異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

ギルド

「こりゃ……すごいな……」

「…綺麗」

「落ち着きますね!」

「私の住んでいた国の城下町って、こんなにすごいところだったんですね」

4人が4人、それぞれ感嘆の声を漏らす。

彼らの視線の先には、巨大な壁があった。

材質は木。

しかし、ただ木の板を繋いだものでなく、木の幹が幾重にも重なってできたものだ。

まるで門のように一部開いている場所から見える街並みは、家の基盤に木を丸々利用していたりと、森の中という印象にそぐわない。

世界樹からだろう、城下町までふわふわとした優しい光の粒のようなものが舞い降りていて、全体を包み込んでいる。

まさに、自然と同化した街であった。

『……そろそろいいかの?』

しばらく惚けていた4人は、龍の一言で引き戻された。

「身分証はあるか?」

そう尋ねるエルフらしき騎士。

一応美形ではあるが、どことなくぶっきらぼうで素っ気ないような印象だ。

他の種族も受け入れている以上、よくあるエルフのイメージ通りな人ばかりではなくなっているのだろう。

「ない」

「ここにいる4人ともか?」

「ああ」

「……そうか。身分証の仮発行は1人銀貨一枚だが、その前に、」

そう言って取り出したのは人の顔ほどの大きさの水晶だった。

「全員これに触れてくれ。……犯罪歴を調べるものでな、犯罪を犯したものが触れると赤く輝くんだ。普通は青色だがな」

それを聞いた4人はさっさと水晶に触れる。

当然4人とも青。

「……よし、あとは銀貨4枚だな。払えるか?」

「ああ。……身分証の発行はどうすればいいんだ?」

「ん?それなら、冒険者ギルドだな。……ああ、登録したら報告に来るといい。銀貨は返すからな……っと、ほら、できたぞ」

そう言いながら騎士が灰色のプレートを4枚渡す。

そしてそのまま少し間をあけると、

「ようこそ、森国ユグドラシルへ!」

両手を広げ、声を張り上げた。

きた全員にやっているのだろうか。

騎士はどことなく疲れて見える。

「……大変だな」

「……お疲れ様」

「あの!が、頑張ってください!」

「つ、疲れたら休むのも大事ですよ?」

「くっ……優しさが変にしみるぜ!」

労わるような同情の目に、居心地悪そうにする騎士。

それを尻目に、クオたちはユグドラシル内へと足を踏み入れた。

「……と、まずは冒険者登録だな」

前から登録しようとはしていたが、結局先延ばしにしていたものをやっと出来ることに、にやりと笑うクオ。

「……クオ、楽しそう」

「お兄様、冒険者登録は夢でしたからね!」

「へぇ……クオさんも案外子供っぽいところあるんで……あれ?クオさんが冒険者登録?なんだか嫌な予感しかしないんですが」

『……まあ、『常識』や『自重』なんかは主人に一番ないものじゃからのう。……何をやらかすんじゃろうか』

クオが楽しみにしていたことを前から知っていたルノとフィリアはにこにことクオを見つめ、ルッカはクオの冒険者登録と聞いて頰を引きつらせ、龍はその不安を煽っていた。

だべりながら歩く街並みは、やはり門から見たものと大して変わらなかった。

強いて言うなら、神秘的な街並みに反して、多種族が行き交う道路は騒々しいと言うことぐらいだろう。

道を尋ね着いた冒険者ギルドは、やはり木に包まれていた。

しかし所々にはレンガが見え、苔が生えたり欠けたりしていた。

まさによくある冒険者ギルドを木が呑み込んだと言った様子だ。

そこに取り付けられた木の扉を、クオは躊躇いなく開ける。

一気に集まる視線。

それもすぐに霧散し、元の喧騒に戻る。

何割かは嫉妬や敵意を持ってクオを見続けていたが。

それも当然だろう。

ルノやフィリアはもちろんのこと、ルッカもとてつもない美少女なのだ。

緑色の髪は真っ直ぐ腰まで伸び、それを先端で緩く留めている。

青い目は、どこか優しそうに少し垂れていた。

何処かほんわかした雰囲気を纏いながらも所作は所々とても綺麗で、教養の良さが伺える。

もしも姉がいると知ったら周りが受ける印象は世話焼きの妹。と言ったところだろう。

そんなルッカも含めて3人、美少女を引き連れているのだ。

そういう視線が集まるのも無理はなかった。

中にはクオに絡もうとしているのか、席を立とうとする者までいる。

しかし、そんな視線もすぐになくなることになる。

クオたちが受付まで行く途中、キィと扉を開いて現れたのは黒いフードに身を包んだ人物。

それを見た冒険者たちが騒ぐ。

「やばい、あいつがきた!」

「またギルドの修繕かぁ」

「まあ、そんなに被害出ないからマシじゃねえか」

「相手以外は、だがな」

「ちげえねえ」

「……?なんだ?」

その様子を見たクオが首を傾げる。

次の瞬間。

暴風テンペスト

とてつもない暴風がギルド内に吹き荒れる。

その風は台風と互角にも思えるほど凄まじい風力で、このままだと確実にギルドは半壊、もしくは全壊するだろう。

暴風テンペストとは、風魔法の最上位なのだ。

気軽に屋内で放っていい魔法ではない。

クオはすぐさま空間魔術と重力魔術を駆使し、暴風を抑えた。

それを見たフードの人物がピクリと反応する。

「……なんとかなったな」

無事に押さえ込んだ後、ため息をつくクオの視界に文字が映る。

″師匠″

黒い字が空中に浮かぶ。

おそらく魔力で書かれたのであろう。

それを書いたのは先ほど魔法を放った少女だった。

″見えてる?″

「……ああ、見えてはいるが……」

″さすがは師匠″

「……ちょっと待て、ついさっき魔法で攻撃されたやつに師匠とか言われても訳が分からないんだが」

″さっきのは師匠の魔法の技術を見るため″

「……それで最上位魔法放つとか、師匠見つける前に死人がでるだろ……」

″師匠を見てビビッときた。普通ならあんな魔法使わない。師匠が初めて。それに魔法を見て確信した。今まで見たことない魔法。魔力のコントロールも綺麗だった。ぜひ、私の師匠になって欲しい″

風によりフードは脱げており、真っ黒な髪と、赤い目をしたその少女は、眠そうに半分閉じた目をこれでもかと輝かせてクオを見ていた。

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