異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

宿屋

ギルドを出たクオ一行は、去り際に尋ねたおすすめの宿屋を探して歩いていた。

「お兄様、もうすぐですか?ええと、霧のシルフ亭?」

うろ覚えだったのか、少し頭をひねってから宿の名前を出したフィリア。

「ふ、フィリアさん。森のですよ」

「え、あ、ええと、……知ってましたよ?」

さり気なく小声でフィリアにだけ伝わるように指摘をしたルッカの気遣いは、慌てて普通の声量で誤魔化したフィリアで台無しだった。

「……間違いは誰にでもある」

暗に気にするなと告げながら温かい目で見ながらフィリアを撫でるルノに、フィリアの顔がみるみる赤くなり、小さくはいと呟いたまま俯いた。

″この光景、何かくるものがある。ね、師匠?″

「何がくるのか知らねえが、ほら、もう着くぞ」

フィリアの様子と、相変わらずマイペースなサタナのセリフに軽く笑いながらも、流石にこの雰囲気のままではフィリアが可哀想だと思ったのか、強引に話題を変えるクオ。

「そ、そうなんですか!急ぎましょう!」

意図を察したフィリアもすぐさま反応する。

それを残りの3人は微笑んで見ている。

″(*´艸`*)″

サタナの微笑みは、自分の顔はしっかりと微笑んでいるが、顔文字はどちらかと言うとニヤニヤが似合うなんとも言えないものだったが。

「……いらっしゃい」

5人が宿屋の扉をくぐると、受付に座り目を閉じていた男が目を開きスッと立ち上がる。

かなり短く切られた髪と、190センチはあるだろう身長。

あまり反応しないらしい性格とあいまって、どこか出来る男という印象だった。

「泊まりか」

「ああ。取り敢えず4人ーー」

「3人部屋と2人部屋」

4人部屋、と言い切る前にルノが答える。

ちらりとクオに視線を向ける男。

「はあ、じゃあそれで」

″師匠。弟子たるもの常に師匠を見て学ばなければならない。というわけで4人部屋を希望″

そう書いたサタナをルノとフィリアが連れて行く。

しばらくたった後、戻ってきたサタナは親指を立ててドヤ顔をしていた。

それを見て説得に成功したと悟ったクオは、結局4人部屋にすることになった。

「4人部屋と1人部屋。飯は?」

「いくらだ?」

「一食銅貨三枚だ。体を拭く湯やタオルは銅貨一枚。どうする?」

「飯は明日から頼む。あとはいらない」

「……まいど。2号室が1人部屋、3号室が4人部屋だ」

「わかった」

鍵を貰ったクオたちは、部屋へと上がった。

その後、部屋につき寛ぐフィリアとルノの傍ら、サタナが氷魔法を使いクオの身動きを封じようとする、なんともクオの弟子としての才能を感じさせる行動を取るも、クオにあっさりと拘束を解かれたり、1人が寂しくなったルッカが、軽く扉を開けて中を覗いていたので女子3人で中に引き込んだり、ルノに説き伏せられて全員で寝たりと、休んでいるのか疲れているのかわからない夜を過ごした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

朝。

なんとはなしに目が覚めたクオはむくりと起き上がる。

既に全員が起きていたらしく、フィリアとルノはクオの脇でゴロゴロと。

サタナは魔法で毛布を浮かしハンモックのようにしてゆらゆら揺れている。

ルッカはもうすでに服を着替え、いつでも行動出来るようにしていた。

「おはよう」

とりあえず軽く朝の挨拶をしたクオに、

″おはよう師匠。寝られた?″

「……起きた?……おはよう」

「おはようございます。お兄様」

「あ、おはようございます」

『おはようなのじゃ』

『おはようございます』

と、返って来る6つの返事。

『あ、あれ?え、えーと。クオさん?』

なんとなく聞き覚えのあるような声が、クオの内側から響いていた。

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