奥へ消えていった。

サタナがいるからこそ絡んでこないが、他の冒険者たちもイライラといった様子でクオを見ている。

しばらく経って、カウンターの奥から微妙に震えている受付嬢が帰ってきた。

手には先ほどよりもかなり小さい、しかしずっしりとした袋を持っている。

「お、お待たせしました……。精霊草、ご、563本。報酬の、金貨16枚、銀貨8枚、銅貨3枚です」

563本。

それは、クオたちの持ってきた草が全て本物の精霊草であったと信じさせるには充分な数字だった。

「ま、そんなもんか」

素っ気なく報酬を受け取りギルドを去るクオ。

残った冒険者たちは、あんぐりと口を開けている。

中にはジョッキごと酒を落として割っている者もいた。

この日、新しく入ったルーキーは規格外かもしれないと言う噂が、魔術狂いマジックジャンキーの師匠であると言う噂も後押しして、街で広まっていった。

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