異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

既視感

漢女キャサリンと別れることかできたクオの足どりは軽く、少しハイペースで森の中を進む。

「……クオ、嬉しそう」

「足どりが弾んでますね」

「当たり前だろ。筋肉と別れられたんだ、嬉しくないはずがない」

『ブルブルと子鹿のようで可愛かったぞ?主人』

「……一度も喋らなかった奴には言われたくないんだがな」

『ふ、あそこで儂が喋れば状況説明が面倒じゃったぞ?何せ刀が喋っておるのじゃからな。説明が終わったとしてもじゃ、儂は性別は女なのじゃ、あのキャサリンとかいうのが儂の分も服を作ろうとしたらまだ長引いたじゃろうな?つまり儂の行動は最善だった訳なのじゃ!……プクク!主人よ、儂に感謝こそすれ、怒られる筋合いなどないのじゃ!』

イラついたクオのセリフに、龍はペラペラと論破する。

しかも最初から最後まで煽るのを忘れない。

漢女キャサリンが来てから喋らなかったことがストレスだったのだろう。

龍の喋る量も煽りのレベルもいつもと段違いだった。

それにイラつくを通り越して無表情になったクオは、八百万の刀身を出して掴み、曲げていく。

『あ、あれ?主人、いつもより罰が酷くないかの?待って待って本当に折れるのじゃぁああ!』

自分の煽がいつもより酷いことに気付いていない龍が必死に抗議する。

しかし、クオはまだ少しづつ力を加えていた。

そんな光景を見ていたルノの眉がピクリと上がる。

「ルノお姉様、どうしました?」

「……魔物が一体……あと、人が1人?襲われてる。魔物は何か分からないから初めて会う魔物」

「……へえ、どこらへんだ?」

「……あっち」

そう言ってルノは自分たちが歩く方向より若干右にずれた場所をさす。

「……いくか」

「ん」

「はい」

この場で待機させるわけにもいかないので、3人で向かう。

そこにはオークキングの1.5倍ほど、体長4〜5mほどの魔物がいた。

人型で、ガチャガチャと歩くたびに身につけている騎士風の鎧が音を鳴らす。

持つ剣は黒色で、何か特殊な金属を使っているのだろう、鋭そうにキラリと輝く刃と、4 ,5mの巨体が持っていても違和感のないほどの大きさから、そこから放たれる斬撃の威力の高さが伺える。

それの視線が向かう先には、腰が抜けたのか、へたり込み、しかしなんとか魔法で攻撃する少女。

だが、魔法の威力が低すぎて魔物には一切効いていなかった。

なんとなくこんな光景見たなと思いながら、とりあえず鑑定するクオ。

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オーガナイト

Lv73

HP32000

MP 3000

STR1500

DEX132

AGI560

INT400

DEF2000

スキル

騎士 Lv4

固有スキル

称号 

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騎士

・剣士スキルの上位スキル

・所有者のSTR、DEFに補正 (素のSTR、DEF×スキルLv×10%)

2つのステータスを上げることができる上位スキルを見てにやりと笑うクオ。

「アァアアア!!」

それを察知したオーガナイトは、自らが危険な状況にあると察したのか、クオを視界に捉え、威嚇の咆哮をあげながら接近し、剣を振り下ろす。

さすがは上位スキルと言うべきか、咄嗟の攻撃にも関わらず、オーガナイトの太刀筋は流れるようにクオの胸へと振り下ろされる。

シャリンーー

そんな、明らかに生き物を斬りつけたときになるはずのない音が響く。

「ア゛ア゛?」

しばらくしてオーガナイトは気づいた。

自分の持つ剣が異様に軽くなったことに。

不思議に思い視線を向けた先、

半ばで切断された、黒い剣がそこにはあった。

「……やっぱ脆いな、魔剣位はなきゃ駄目か」

『当然なのじゃ!儂の斬れ味で互角に切り結ぶのにただの金属でできた剣など役不足なのじゃ!……というわけで主人、儂活躍したからお仕置きはなしにしてくれんかの?』

「……まあ、半分にしてやるよ」

『やったのじゃ!本当は全部無くして欲しかったのじゃが……。あの頑固な主人から半分免除されただけで上々じゃの』

「……やっぱなしで」

『なぜじゃ!?』

戦闘中にも関わらず呑気な2人。

それをチャンスと見たオーガナイトは折れた剣を再度振るおうとし、

自分の体だけが前に進み、自分の視点が変化しないことに気づく。

首から分断されていたのだ。

今更になってゴトリと落ちる首と、ビシャビシャと鮮血を撒き散らしながら倒れる胴。

それを見たクオは驚く。

「……え、今まで斬られた事に気付いてなかったのかよ……。なんだその鼻○三丁 矢○斬り……」

『はな……?まあ、とにかく、どうにかならんかの?』

「……いいもん見れたし、特別な」

『さすが主人!分かる男なのじゃ!』

そんな会話をしながらルノたちの方へと行こうとするクオに、

「あのっ!」

と声がかかる。

振り返ると、少女が潤んだ瞳を向けていた。

「……デジャヴだな……」

それを見たクオはそう呟くのだった。

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