異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

師匠

″師匠になって欲しい″

「いや、別に2回書かなくても読まなかったわけじゃねぇよ」

反応を返さなかったクオにもう一度頼む少女。

″師匠になってくれるなら、なんでもする″

″……なんでもする″

「おい、お前なんで今2回書いた。わざとやってるよな?」

″(・д・)?″

クオが問い詰めると顔文字を書き出した少女。

『なんじゃろう……何かこの娘に通じるところがあるのじゃが』

同じく魔力の文字が見えていた3人は、龍の言葉を聞いて、

「「「ああ」」」

「……龍の亜種?」

「確かにあのお兄様を馬鹿にする感じは龍さんにそっくりですね!」

「……ああ、こうやってクオさんの周りには濃ゆい人が増えていくんですね……」

口々に納得の声を上げる3人。

『な、なんじゃ、3人のセリフが遠回しに儂を貶しているような気がするの……。なるほど、儂はあんな感じなのじゃな……』

自覚がなかったのか、愕然とした様子で呟く龍。

『ちょっと、今後は控えめでいくのじゃ……』

「え、龍さん、お兄様をからかわないんですか!?」

「え、えと、……頑張ってください?」

龍の呟きに、ルノは冗談だと思ったのか微笑み、フィリアは驚き、ルッカは取り敢えず励ました。

実際冗談だったのだが、この反応を見て思うところがあったのだろうか。

『儂、自重しようかの……』

今度の呟きは少し本気のようだった。

「おい、そろそろ戻ってこい」

クオの呆れたような声に振り向いた3人が見たのは、顔を片手で覆い、俯くクオと。

なぜか空中にクオの絵を書き出した少女だった。

「ええと、何があったんです?」

「いや、こいつがなんで喋らないか聞いたんだが……」

そう言ってちらりと少女を見るクオ。

それに気付いた少女は文字を書いた。

″喋るのは面倒。それにこうやって文字を書くと魔力操作の技術も上がる。正に一石二鳥。穴のない完璧な作戦″

そこまで書き終わると親指を立てたイラストを書きサムズアップ。

「あ、あはは……ええと、ごめんなさい!」

ルッカは目を背けるとササっと後ずさった。

「収集がつかねぇ……」

ただギルドに登録しようとしただけなのにこの状況である。

と、そこで状況を打破する人物の声がかかる。

「おい!また魔法狂いマジックジャンキーがやらかしたのか!」

バン!と扉を蹴飛ばすように勢いよく開けた男は、入るなりそう叫ぶ。

そして中の惨状を見るなり、叫び声の音量が1.5倍ほどになる。

「は、はあぁあ!?なんじゃこりゃぁ!おい、魔法狂いマジックジャンキー!お前なんでいつもより被害がでかいんだよ!今まで床が一部焦げるくらいしかなかったじゃねぇか!」

「……それは『しか』なのか?……」

いつもの被害が分かった時に、クオですらそう呟いていた。

『いや、多分絡まれたら主人もやるじゃろ?というか、ギルドを消し飛ばしてもおかしくはないのじゃ』

「……いやねぇよ」

呆れたように呟くクオだったが、

「……お兄様なら……」

「……ん。普通にすると思う」

「で、消し飛ばした後に『あ、やっちまった……面倒だし全部潰すか』とか言って冒険者ギルド潰す所まで想像出来ますね」

と、3人は割とあり得ることとして捉えていた。

「流石に今回は説教だ!ほらこっちこい!」

耳を引っ張りギルドの2階へ連れていく男に、

″痛い痛い。解放を要求する。というかあれだけで怒るなんて器が小さい″

″┐( ̄ヘ ̄)┌″

わざわざ顔文字を男の前で左右に振る余裕を見せる少女。

それに血管を浮かび上がらせながら、

「そ、そうだ。すまんがそこにいる4人も来てくれ」

と、クオたちに言う。

″いや、脳筋、先に名乗れ。私の師匠が誰こいつって顔になってる″

そう書くとまた顔文字を振り始める少女。

「あ゛……ああ。そうだな。……俺はここのギルマスのカリバだ。……今回はこいつがなんでこんなことをやらかしたのかを聞きたいんでな、来てくれるか?」

″そんな、私はただ師匠に思いの丈をぶつけただけ″

「お前の思いが質量伴ってギルド半壊させてんだよ!黙ってろ!」

「で、来てくれるか?」

クオはギルドを一瞥すると、

「……はぁぁぁ。まあしょうがないか、分かったよ」

「そうか!助かる」

そう言って少女をズルズルと引きずっていくギルマス。

″師匠。先行って待ってる″

″(・ω・)ノシ″

少女はのんきにそう書き残すと2階へ消えた。

魔法狂いマジックジャンキー……。ぴったりだな」

見えなくなってポツリと呟いたクオのセリフに、残りの3人は確かにとでも言うように深く頷いた。

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